採用面接の担当者は、自社が優秀な人材を獲得するための大事な役割を任されています。しかし、どのような質問をして、どのように見極めたらよいのか、不安に思う人もいるでしょう。本記事では、採用面接における面接官の役割から説き起こし、採用面接で聞きたい質問集やNG質問などについてまとめています。
1.採用面接における面接官の役割
採用活動における面接官には、大きく分けて2つの役割があります。1つは、面接官の本来業務でもある「人材の見極め」です。それだけでなく、面接官は応募者に対して自社のPRをする「企業の顔」としての役割も担っています。初めて面接官を担当する人は、2つの役割を十分理解しておくことが必要です。以下で、2つの役割について説明します。
1-1.自社に適した人材かを見極める役割
面接官は、採用面接での応答を通して、応募者が自社に適しているかを確認する重要な役割を持ちます。能力やスキルが求める水準に達しているかをはじめとして、自社の社風に合うかどうか、入社意欲はあるかなど、多様な視点から応募者を見極めなければなりません。
スキル不足の人材や、自社の価値観と合わない人材を採用してしまうと、ミスマッチからの早期離職などを招く可能性があります。ミスマッチが発生すると採用活動の期間が長くなり、コストも増加するなどの悪影響を及ぼします。面接官による応募者の的確な見極めが、採用活動を成功に導くカギです。
1-2.応募者へのPRを行う企業の顔としての役割
応募者にとって多くの場合、面接官は入社を志望する企業で最初に接する関係者です。それだけに、面接官の与える印象は、応募者による自社の評価を大きく左右します。面接官は、応募者に対して自社をアピールする「企業の顔」としての役割も持っているのです。
応募者が就職の意思をさらに強固にするか、不快な思いを持って選考を辞退するのかは、面接官の対応にかかっている部分があります。SNSが普及した現在、悪印象を持った応募者が採用面接時のやり取りを拡散し、自社のネガティブイメージが広がってしまうなどの懸念もあります。面接官は、自分の発言や態度に十分注意し、リスクがあることを肝に銘じておかなくてはなりません。
2.採用面接を行う基本的な流れ
短時間の面接で応募者の能力や人柄を見極めるには、しっかりとした面接の流れを事前に設定しておくことが有効です。ステップごとに順を追って進行するようにしておけば面接官にも過大な負荷がかからずにすみます。
採用面接では、面接官は応募者に信頼感を持ってもらうことが重要です。いきなり本題に入らず、応募者がリラックスして本音を話しやすくする雰囲気を作るなど、面接を効果的に進めるためのコツもあります。以下に、採用面接を行う基本的な流れを示しました。
2-1.アイスブレイク(応募者の緊張をほぐす雑談など)
面接の冒頭、応募者の緊張をほぐすためにする雑談などをアイスブレイクと呼びます。ガチガチに緊張していては、応募者に本音で話してもらうことは期待できません。その先の質問と回答のやり取りをスムーズにするためにもアイスブレイクが重要です。
仕事や面接そのものとは関係ない話題を切り出し、応募者の緊張を和らげるように心がけます。具体例としては、当日の天気や自社までの交通経路、趣味の話題などが無難です。ただし、緊張している相手を二言三言で和ませるのはそれほど簡単でもありません。アイスブレイクをうまく展開するには、以下の3点に注意します。
- 合否に影響しないことを伝える
- 共通の話題を探す
- 手短に終える
アイスブレイクは、いわば雑談なので合否には影響しません。それでも応募者によっては、合否に影響するかもしれないと考え、緊張感が抜けない人もいるため、「合否には影響しない」と明確に伝えます。話が盛り上がりやすいのは、共通の話題がある場合です。暑さや寒さなど当日の気候でもよいですし履歴書に書かれた趣味などから拾い上げるやり方もあります。ただし、後述する思想信条やプライバシーなどのNG質問には、十分気をつける必要があります。
手短に終えるのも、アイスブレイクのコツです。アイスブレイクに最適な時間は、面接全体の5%とされています。1時間の予定であれば、3分程度がアイスブレイクに丁度よい時間です。話が盛り上がるのは悪くありませんが、緊張感が薄れすぎてだらけた雰囲気にはならないように注意してください。
2-2.面接官の自己紹介・企業の説明
アイスブレイクで緊張がほぐれたところで、面接官が自己紹介し、自社の概要や今回の求人などについて説明します。自己紹介は、氏名と所属部署、入社年次や本来の担当業務の説明などを中心に、簡潔に行います。面接官がどのような人物なのかを示すことで応募者をリラックスさせ、面接官との信頼関係を築くのが狙いです。
