ユニークな福利厚生制度を実施している国内外の事例を紹介します。福利厚生制度を工夫することにはどのようなメリットがあるのか、また、制度を導入するにあたって注意すべきことについてもまとめました。
1.ユニークな福利厚生制度を実施する企業は多い
少子化が進み、人手不足が続く中、どの企業も人材確保のためにさまざまな取り組みを実施しています。中途採用を積極的に受け入れる企業、採用基準を多様化して幅広く募集を行う企業なども少なくありません。
福利厚生に注目して、ユニークな制度を実施している企業もあります。福利厚生に注目して応募先を決める求職者もいるため、ユニークかつ働きやすさを向上させる制度を実施すれば、応募者の増加を実現できるでしょう。また、応募者が増えれば優秀な人材も集まりやすく、企業発展に有用な人材を採用しやすくなります。
2.ユニークな福利厚生制度を実施するメリット
ユニークな福利厚生制度を実施することには、次の3つのメリットがあります。
- 社員の定着率を高める
- 企業アピールにつながる
- 採用希望者を増やせる
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
2-1.社員の定着率を高める
福利厚生とは、そもそも社員の福利のために実施するものです。利用できる福利厚生制度が増え、働きやすさが高まるならば、社員にとってより一層居心地の良い企業になるでしょう。また、企業への満足度が高まり、定着率も高まることが期待できます。
人材を確保することも大切ですが、流出を防ぐことも同様に大切です。優れた人材に長期にわたって働いてもらうためにも、福利厚生制度を見直し、より働きやすい職場環境を構築していくことが必要といえます。
2-2.企業アピールにつながる
福利厚生制度が単に充実しているというだけでは、ニュースなどに取り上げられることは少ないかもしれません。しかし、他社ではあまり実施していないユニークな福利厚生制度を実施すると、ニュースのほか、オンラインや紙媒体のビジネス系メディアなどにも取り上げられる機会が増え、企業アピールにつながるでしょう。
ユニークな福利厚生制度をきっかけとして、企業自体に「福利厚生が充実している良い企業だ」というイメージが定着するかもしれません。企業の社会的評価が高まり、自社製品やサービスの売上向上、利益増も期待できるでしょう。
2-3.採用希望者を増やせる
ユニークな福利厚生制度を実施することで、他企業との差別化ができ、注目されやすくなります。求職者からも注目されやすくなり、採用希望者も増える可能性があるでしょう。福利厚生制度に注目し、求職者にとっても魅力的な職場環境を構築しましょう。
3.福利厚生制度を決めるときの注意点
福利厚生制度を充実させることが、社員や求職者、あるいは社会にとって魅力的な企業になることにつながるというわけではありません。福利厚生制度を決めるときは次の2つのポイントに注目し、企業の魅力アップにつなげていきましょう。
- 社員の意見を取り入れる
- 継続して使える制度か確認する
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
3-1.社員の意見を取り入れる
福利厚生制度は、実際に利用する社員の意見を取り入れて決めることが望ましいでしょう。社員の希望を反映することで社員の満足度が高まり、企業に対する愛着の形成にもつながります。
また、社員が希望する福利厚生制度は、求職者にとっても魅力の高い制度である可能性が高いといえます。優秀な人材を確保するためにも、まずは社員の意見に耳を傾け、制度として整えていくことが必要です。
3-2.継続して使える制度か確認する
福利厚生制度を構築し、社員に浸透させるにはある程度の期間がかかります。制度構築や浸透の時間を無駄にしないためにも、継続して使える制度かどうかをしっかり検討しておきましょう。社員からのニーズが高い制度であれば、継続的に使用できる可能性が高いと考えられます。
また、すべての社員にとって利用しやすい制度かどうかも、確認しておくことが必要です。特定の社員、特定の状況だけでしか使えない制度であれば、利用者を見込めないだけでなく、不公平な印象を与えてしまう恐れがあります。社員の満足度向上のための制度のはずが、不満を増幅させる可能性もあるのです。
福利厚生は、そもそも社員の働きやすさや居心地の向上が実施の目的となります。しかし、使えない制度であれば社員にとってメリットはなく、制度を導入した意味もありません。
制度を導入するときは、ニーズが高く継続して利用できるのか、そして、すべての社員の福利厚生につながるのかについて丁寧に吟味するようにしましょう。
4.【福利厚生のユニークな事例】家族との生活重視
