選考の結果、残念ながら不採用となった応募者に対して、企業は通知することが求められます。しかし不採用の通知は、応募者にとって決して喜ばしいものではありません。通知をする際は応募者との間にしこりを残すことのないよう、細心の注意を払い、配慮することが大切です。この記事では、不採用を通知することの必要性をはじめ、電話による通知の特徴や他の方法との違い、注意点について解説します。
1.不採用の連絡をする必要性
面接後、採用の場合はその後のスケジュールや手配を考えると企業にとっても通知は必須です。
一方その後自社とのつながりが不透明な不採用の応募者にも、通知することが求められます。不採用の応募者にも通知する理由は、不採用の応募者に対して社が真摯に向き合い誠実に対応することで、万が一にも心証を悪くしてしまわないようにするためです。
求人している企業も間違いなくこの社会の一員であり、社会があるからこそ活動できるという面があります。同様に応募者も社会の一員であり、不採用となっても今後その企業とどのようなつながりが生まれるかわかりません。同じ社会の一員としては、お互いを尊重し丁重に応対する必要があります。
不採用は、慎重に検討した結果です。残念な内容であっても応募者には結果を事実としてしっかり受け入れてもらえるよう、相手に十分配慮し、礼儀を尽くして通知することが求められます。不採用の結果を通知することは、企業側の責務また礼儀であり、応募者に対して誠実さを示すことなのです。
2.不採用通知の主な手段
不採用通知には、さまざまな連絡手段を利用できます。利用できる手段は歴史の長い郵便や声のみで伝える電話、インターネットを使うメールなど実に多彩です。
ここでは特に不採用通知を行う場合の、それぞれの手段の特徴について解説します。
2-1.電話
電話は音声だけを用いるため、録音やメモを取らない限り内容が記録に残らない通知手段です。一方で聞こえる音声は、語られる言葉以上に心情や雰囲気を表し、また郵便とは違い即時に確実に内容を伝えられるというメリットがあります。
そのため不採用の通知手段として電話が用いられるのは、主に次のような場面です。
- 応募した部署とは異なる部署で働くことを提案したい場合
- 経営上の問題で採用が難しくなってしまった場合
- ホリデーシーズン直前など早く確実に結果を伝えたい場合
どれも企業側の事情による変更といった意味合いが強く、応募者にとっては想定外の事柄であるため、きちんと説明すべきという社の誠実さを示す手段として電話が選ばれています。伝えられる新たな提案、状況変化の説明、できるだけ早く伝えたい意志から感じられるのは、応募者への配慮です。
電話による通知は、会社が応募者に対する誠実さを示すための特別な配慮から採用された手段だといえます。
2-2.メール
インターネットを介して届くメールは、主に文字によってコミュニケーションを取る連絡手段です。プリンターを使えば印刷することもでき、正式な文書ではないものの証拠として保管することもできます。
またメールはデバイスを操作するだけで内容を知ることができるため、直接相手と話さなくてもよいことが利点です。応募者の中には「不採用だったら事実だけ伝えてくれればいい」と考えている場合もあるため、面接の時点で了解を得ることで、メールでの通知だけで済ませることも十分あり得ます。
ただしメールでの通知では、件名などでわかりやすく区別できるよう配慮する必要があります。なぜなら応募者はすでに複数の求人に応募している可能性があり、たくさん届くメールに埋もれてしまうと通知に気づかない可能性があるためです。きちんと通知したい場合は、電話や郵便と併用するとより確実です。
2-3.郵便
郵便は歴史の長い通知手段である分、不採用通知でも用いられることの多い方法です。メールと同じ文字によるコミュニケーションで、かつ紙面という物体が手元に残るため、内容に関して「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
ただし、普通郵便では相手に届いたかどうかがわからないため、応募者から「手元に届いていない」と連絡があったときに備えて、写しをとっておきましょう。確実に届けたいときは紛失や誤配のない対面渡しが原則の「簡易書留」や、追跡可能な「レターパック」などのサービスの利用をおすすめします。
郵便のデメリットは、発送から到着までに時間がかかることです。郵便のみで不採用通知をする際は、送付にかかる時間を含めて通知時期を伝えておく必要があります。
3.不採用連絡を電話で行った方がいいケース
さまざまな通知方法の中で、不採用の連絡に電話を用いた方がよいケースがあります。確かに電話は手軽で便利、しかも結果を相手に確実に伝えられる優れた方法です。とはいえ不採用の連絡は応募者にとってとても神経質な事柄であるため、細心の注意を払う必要があります。
ここでは、電話を用いた方がいいケースごとに、その理由も詳しくみてみましょう。