面接官が自社の強みや魅力を説明するのは、ミスマッチ防止の意味合いもあります。その企業の従業員である面接官から直接話を聞くことで、応募者が自分に合った企業であるかどうかを見つめ直せるためです。
2-3.履歴書・職務経歴書の内容に関する質問
この段階から、選考の色合いが強くなっていきます。履歴書や職務経歴書に記載された応募者のキャリアに基づいた質問を行い、経験やスキルの蓄積を推し量ります。応募者の本質をチェックすることも、この段階の重要なポイントです。
経歴は応募者ごとに異なるため、質問内容も相手によって違うものになります。質問内容は、履歴書などを見て事前に考えておくのが常道です。質問と回答が1往復で終わらず、やり取りを繰り返して深掘りできるように進めていくのがコツです。それにより、応募者の本音や志望度を引き出せます。
2-4.応募者の意欲や入社後のビジョンに関する質問
採用面接では、応募者にどのくらいの意欲があるか、入社した場合にどのような将来展望を持っているかなどを面接官が直接聞くことができます。企業側にも、採用後にどのような部署に配属し、どのように活躍してほしいかという胸算用があると考えられます。応募者の回答と自社の期待がうまく合致するかどうかこの段階で確認しましょう。
自社の業務内容について、応募者が正しく理解しているかどうかもチェックポイントです。
2-5.応募者からの逆質問
面接官からの質問が一通り済んだら応募者から逆に質問がないかを問いかけます。応募者が疑問や不安を持っていたなら面接の場で解消してもらうためです。少しでも不安があると応募者が次の選考ステップに進んでくれない可能性があります。
応募者が気軽に質問しやすいような空気を作るのも、面接官の仕事のうちです。応募者が自社サイトなどでいくら企業研究を重ねてきたとしても、社風や働きやすさなど、わからないことも多いと考えられます。応募者からの逆質問を引き出し、疑問や不安を解消できる回答をすることが面接官に求められます。
一般に、応募者は複数企業の求人に応募しているものです。疑問や不安を残したままにしておくと、せっかく応募してくれた人材が他社に流れてしまいかねません。応募者の質問に真摯に回答すれば志望度を高める効果も期待できます。
2-6.選考に関わる連絡と事務的な確認
面接の最後に、選考に関わる事務連絡を行います。応募者は、複数の企業の選考にエントリーしているのが一般的であり、合否の連絡がいつ届くかは重大な関心事です。合否の連絡はいつまでにするのか、どのような方法で連絡するのかなどを、間違いないように伝えます。事務的な連絡の内容は、事前に整理しておくと便利です。そのほかに、自社として独自に連絡すべき事項がある場合にもこのタイミングで伝達します。
3.採用面接で聞きたい質問集
前述したとおり、採用面接では応募者が自社に合った人材かどうかを見極めることが重要です。では、面接官はどのような質問をすれば応募者を適切に評価できるのでしょうか。
質問は面接の場で考えていては間に合いません。引き出したい回答の内容に合わせて事前に用意しておくことが肝要です。以下に、確認したい項目ごとの具体的な質問例を用意しました。参考にし、自社に合ったアレンジを加えて、採用活動に役立ててください。
3-1.応募者の資質やスキルを測る質問
応募者の資質やスキルについては、履歴書や職務経歴書である程度は判断できます。採用面接で質問する際は、履歴書や職務経歴書に書かれている内容をさらに深掘りするのがおすすめです。スキルの確認はとくに中途採用の場合には重要な要素です。以下に、応募者の資質やスキルを測る質問の具体例を示します。
- 努力によって成し遂げた経験があれば教えてください。
- これまで担当していた業務で、成果を出すためにどのような工夫をしていましたか。
- あなたが当社に貢献できると思うスキルや経験について教えてください。
- リーダーとして業務を引っ張った経験はありますか。
- 今までで大変だと思った経験と、それをどのように克服したかについて教えてください。
3-2.自己理解・自己認識ができているか確かめる質問
自分の強みや弱みを、自らがきちんと把握しているかが「自己理解」や「自己認識」です。自分を客観視し、強みと弱みをわかっている人材なら強みを伸ばして自社に貢献でき、弱みをなくす努力によってさらなる成長ができると考えられます。
応募者が就職活動する際には、自己理解・自己認識が欠かせません。履歴書に自己PRを書くには、自己理解・自己認識ができていることが前提となるためです。以下に、自己理解・自己認識ができているかを確かめる質問の具体例を示します。
- 弱みを克服するために取り組んでいることはありますか。
- 当社に入社したら、あなたの強みをどのように活かしていこうと考えていますか。
- 周囲からはどのような人だと言われることが多いですか。
- ご自分を動物にたとえると何ですか。