社員の暮らしだけでなく、社員と家族の暮らしにも目を向けることで、ユニークな福利厚生制度を構築できることがあります。例えば、高齢化が進む中、今後ますます家族の介護の問題が重要性を増すと考えられるでしょう。家族を介護する社員をサポートする制度を構築することで、社員満足度を高めることができるかもしれません。
ここでは、いくつかの事例をご紹介します。
4-1.介護帰省の交通費支援
離れて住む家族の介護が必要になることがあります。気軽に往復できる距離であればよいのですが、遠くに住む場合は交通費が負担になるかもしれません。
ある企業では、年に数回、介護帰省の交通費支援を実施しています。経済的な負担が軽減されるため、介護しやすくなる効果を期待できるでしょう。経済的な負担が大きすぎて帰省の回数を制限していた社員にとっては、介護のために帰省する回数を増やすことにもつながります。
また、介護を理由とした休暇を取得しやすい雰囲気が、社内に生まれるかもしれません。介護が必要なときは社員が協力し合う環境を構築することで、社員が働きやすさを感じ、より一層企業への愛着も増すでしょう。
4-2.復帰サポート
介護に専念したい社員に向けて、復帰をサポートする福利厚生制度を実施している企業もあります。年数を決め、その期間内であれば同じ立場・同じ給与に戻れることを補償することで、安心して介護に専念できる環境を構築しました。
この復帰サポート制度は社員にとってもメリットですが、企業にとっても大きなメリットです。社員が企業で培ったスキルや経験が他社に流出するのを防げるだけでなく、即戦力となる人材を確保し、採用コストを減らすことにもつながります。
5.【福利厚生のユニークな事例】フレックスタイム制
福利厚生の一環として、勤務時間についての自由度を高めるフレックスタイム制を導入している企業もあります。勤務時間の自由度が高くなると、社員は自分のライフスタイルを維持しやすくなるだけでなく、介護や育児などの社員各自の事情に合わせた働き方を実現しやすくなるでしょう。
一般的なフレックスタイム制は、既定の労働時間の中で始業時間と終業時間を選択できるものですが、企業によっては独自かつユニークなフレックスタイム制を実施していることがあります。いくつかの事例をみていきましょう。
5-1.6時間勤務制
一般的なフレックスタイム制では、「8〜20時の間で8時間勤務する」のように既定の範囲内で既定の労働時間を確保することが条件となっています。しかし、社員によって仕事のスピードや効率性には違いがあるため、8時間の労働時間を確保する必要のない社員もいるでしょう。
ある企業では、フレックスタイム制を応用させた6時間勤務制を実施しています。労働時間ではなく仕事量で評価し、既定の仕事を終わらせることができれば6時間の勤務でもペナルティは受けません。また、時給ではなく日単位の基本給制のため、6時間でも8時間でも給与は同じです。
仕事のスピードが早い社員にとっては、早く終わったら周囲に気兼ねなく退勤できるというメリットがあります。プライベートで使える時間が増えるため、勉強をしてスキルアップを目指したり、趣味活動を楽しんだりできるでしょう。育児との両立もしやすくなるかもしれません。
また、仕事のスピードが早くない社員にとっても、6時間勤務制がモチベーションとなり、効率性向上を目指して今まで以上に仕事に注力できるようになる可能性があります。
もちろん、今までと同じように8時間勤務を選択することも可能です。仕事に対するスタンスやスピードによって勤務時間を選べるようになることで、すべての社員にとって働きやすい環境の構築を目指せる点もメリットといえるでしょう。
5-2.選択制の勤務スタイル
勤務時間を曜日ごとに選択できるというユニークなフレックスタイム制を導入している企業もあります。
例えば、普段は9〜17時まで働き、水曜日だけ9〜15時の時短勤務を選択したいという社員もいるかもしれません。水曜日は子どもが5時間授業なので早く帰ってくる家庭であれば、このように曜日ごとに勤務時間を選択できると、より働きやすくなります。
また「治療などのために特定の曜日は病院に行かなくてはいけない」「家族が特定の曜日に通院していて付き添わなくてはいけない」などの状況にある社員にとっても、曜日ごとの勤務時間選択制は嬉しい制度です。
介護や育児、また本人の病気などの事情を抱えている方に働きやすいように工夫することで、社員に合わせた働きやすい環境を実現できるでしょう。
6.【福利厚生のユニークな事例】健康サポート
社員の健康に注目した福利厚生制度を実施している企業もあります。心身両面から社員の健康を増進することは、社員の生活の質を向上するだけでなく、仕事に対するモチベーションアップにもつながるでしょう。