3-1.書類選考で不採用の場合
書類選考の段階での不採用の連絡に電話を用いることには、郵便より素早く、応募者本人に確実に伝えられるメリットがあります。連絡すべき相手が数人程度であれば、あまり時間をかけずに済み、相手の反応に応じた丁寧な対応ができることも利点です。
ただ、不採用の連絡は応募者に対してとても神経を使う内容です。電話ではやり直しがきかないため、言い間違いや失礼な言い回し、誤解される用語を避けるよう、細心の注意を払う必要があります。そのため、電話での連絡では、事前に紙に伝える内容をまとめたり、言い回しを文字で書いておいたりして準備をしておくのがおすすめです。
一方で電話は、すぐに応募者に出てもらえるとは限りません。何度もかけ直す可能性もあるため、人数が多いときはおすすめできません。電話を選ぶのなら、伝える内容を検討する時間の余裕と連絡する人数を含めて検討しましょう。
3-2.面接選考まで進んだ場合
面接選考まで進んだ応募者に対しての不採用連絡には、比較的電話が使われやすい次のような理由があります。
- 一度面接で直接対面しているため、応募者の理解のペースや適切な伝え方がある程度把握できている
- 書類選考後、人数が絞られているため比較的人数が少ない
- (面接官が連絡する場合は)一定の信頼関係があるため、不採用結果を比較的受け入れやすい
とはいえ、伝える内容に誤解があってはなりません。伝える内容は事前に検討し、問題のないようまとめておく必要があります。また、たとえ連絡するのが面接官であっても、信頼関係が築けていると思い込むのは危険です。不採用の結果は、誰であれ慎重かつ丁寧に伝えるよう努めましょう。
3-3.特別な事情がある場合
伝える内容が単に不採用の通知だけであればメールや郵便でも十分です。しかし中には当初の求人内容または条件が変わったり、面接での評価から別部署での採用を提案したりといった特別な事情を伝えなくてはならない場合もあります。
そのようなときは、こちらの事情を説明して理解を得る、新たな条件や状況を誤解のないよう伝える、新たな状況についての応募者の質問に答える、といったことを早く確実にこなさなくてはなりません。しかし、もう一度面接の機会を設けるには時間がかかり、応募者の都合がつかず採用したいのにできないといった不都合が生まれる可能性もあります。
本来なら直接会って伝えなくてはならない重要な内容をできるだけ時間をかけず、確実に理解を得て合意に至るには、電話という手段が適しています。
4.電話で不採用通知をする際の6つのポイント
不採用通知を電話で伝えることには、電話の持つ性質や特徴からトラブルになる可能性があります。実際に用いるときは次の6つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 事前に話す内容を用意しておく
- 応募者に感謝の意を伝える
- 連絡する時間帯を考慮する
- なるべく早めに結果を伝える
- 応募書類等の取り扱いについて伝える
- 文面もあわせて残しておく
どれも欠かすことのできない重要なポイントです。これから連絡するという場面では常に思い返し、意識しながら臨むようにしましょう。
4-1.事前に話す内容を用意しておく
電話は音声だけですが、間違いなくリアルタイムに進行する会話の一種です。そのためあらかじめ流れを想定して進めていても、思わぬ反応や質問などで流れが変わり、伝えるべきことを伝えることができずに電話を切ってしまうようなことも十分あり得ます。
このような事態を防ぐには、事前に話す内容をまとめ、流れが変わってもすぐに戻れるようスクリプト=台本にしておくことが大切です。内容は自分だけでまとめるのではなく、経験豊富な先輩や上司にチェックしてもらえば、より適切にまとまります。
電話は音声による会話である以上、誤りがあると訂正や取り消しがしにくい手法です。万が一にもトラブルにならないよう、間違いなくできる自信がつくまでロールプレイで練習するなどして備えましょう。
4-2.応募者に感謝の意を伝える
応募者は数ある企業の中から就職希望先として選び抜いたからこそ、時間をかけて情報を集めて検討し、書類を作って応募したのです。
不採用という結果を伝えるための電話ですが、応募してもらった会社の代表として、まずは応募にかかった多くの労力やコストに対して感謝の意を伝えましょう。続けて不採用の結果を伝え、選考に際して真摯に精査し、検討を重ねての結論であることを伝えます。
伝えるときは、伝える内容の順番や言葉の選び方も重要です。全体の流れに対して不自然にならないよう十分注意しましょう。
4-3.連絡する時間帯を考慮する
電話はメールや郵便とは違い、発信と受信が同時に行われる通信手段です。こちらは勤務時間中で連絡して問題なくても、先方の応募者にとってはその時間仕事をしていたり、学生なら授業を受けていたりなど電話に出づらい状況にある可能性があります。電話をかけるときは、かける時間帯に配慮することが大切です。