- 物事の決定は早いほうだと思いますか。
3-3.協調性を確かめる質問
企業に就職するということは、組織の一員として周囲と協調して働くことを意味します。仕事が自分1人だけで完結するケースはほとんどなく、多くの人との共同作業になるのが一般的です。協調性に欠ける人材を採用してしまうと、作業効率の低下を招き、時間や費用に多大な無駄が発生しかねません。
個人の能力やスキルも重要ですが、協調性があり、チームで働ける人材であるという要素も、それに劣らず大事です。以下に、協調性を確かめる質問の具体例を示します。
- チームワークの重要性を感じたエピソードはありますか。
- 他者と協調して何かを成し遂げた経験があれば、その中でのあなたの役割を教えてください。
- 上司や同僚と意見が割れた場合、あなたならどうしますか。
- チームワークについて心がけていることがあれば教えてください。
- チームワークを保つことのメリットは何だとお考えですか。
3-4.ストレスへの耐性や向き合い方を確かめる質問
採用した人材がストレスに弱く、入社しても活躍できなかったり、短期間で離職してしまったりしたのでは採用活動が成功したとは言えません。応募者がストレス耐性を持つかどうかや、ストレスとうまく付き合っていけるタイプであるかを確認するのも面接の重要な役割です。以下に、ストレスへの耐性や向き合い方を確かめる質問の具体例を示します。
- これまでに挫折の経験はありますか。あるなら、それをどう克服しましたか。
- トラブルに巻き込まれたら、どのように対処しますか。
- 苦手な仕事内容はありますか。
- 前職で最も負担に感じた出来事は何ですか。
- ストレスを感じるのはどのような時ですか。
3-5.入社への意欲を確かめる質問
前述したように、応募者は複数企業の求人に応募していることが多いです。自社は本命ではなく、滑り止めである可能性もあります。そのような場合は、入社への意欲が高いとは考えられません。対して入社意欲のある人材は、入社後にも前向きにチャレンジする姿勢を忘れず、自社の成長に貢献してくれるという期待が持てます。
技術の進歩と産業の変革が速い現代においては、企業の成長を下支えする、個人の成長意欲も重要です。以下に、入社への意欲を確かめる質問の具体例を示します。
- 当社で担当したい業務について具体的に教えてください。
- 入社後はどのようなキャリアを築きたいと考えていますか。
- 将来に向けて勉強していることがあれば教えてください。
- 当社に魅力を感じる点を3つ挙げていただけますか。
- 当社と他社との違いはどのような点だと思いますか。
3-6.応募者の性格や価値観に関わる質問
自社に合う人材かどうかを見極める場合、重要なのが応募者の性格や価値観です。性格や価値観が自社になじめれば、長く活躍してもらえる可能性が高まります。逆に、性格や価値観が合わない場合は、本人にもストレスがたまるでしょうし、実力を十分に発揮できないまま早期離職に至る懸念までも生じかねません。
以下に、応募者の性格や価値観に関わる質問の具体例を示します。
- 当社の企業理念について感想を教えてください。
- これまでに困難だった仕事の経験を教えてください。
- 座右の銘は何ですか。それを選んだ理由を教えてください。
- どのような社風の会社がご自分に合うとお考えですか。
- 当社でチャレンジしたいことがあれば教えてください。
4.採用面接で聞いてはいけない質問と行動
面接官の言動や行動は、本人が思う以上に応募者に与える影響が大きいものです。威圧感や不快感を与えるような質問や行動は厳に慎まなくてはなりません。「面接官の役割」の項でもふれましたが、面接官の言動がSNSなどで拡散されると本人のみならず自社全体の評判を落とす可能性すらあります。
厚生労働省は、就職差別が行われないようにガイドラインを定めており、「公正な採用選考の基本」として、以下の2点を挙げています。
- 応募者に広く門戸を開くこと
- 応募者の適性・能力に基づいた採用基準とすること
公正な採用選考とは、応募者の適性や能力と無関係な事項で採否を決定しないということです。面接官が、適性や能力と無関係な質問をすると、「公正な採用選考ではない」と疑われかねません。以下で、面接官として聞いてはいけない質問事項と、行ってはいけないNG行為について解説します。
参照元:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
4-1.採用面接で聞いてはいけない質問事項
採用面接は、応募者のスキルや経験、能力などを正当に評価し、自社の成長に貢献してくれる人材であるかどうかを見極める場です。評価に関係のない質問は避けましょう。軽々な発言をしてしまわないように注意すべきポイントは面接前に押さえておく必要があります。