また、病気で求職や離職をする社員が減れば、企業の戦力維持にもつながります。ユニークな健康サポート制度の事例をいくつかみていきましょう。
6-1.トレーナー指導
健康関連の福利厚生制度として、スポーツクラブの入会費や月謝の優待を実施している企業は少なくありません。また、社内にトレーニングルームを設置し、自由に利用できるように開放している企業もあります。
しかし、スポーツクラブに加入したり社内のトレーニングルームに出向いたりしたものの、何をすれば健康増進につながるのかわからないという方もいるでしょう。また、一通りマシーンを使って運動をしてみたものの、モチベーションが維持できずに離脱する社員が出てくることも想定されます。
健康増進を目指すなら、思いついたときだけに運動をするのではなく、トレーニングを継続しないと意味がありません。ある企業では、スポーツクラブやトレーニングルームの環境を整えることに加え、トレーナー指導を受けられる福利厚生制度を実施しています。専門のトレーナーの指導を受けることで、社員各自がどんなトレーニングが自分に必要かがわかり、より熱意を持って運動に取り組めるようになるでしょう。
6-2.朝ヨガ
家事や育児が忙しく、終業時間が来たら急いで家に帰らなくてはいけない社員もいます。また、通勤時間が長く、トレーニングをしてから電車やバスに乗るのは体力的に難しいという方もいるでしょう。
終業後にトレーニングすることが難しい社員でも、始業前の短時間であれば運動に取り組めることを考慮して、ある企業では、始業前の時間を活用して、無料で参加できるヨガイベントを実施しています。朝に身体を動かすことで、すっきりと目覚められるだけでなく、気分が爽快になり、より高いパフォーマンスで仕事に取り組める効果も期待できます。
また、無料で参加できることも社員にとっては大きなメリットです。外部のスポーツクラブに通う場合、企業からの補助を受けられて比較的安価で利用できるとしても、ある程度の料金はかかります。しかし、無料の朝ヨガなら費用負担がないため、より気軽に参加できるでしょう。しかも、職場で実施するため、外部のスポーツクラブに通う往復の時間もかかりません。
6-3.自転車通勤手当
社員が電車やバスなどの公共の交通機関を利用して通勤する場合には、実費に相当する通勤手当を支給する企業は少なくありません。一方、自転車や徒歩などの運賃がかからない方法で通勤する社員に対しては、通勤手当の支給を実施していない企業も多いと想定されるでしょう。
このような企業の社員は、自転車や電車、バスでも通勤できる距離に住んでいる場合、身体的に負担が少ない公共交通機関を選択するかもしれません。そのこと自体に問題はありませんが、せっかくの運動の機会を逸失しているとも考えることができます。
ある企業では、自転車で通勤する社員に対して、自転車通勤手当を支給しています。手当が受け取れることで、社員は積極的に自転車で通勤するようになり、健康を増進させることが可能になります。
また、駐輪場を完備し、自転車の置き場を探すのに苦労しないで済むように配慮しています。さらに社内にシャワーを備え付けているため、すっきりと爽やかな状態で仕事を始めることが可能です。
6-4.医療相談
心身の健康面において不安があっても、すぐに医療機関を受診しない方もいます。仕事が忙しくて時間を取れない、わざわざ行くのが面倒といった理由により、医療機関への足が遠のいてしまうケースも少なくありません。
しかし、病院に行かないことで治療が遅れ、気づいたときには重症化しているという可能性も想定されます。入院や手術が必要になり、一定期間、仕事ができなくなる恐れもでてきます。
ある企業では、チャットサービスを使って医師に相談できる福利厚生制度を実施しています。健康面で気になることを気軽に相談でき、医療機関を受診するかどうかの目安を判断する手段としても活用できるでしょう。また、重大な疾病につながる兆候に早めに気づき、早期に治療を開始し、重症化を回避できることもあります。
企業にとって社員は大切な戦力です。健康な状態で仕事をしてもらうためにも、チャットによる医療相談サービスは有用な福利厚生制度といえるでしょう。
7.【福利厚生のユニークな事例】社内コミュニケーション
社員が積極的にコミュニケーションを取り、企業人として一致団結することは、企業にとっても大きなメリットです。社員一人ひとりの企業への愛着が高まり、仕事に対するモチベーションが上がるだけでなく、離職の回避にもつながるでしょう。
社内コミュニケーションを促進するための福利厚生制度を実施している企業もあります。そのなかでもユニークな事例についてみていきましょう。
7-1.役員とのランチ代補助
役員と話したいときに使えるランチ代補助制度を導入している企業があります。社員が役員を指名できるため、憧れの役員や興味のある部門を統括する役員と話す機会を得られるでしょう。