特に不採用通知の場合は、午前中に連絡を取ることをおすすめします。なぜなら、午前中という比較的早い時間帯に連絡すれば、もしそのとき電話がつながらなくても、相手の都合のよい昼休みや午後に折り返しの連絡が来る可能性が高いためです。
とはいえ、応募者の事情はそれぞれ違います。電話での連絡が決まっているのなら、あらかじめ面接の時点で希望の時間帯を尋ねておくのもよい方法です。
4-4.なるべく早めに結果を伝える
選考にある程度時間がかかるとわかっていても、応募者はやはり結果をできるだけ早く知りたいと思うでしょう。なぜなら応募者の中には、求職中であれば就職先を1社ずつに絞るのではなく、複数の企業へ並行して応募している場合もあるためです。
採用が決まれば応募をやめ、今度は就職に向けて準備を始めなくてはなりません。すぐに研修が始まったり、場合によっては一定期間遠方で勉強したりとあわただしくなってきます。他の応募先には、辞退の旨を連絡する必要もあるでしょう。
その事情に配慮するなら、面接の前に選考にかかる時間や結果を連絡する日時を定め、具体的に伝えられるよう準備しておく必要があります。不採用通知は、遅くとも面接から1週間以内に完了しましょう。
4-5.応募書類等の取り扱いについて伝える
選考に必須とはいえ、履歴書や職務経歴書などの応募書類は応募者の個人情報が記載されている重要書類です。万が一にも漏洩することのないよう慎重に取り扱う必要があります。
採用であれば社で保管することになりますが、不採用の場合は保管する必要はありません。応募者へ返却するか、シュレッダーなどを使って個人情報が読み取れないように処分するかのどちらかの取り扱いに分かれます。
応募書類等の取り扱いは、すでに決まっていればあらかじめ応募者に了承してもらうのもよい方法です。伝えていなければ、不採用の連絡の際に処分方法と一緒に伝えるか、応募者の希望に応じた取り扱いをしましょう。
4-6.文面もあわせて残しておく
電話での連絡では、通常内容が記録されません。しかし不採用の連絡やそれに付随するさまざまな情報は、後で「言った、言わない」と主張が食い違うトラブルになる可能性があります。連絡の際にスクリプトを用意し、会話の中での要点などを書き加えて残しておけば、後から見返すことができて便利です。
特にやむなく不採用とした応募者は、別の機会の求人における採用の候補者となる可能性があります。応募者の了承を得て厳重に保管し、次の採用の候補者としてプールしておくのもよい方法です。
5.電話で不採用通知する場合の注意点
不採用の連絡内容とは別に、電話で連絡するとき気をつけたいポイントが3つあります。どちらもごく一般的なルールといえますが、状況によってはうっかり忘れてしまいトラブルになる可能性もあるため十分な注意が必要です。
5-1.簡潔に要件を伝える
不採用の連絡は、原則として要件を伝えるためだけのものです。電話での会話は必要最小限、不採用であるという結果と、応募書類の取り扱いまたはその他の特別な事情に関する内容にとどめ、要件を簡潔に伝えるよう努めましょう。
もちろん挨拶やお礼は必要です。しかしそれ以外のことをあまり長く話し込んでしまうと、会話全体の意図がぼやけ、ひいては応募者の抱く印象も悪くなってしまいます。
伝えるのは、丁寧なあいさつと感謝の意、不採用となった結果とまとめのあいさつの4つと考えましょう。
5-2.留守電で不採用通知をしない
不採用通知は留守番電話で伝えてはいけません。留守番電話に切り替わった場合は、改めて連絡する旨のメッセージを残して通話を切りましょう。
採用にしろ不採用にしろこの種類の連絡は応募者にとって、とても重要で神経を使うものです。それを留守番電話に残したメッセージで伝えれば、応募者自身を雑に扱っているような印象を与えます。
これは実家への連絡で、本人ではなく家族が出た場合も同じです。不採用通知は人伝えにせず、直接本人に伝えなくてはならないと覚えておきましょう。
5-3.「不採用の場合は連絡しない」は避ける
採用する側の企業には、一部「不採用の場合はこちらから連絡しない」とあらかじめ断っている場合もあるようですが、これはあまり応募者に配慮している方法とはいえません。なぜなら、応募者が複数の求人に応募している場合、当該企業からの返答がないと次の応募の予定が立てにくいためです。
とはいえ応募者から「連絡がほしい」とは言いづらく、やむを得ず了承している可能性があります。同時に企業に対して「配慮がない」「不親切」といったイメージを持つことも考えられるため、企業イメージを考えれば、不採用でも一人ずつ丁寧に通知することがおすすめです。
6.電話で不採用連絡をする際の例文
電話で不採用の結果を伝える場合の流れは、おおむね次のとおりです。
- ○○株式会社の採用担当○○と申します。
- ○○様の携帯電話で間違いありませんでしょうか?