採用面接で聞いてはいけない質問事項の例は下記の3つです。
4-1-1.家庭環境や本籍など本人に責任のないもの
本人の責任ではない問題については、採用面接で質問してはいけません。厚生労働省のガイドラインでは以下のようなものを挙げています。
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
「お生まれはどちらですか」などと、つい聞いてしまいそうになるかもしれませんが、出生地による就職差別と勘ぐられる危険性があります。戸籍謄本などを提出させることも、ガイドラインに抵触するため注意が必要です。家庭環境や本籍など、本人に責任のないものに関するNG質問の具体例を以下に示します。
- 現在の住所は本籍地ですか。
- ご両親はご健在ですか。
- 現在住んでいる家は持ち家ですか。
- 貯蓄はどのくらいありますか。
- あなたはご長男ですか。
4-1-2.宗教や思想など本来自由であるべきもの
本来自由であるべき思想信条などについての質問も採用面接には不向きです。「尊敬する人物」や「愛読書」などを聞くのも望ましくない質問です。厚生労働省のガイドラインには、以下のような項目が挙げられています。
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 人生観、生活信条などに関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 思想に関すること
- 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
知らないと何気なしに聞いてしまいそうな項目もあります。面接官が「知らなかった」では通用しないため、NG事項をしっかり頭に入れておくことが必須です。以下に、宗教や思想など本来自由であるべきものに関するNG質問の具体例を示します。
- 最近どのような本を読んでいますか。
- 選挙では毎回投票されていますか。
- 神様や仏様を信じていますか。
- あなたの信仰している宗教を教えてください。
- 尊敬する歴史上の人物はいますか。
4-1-3.ジェンダーロールを前提としたもの
性別によって役割を固定するような考え方(ジェンダーロール)を前提とした質問も当然ですがNGです。男女雇用機会均等法は第5条で「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めています。
女性に対して「結婚の予定はありますか」と聞くだけでも、結婚したら女性は退職して家庭に入ることを前提としているように受け取られかねません。面接官は、採用面接は普通の会話ではないことを肝に銘じておく必要があります。以下に、ジェンダーロールを前提としたNG質問の具体例を示します。
- 出産後も仕事を続ける予定はおありですか。
- 交際している人はいますか。
- 子どもは欲しいですか。
- 何歳で結婚したいですか。
- 何歳まで働こうと考えていますか。
参照元:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
4-2.採用面接で行ってはいけないNG行為
採用面接で行ってはいけない行為もあります。NG質問と同様に、応募者に不快感を与えるような行動は、全体として行ってはいけません。応募者の志望意欲を減退させるような行動も慎んでください。採用面接で行ってはいけないNG行為の具体例には、以下のようなものがあります。
- 履歴書などにすでに書かれている事項を細かく聞く
- 上から目線の態度を示す
- 面接官が質問の回答を誘導する
- 応募者の発言を聞き流し、リアクションを取らない
- 何を目的にしているのかわからないような質問をする
上記のような対応は、面接官の準備不足や、やる気のなさを表していると捉えられかねません。応募者は多数ある求人企業の中から自社を選んでくれた人材です。合格ラインには遠い応募者だと感じてもぞんざいに扱わないよう注意が必要です。
4-3.誤った質問・行動をしたときの対処
万が一不適切な質問や行動をしてしまった場合は、迅速に謝罪と訂正を行います。「ただいまの質問は不適切でした。申し訳ありません」などの形で、この質問は合否に関係しないことと、答える必要がないことを伝えてください。ここではスピード感が重要です。応募者が回答する前に、謝罪と訂正をする必要があります。
不適切な質問や行動は、SNSで瞬く間に拡散され、採用市場で自社の悪評が広まる危険性を持ちます。採用面接での質問は、原則として事前に準備した内容に限定し、どの応募者にも同じように接することが前提です。それが採用面接の精度を高めることにもつながります。
5.採用面接の精度を高めるには?