また、新規事業のアイデアや社内制度の改革などを思いついたときにも、この役員ランチの制度を活用できます。直接、役員に話してみることで、アイデアや改革が実現しやすくなったり、今まで気づかなかった課題や問題点に気づけたりするかもしれません。
キャリアについて相談したいことがあるときも、役員ランチの制度は役立ちます。事業面で大局的なものの見方ができる役員も多くいるため、より広い視野に立ったアドバイスをもらえる機会となります。
7-2.朝食無料サービス
社内食堂で朝食を無料で提供する福利厚生制度を実施している企業もあります。朝食をきっかけに社内コミュニケーションを高める効果を期待できるでしょう。その日の仕事について簡単に打ち合わせをしたり、チームや部署内での結束を高めたりする時間としても活用できます。
隣り合って座った社員と言葉を交わすことで、普段は話す機会がない社員と知り合えるかもしれません。社内に顔見知りや知り合いが増えれば、企業に対する愛着が増し、より仕事に対して熱意を持って取り組めるようになるでしょう。
始業よりも少し早めに職場に到着することで、気持ちの面でも余裕を持って仕事に従事できるかもしれません。その日の仕事内容を整理し、効率良く業務を進める準備時間としても活用できるでしょう。
また、一般的に出勤日の朝は慌ただしいものです。特に子どもがいる世帯では、子どもを保育園に連れて行ったり、バランスの取れた食事を準備したり、お弁当を作ったりと、時間的に余裕がなくなりがちで、朝ごはんを食べずに出勤する方もいるかもしれません。
朝食を食べないと集中力が低下し、仕事のパフォーマンスが下がる可能性もあります。朝食を提供することで、社員の業務効率を高め、より良い成果を期待できる点もメリットです。
8.【福利厚生のユニークな事例】その他の国内事例
ユニークな福利厚生制度を実施している企業はまだまだあります。また、福利厚生制度を企業アピールの一つとして捉える企業もあるため、今後もユニークな制度が増えていくと予想されるでしょう。ここまで紹介したカテゴリーに該当しない制度をいくつかご紹介します。福利厚生制度の開発のヒントにしてください。
8-1.失恋休暇
仕事にプライベートを持ち込まないのが社会人としてのマナーであっても、あまりにもショックが大きい出来事があると、仕事に対してもやる気が起きず、いつも通りのパフォーマンスを発揮できないかもしれません。
ある企業では、失恋したときや離婚時に活用できる休暇制度を実施しています。年代が高くなると取得できる休暇日数が増え、より時間をかけて気持ちをリフレッシュできるように工夫されている点も特徴です。
長い人生において、失恋や離婚といった出来事はないに越したことはありません。しかし、万が一のときに休暇を取得できる制度があれば、気持ちを切り替え、早期に仕事に集中できるようになるでしょう。また、失恋や離婚により、引っ越し手続きや子どもの転校手続きなどが必要になることもあります。休暇を取得できれば、手続きを早く進めることができ、新生活を始めやすくなるでしょう。
8-2.副業推進制度
副業したい人を応援する制度を実施している企業もあります。副業を通して、会社の仕事だけでは身につけることができないスキルを身につけたり、起業をするなどの自己実現の機会を得たりすることができるでしょう。
副業によって収入を複数から得ることになるため、より変化に強い家計を構築することができます。例えば、何らかの事情で主業となる企業が倒産したり、副業から収入が得られなくなったりしたときでも、収入が皆無になる状態は回避することが可能です。
主業とは異なる業種の副業にチャレンジすれば、主業に活かせる事業アイデアを思いついたり、業務遂行の効率性を高めるヒントを得たりすることもでき、主業のパフォーマンスを向上させる可能性もあります。
特定の企業の社員という立場から離れる機会にもなるため、自分自身を見つめ直し、本当にしたいことを見つけられるかもしれません。また、複数の仕事を並行して行うことで、「どの場所でもやっていける」という自信を得られるのもメリットです。
なお、この制度を導入することで、必ずしも副業という選択を必須としているわけではありません。従来通り、主業にだけ専念することもでき、副業推進制度によりライターやプランナー、起業家などとしてパラレルワークを実施するという選択もできます。いずれの場合も、その人らしい働き方を選べる制度といえるでしょう。
9.【福利厚生のユニークな事例】海外
ユニークな福利厚生制度を実施し、社員のモチベーションアップにつなげている企業は海外でも少なくありません。海外での事例もご紹介しましょう。
- 社員の家族をターゲットとした制度
