中途採用の時期は戦略によって異なります。具体的にはどのようなスケジュールで臨めばよいのか、活発になるのはいつが多いのかまとめました。また、中途採用の時期を決めるポイントや、時期ごとのメリットと注意点、中途採用に活用できる具体的な方法についても解説します。
1.中途採用のスケジュール例
中途採用は、以下の流れで進めていきます。
- 計画立案
- 母集団形成
- 採用選考
- 入社前研修
入社をいつの時期にするかによって、スケジュールが異なります。例えば、4月初めの入社を目指すのであれば、次のようにスケジュールを組むことができるでしょう。
- 計画立案:1月下旬
- 母集団形成:2月上旬~2月下旬
- 採用選考:2月中旬~3月上旬
- 入社前研修:3月上旬~3月下旬
採用する人数が多い場合は、何度かに分けて採用選考と入社前研修をする必要があるため、長めに期間を取っておくと安心です。また2月入社を目指すのであれば、次のようにスケジュールを組むのがよいでしょう。
- 計画立案:11月上旬
- 母集団形成:11月下旬~1月上旬
- 採用選考:12月上旬~1月下旬
- 入社前研修:1月上旬~3月上旬
4月入社を目指す場合と比べて就職活動をしている方が少なく、母集団形成に時間がかかることが予想されるため、母集団形成と採用選考、研修にそれぞれ長めの期間を確保しておきます。無理なくスケジュールを進行できるよう、余裕を持ったスケジュールの構築が必要です。
1-1.新卒採用のスケジュールとの兼ね合いを確認
中途採用のスケジュールを組むときは、新卒採用との兼ね合いを確認しましょう。面接などの求職者一人ひとりに時間をかける工程が重なると、採用担当者の負担が大きくなるだけでなく、時間的に余裕がなくなり、丁寧に選考することが難しくなるかもしれません。
反対に、企業説明会や研修などの集団で実施できる場合は、工程を重ねることで手間を省けることがあります。
新卒向け、中途採用向けに特化した研修は同時に開催できませんが、まとめられるところはまとめて、他の業務に支障が生じないように注意しつつ効率性を高めるスケジュールを組みましょう。
1-2.時期を決めずに通年採用する方法もある
紹介したようにスケジュールを組み、中途採用活動を進めていくこともできますが、スケジュールを組まずに通年採用する方法もあります。
通年採用の場合、入社時期について現場の理解と協力が欠かせませんが、転職者が増えていることを考慮すると優秀な人材を取り漏らさないというメリットがあります。
ただし、人事担当者は常に面接や研修のサポートをすることになり、手間が増える点には注意が必要です。
採用計画を立て、母集団を形成するという従来の過程を踏まないため、いつも以上に臨機応変な対応が求められます。新卒採用の時期と重なると、さらに負担が増す点にも留意しましょう。
なお、医療や介護の業界などでは、通年採用が一般的です。いつ求職者が来ても同じクオリティの対応ができるよう、採用活動のマニュアル化と見直しを習慣化しておく必要があります。
2.中途採用の時期は採用戦略によって異なる
スケジュールを立てて年に何度か中途採用を行う場合、採用活動の時期は戦略によって変えることも可能です。
新入社員研修をまとめて実施するために、新卒採用者が入社する4月に合わせて1~3月に採用活動をすることもできますが、その他にも夏採用と秋採用と呼ばれるタイミングもあります。それぞれの採用戦略と具体的なスケジュールをみていきましょう。
2-1.夏採用
夏採用とは、夏のボーナス後に離職する方を見越した採用活動です。ボーナスを受け取ってから転職しようと考えている方は6月に採用活動を始める傾向にあります。
8月中旬からは夏季休暇とも重なるため、6月から企業説明会や面接を開始し、8月前半までに内定を出して月内に入社してもらうという選択ができるでしょう。
2-2.秋採用
秋採用とは、上半期の離職者を見越した採用活動です。10月からの下半期の開始と合わせて新しい職場に移ろうと考えている方は、9月までの上半期で現在の職場を退職する傾向にあります。
8月の夏季休暇終了あたりから求職者が増えてくるため、8月末~9月末を目途に企業説明会や面接を開始しましょう。
3.中途採用の時期別メリット
実際のところ、どの時期に採用活動を実施してもその時期ならではのメリットを得ることは可能です。時期ごとのメリットを理解することで、より目的に沿った採用活動を実現できます。時期別のメリットについてみていきましょう。
3-1.1~3月
1〜3月に採用選考や研修を実施し、4月入社を目指す場合は、新卒社員とまとめて研修できるというメリットがあります。新卒向けの研修をする時期に中途採用向け研修を行えば、無理なく同時入社が可能になるでしょう。
新卒採用と中途採用の社員がまとめて入社するため、現場の混乱も最小限に抑えられます。また、年度切り替えの新規事業立ち上げなどに人材を補充できる点も、1〜3月に採用活動を実施するメリットです。
3-2.4~6月
4〜6月に採用活動をするケースでは、中途採用を実施している企業が多くないためライバルが少ないというメリットがあります。求職者も多くの企業に応募していないと考えられ、ある程度時間をかけて選考しても他社に後れを取ることはないでしょう。
通常であれば入社時期にあたる4〜6月に応募する方は、別の企業に入社したもののミスマッチを感じて早めに離職を決意した、あるいは年度末まで勤務してプロジェクトの進行に影響を及ぼさないように配慮したなどの事情があると想定されます。普段は忙しくしている人材にも会える機会となるため、優秀な人材を逃さないようにしましょう。