- ただ今、お時間よろしいでしょうか?
- この度は弊社の求人へのご応募ありがとうございました。
- 厳正な選考の結果、残念ながら今回の採用は見送らせていただくこととなりました。
- ご希望に沿うことができず、申し訳ございません。
- 今後のご活躍をお祈りしております。
とはいえ、これらの文言をまくしたてるように言い放つのではありません。応募者の反応・返答を待ち、会話のリズムに合わせて進めることが大切です。過度に事務的になったり、あまりなれなれしくしたりすることもよい印象を与えません。声のトーンや大きさも調節し、バランスの取れたよい印象を与えられるよう努めましょう。
状況に応じて、実家への電話であれば取り次ぎの後で2.の「携帯電話」を省略したり、6と7の間に応募書類の取り扱いについて説明して了承を得たりと文言は細かくアレンジしてください。
7.不採用の理由を聞かれた際の対応方法
電話による不採用通知で困ることの一つが、不採用の理由について尋ねられることです。選考の基準や検討内容を知らなければ対応のしようがなく、もし知っていても正直に答えるとトラブルのもとになりかねません。
ここでは不採用の理由について尋ねられたとき取るべき、基本的なスタンスについて解説します。
7-1.質問されない限りは不採用理由は伝えない
不採用の連絡はあくまで合否の結果のみを伝えるものです。原則として不採用とした理由までを伝える義務はありません。
もし尋ねられたら回答しても特に問題はありません。しかし回答の内容によっては、判断基準などをより詳しく尋ねられ、理由に齟齬が見られればトラブルに発展する可能性もあります。どうしてもというときは「応募者が多かった」や「応募者のスキルや経験が社の求めるものと違っていた」のような模範解答を用意しておくと安心です。
それでもまだ詳しく問われるようなら、「採用基準は社外秘である」「社の規定で口外できない」と回答するようにしましょう。
7-2.応募者自身を否定するような内容はNG
不採用の理由を回答するとしても、応募者自身のスキルや経験、経歴などを否定しているととらえられる可能性がある言い回しや内容は避けましょう。たとえ誤解だったとしても、一旦SNSやブログで拡散されれば、会社にとって大きなイメージダウンとなる可能性があります。
どのような理由であれ、不採用とされた事実は応募者にとって気分のいいものではありません。そう考えればどのような説明をしたとしても、トラブルに発展する可能性は残ります。どうしても伝えなくてはならない場合は、「応募者の絶対評価ではなく、相対評価で選考させていただいた」といった文脈であれば、自身が否定されたと感じにくいでしょう。
8.不採用の電話は丁寧に行おう!
ここまで、電話で不採用を連絡するときのポイントや注意点、例文について解説してきました。不採用の連絡は応募者にとって、決してうれしいものではありません。とはいえ応募者は、採用の合否ができるだけ早くに通知され、採用なら入社の準備、不採用なら他社への応募という次のステップに進みやすくなるような配慮も求めています。
電話による連絡は、求められる配慮のいくつかをかなえる方法です。しかし同時に電話には、「言った・言わない」のトラブルになりやすいこと、連絡する時間帯に配慮が必要なこと、簡潔に伝えるよう努めることといったデメリットや注意点もあります。
不採用の結果を電話で伝えるには、これらのメリットやデメリット、注意点を踏まえて、スクリプトを用意する、簡潔に伝えるといった工夫を盛り込み、丁寧に運用することが大切です。不採用の応募者にも真摯に向き合い、慎重かつ丁寧に、適切なタイミングで通知できるよう努めましょう。