- 休暇と手当をセットで受けられる制度
- 奨学金返済サポート制度
- 卵子凍結費用サポート制度
それぞれ具体的にどのような制度として実施されているのか、詳しくみていきましょう。
9-1.社員の家族をターゲットにした制度
ある企業では、社員が在職中に死亡した場合、給料の一部を一定期間家族に支給する福利厚生制度を実施しています。働き手を失った家族の経済的なダメージを軽減するために役立ちます。また、子どもが小さい、介護を必要としている家族がいるといった理由で、遺された家族が働けないときにも役立つ制度といえるでしょう。
さらに、子どもの行事に参加するときは無条件で休める企業もあります。家族の大切な瞬間に立ち会うことができるため、より家族中心の生活を送ることが可能です。
他にも、長期間の育児休暇を有給で取得できる企業や、家族の一員としてペット同伴の出勤が可能な企業などもあります。家族との関係を強化できる仕組みを構築することで、社員の働きやすさを向上するだけでなく、ワークライフバランスの取りやすい環境を提供しているといえるでしょう。
9-2.休暇と手当をセットで受けられる制度
1週間単位、1ヵ月単位の長期の有給休暇を実施している企業は少なくありません。勤続年数によって有給休暇の日数が増える企業も多く、社員の早期離職を減らす効果も期待されています。
また、長期休暇と休暇手当がセットで受けられる企業も少なくありません。休暇中に海外旅行をするときには、社員や家族の交通費や滞在費を負担する企業もあります。
宿泊業を営むある企業では、世界中にある自社の宿泊施設であればどこでも無料で泊まれるという福利厚生制度を実施してきました。自社に対する理解を深めるだけでなく、社員の視野を広げる効果も期待できるでしょう。
あるスーパーマーケットチェーン店では、あえて休日や連休などのかき入れ時に閉店し、社員が家族と休日を楽しめるようにしました。利益よりも社員の福利を優先させることで、社員満足度が向上するだけでなく、企業イメージの向上にもつながっています。
9-3.奨学金返済サポート制度
奨学金を返済している社員を金銭的にサポートする福利厚生制度を実施している企業もあります。上限を定めてはいるものの奨学金返済を援助することで、社員の金銭的負担を軽減することが目的です。また、奨学金という借金をなくすことで、社員の精神的な負担の軽減も目指せるでしょう。
9-4.卵子凍結費用サポート制度
ライフプランやキャリアプランは千差万別です。20代は仕事にまい進してキャリアを形成し、30代、40代になってある程度の地位を得てから、出産や育児の休暇を取得して子どもを産みたいと考えている女性も少なくありません。
将来的な出産を予定している女性のために、若いうちに卵子を凍結して保管する費用をサポートする企業もあります。年齢を重ねるごとに体の機能が衰えるのと同様、卵子も母体の年齢とともに衰えることが指摘されてきました。また、加齢とともに自然妊娠率も下がるとされています。
とはいえ卵子凍結保管には費用がかかり、経済面からキャリアと出産の両立を諦めてしまうケースもあるかもしれません。卵子凍結費用を企業がサポートすることで、キャリアも出産も諦めないという選択肢を採ることが可能になるでしょう。また、キャリア形成をサポートすることで、優秀な人材の流出を防げるだけでなく、社会的イメージの向上にもつながります。
10.ユニークな福利厚生制度で会社の魅力を高めよう
社員の意見を反映させた福利厚生制度を導入することで、企業に対する満足度が向上し、より定着率の高い職場環境を構築することができます。また、求職者にとっても充実した福利厚生制度は魅力の一つのため、応募者が増え、優秀な人材の確保も実現しやすくなるでしょう。
他企業ではあまり例のないユニークな福利厚生制度を実施するなら、ニュースバリューも高く、企業の知名度向上やイメージアップも期待できます。社会的に高く評価されるようになり、さらなる社員の愛着形成や応募者の増加にもつながります。
日本国内企業では、独自性の高いフレックスタイム制を導入した企業や、社員の健康増進を目的とした福利厚生制度を実施している企業もあります。また、企業によっては、朝食やランチの費用をサポートすることで、社内コミュニケーションの活性化を図ってきました。これらの福利厚生制度は社員の働きやすさ向上につながっているとみることができます。
海外でも多くのユニークな福利厚生制度が実施されています。あえて売上が高くなる時期に休業日を定めることで、社員が家族と休暇を楽しめるようにサポートする企業、長期の有給休暇と休暇手当をセットで提供する企業などもありました。紹介した福利厚生制度の事例も参考にして、より魅力的な企業になるためにオリジナリティのある制度を開発していきましょう。