採用面接は、自社の将来を担う人材の採否に関わる重要な業務です。採用の成功・不成功が面接官個人の資質によって左右される状況は望ましいものではありません。誰が面接官であっても同じ結果が出せるように面接の精度を高める必要があります。ここでは、採用面接の精度を高める手法について説明していきます。
5-1.採用CXを意識してふるまう
人事部門の担当者らの間には「採用CX」という考え方があります。CXはキャンディデイトエクスペリエンス(Candidate Experience)の略で、直訳すれば「応募者体験」のことです。採用活動を通じて「応募者に自社のファンになってもらうにはどうすればよいか」「自社の求人に応募してよかった、と思ってもらうための行動とは何か」などを自ら考えるのがポイントです。
採用CXに関わるのは、採用担当者だけではありません。採用に関わる役員や、場合によっては社長の対応も応募者体験に影響を与えます。採用CXは、採用のあらゆる段階で応募者にプラスの印象を持ってもらうためのものであり、面接のみならずメールの返信や電話の応答などにも気を配る必要があります。
採用CXが注目されているのは、昨今のSNSの普及が背景です。面接を受けた応募者によるSNS投稿が、採用活動に大きな影響を与えるようになっています。悪印象をSNSに投稿される危険性に注意している企業は多いですが、良い印象が発信されることの効果も見逃せません。不採用になった応募者にも自社のファンになってもらうことが採用CXの目的です。
採用CXを意識して面接に臨む意識を変えることで、採用面接の精度も高まることが期待できます。
5-2.面接マニュアルを整備しトレーニングする
面接の精度を高め面接官によってバラつきが出ないようにするには、面接マニュアルの整備が重要です。面接の流れに応じてどのような質問をし、どのような点を確認するのかを事前にまとめたノウハウ集がマニュアルです。マニュアルに沿った面接を行うことで面接の質が均一化するだけでなく、前述したNG質問などが出ないという効果も見込めます。
面接マニュアルを作っておくことで、面接官の研修やトレーニングが効率的に行えるようになります。面接マニュアルに盛り込む内容は、以下のような点です。
- 面接官に求められる資質
- 面接の進め方
- 面接での質問例
- NG質問、NG行為
面接官は、公平な立場で応募者を見極める役割を担います。必要な資質の例としては、以下の諸点が挙げられます。
- 客観的で冷静な態度
- 偏見を持っていない
- 傾聴する姿勢がある
面接の進め方については、前述した採用面接における基本的な流れのほか、1人の応募者にかける時間などについても記述しておくのがおすすめです。面接での質問例は、具体的なパターンが本記事にも豊富に記載されています。NG質問とNG行為についても前述のとおりです。
マニュアルを作るだけでなく、面接官になる従業員には研修の時間を確保して、トレーニングを行うことが大事です。トレーニングは座学だけでなく、面接官役と応募者役に分かれて実際の面接を模したロールプレイングを行います。ロールプレイングは、自社の魅力の伝え方を試行錯誤したり、応募者の価値観を引き出す質問を検討したりする際に有効です。
5-3.評価の基準や質問内容を見直す
面接官が応募者を評価するにあたって、基準が定まっていなければ、面接官ごとにまちまちの評価となってしまいます。どのような質問をするのかは、評価基準が定まっていなければ決められません。
採用面接の限られた時間内で人材を見極めるには、確立した評価基準が必要です。そうでなければ、面接官ごとに評価が分かれ、優秀な人材を正しく見抜くことが困難になります。評価基準を最初に固めておかないと採用活動の成功はおぼつかないと言えます。
評価基準を定めたうえで、正しい評価をするためには、質問内容の精査が欠かせません。どのような質問に対して、どのように回答した応募者を評価するかは、企業の風土や採用の狙いなどによって異なります。自社に合った人材を採用するため、質問内容には不断の見直しが必要です。
6.採用面接で行うべき質問を確認して実務に活かそう
採用活動において、面接は重要な位置づけにあります。面接官は質問と回答のやり取りから応募者の資質を見極める一方、自社の魅力を伝えて志望度を高めてもらう「企業の顔」としての役割も持ちます。
面接では、応募者をリラックスさせ、本音を引き出すことが重要です。だからといって、くだけすぎたり、プライバシーに踏み込むようなNG質問をしたりしては逆効果となりかねません。本記事を参考に採用面接をより良いものに磨き上げて自社の採用活動を成功に導いてください。