また、複数の企業に応募している可能性か低いため、選考辞退のリスクが減るのも4〜6月に採用活動をするメリットです。年度が変わる忙しい時期ではありますが、丁寧に採用計画を立てて、人材確保に努めましょう。
3-3.7~9月
7〜9月は、ボーナスを受け取って転職するケースが多く、1〜3月と並んで採用活動の繁忙期になります。母集団を形成しやすく、多くの求職者が集まるため、優秀な人材を確保できる時期といえるでしょう。
また10月の入社に照準を合わせることで、下半期のプロジェクトに必要な人材を確保できます。新たに始動するプロジェクトや配置転換とリンクさせれば、よりスムーズに既存の社員と合流できるのも7〜9月に採用活動をするメリットです。
3-4.10~12月
10〜12月は、新卒採用の活動が一旦落ち着く時期です。1〜3月の新卒向け研修や内定者セミナーなどを前に時間に余裕がある可能性が高いため、中途採用の選考や研修に専念できるでしょう。前もって採用計画を立て、1月の入社を目指して段取り良く活動を進行させます。
企業にとって1月からの数ヶ月間は、人事面において何かと慌ただしくなる時期です。新卒採用の面接や研修が続くだけでなく、4月になると新入社員が各部署に配属され、一時的に業務進行が滞ることもあります。
そのような時期を迎える前に中途採用の人材を補充することで、即戦力を強化して通常業務をスムーズに進めるだけでなく、新人教育のサポート要員の補強としても期待することができるでしょう
4.中途採用の時期別注意点
中途採用は活動時期によって注意するポイントが異なります。それぞれの時期において、注意したいポイントを詳しくみていきましょう。
4-1.1~3月
1〜3月は中途採用を希望する求職者が比較的多くなる時期のため、対応が遅いと他社に優秀な人材を取られることにもなりかねません。選考スケジュールがスムーズに進むように、丁寧に採用計画を立てておきましょう。
面接通過や採用通知などの連絡を、できるだけ早く求職者に伝えることも大切です。連絡が遅くなると、求職者を不安にさせるだけでなく、先に採用通知が届いた他社への入社を決めてしまう恐れがあります。対応が後手に回ると必要な人員数を確保できず、採用活動をやり直すことにもなりかねません。
また、この時期には中途採用活動を実施している企業が多いと考えられることから、他社とは異なる魅力をアピールすることも大切です。企業説明会のときに、オリジナリティの高い社内制度や取り組みについて紹介することもできるでしょう。福利厚生制度や評価制度、スキルアップ研修などがあれば紹介し、魅力的な職場環境であることを伝えます。
第二新卒などの比較的経験が浅い求職者に対しては、入社前研修を充実させることで自社の魅力を伝えられます。
その他、母集団を形成してから選考面接を始めるのではなく、随時面接を実施するのも一つの方法です。求職者の転職活動の期間を短縮でき、より求職者に寄り添った採用活動を実現できます。
安心して働いてもらうためにも、求職者の立場に立った採用計画を立てましょう。
4-2.4~6月
4〜6月の採用活動は、求職者が少ないため母集団形成が難しいことに注意が必要です。母集団を形成せずに求職者ごとにスケジュールを立てて面接を実施するなど、状況に合わせた対応が求められるでしょう。教育担当者の負担が大きくなりすぎないように、事前に対策を練っておくことも必要です。
4-3.7~9月
7〜9月はボーナス支給後に求職者が増える可能性があるため、母集団を形成しやすく、中途採用活動もしやすくなります。しかし、その一方で複数の企業から内定を受け取る求職者が増え、内定辞退のリスクも高まるため、採用活動は早めに始めることが必要です。
また、求職者からアプローチを受けたときは迅速にレスポンスすること、企業説明会などのイベントの告知を念入りに行うこと、求職者の利便性に配慮してオンライン説明会やオンライン面接を実施することなども必要になるでしょう。
優秀な人材を獲得する好機を逃さないためにも、万全の準備をして採用活動を実施します。
4-4.10~12月
ボーナス支給前のタイミングのため、中途採用市場に人材が出回りにくい時期です。その分、比較的ゆっくりと採用活動を実施でき、母集団形成に時間をかけることもできます。
ただし、採用活動が年末年始と重なるときは、慌ただしくなりがちで、求職者のスケジュールを確保するのも難しくなるかもしれません。オンライン面接を実施する、面接や研修の回数を減らすなど、求職者に配慮して臨機応変にスケジュールを組みましょう。
5.中途採用の方法
時期を決めて、中途採用を実施する場合は、自社サイトや合同説明会などを利用することができます。一方、通年採用を実施するなら転職サイトの活用が便利です。特に期限を定めずに求人広告を掲載していれば、興味を持った求職者が問い合わせたり、応募したりしてくれるでしょう。
長期にわたって求人広告を出すときは、料金体系についても確認しておくことが大切です。転職サイトの料金体系は、期間や広告スペースにより一定の料金が課せられる定額制と、採用一人につき規定の料金を支払う成功報酬制の2つがあります。
そのほか一定の料金を支払いつつ成功報酬も支払うタイプもあります。採用したい人数や予算などに合う転職サイトを選びましょう。
転職サイトのユーザーが多いこと、閲覧されやすい仕組みになっていることも注目したいポイントといえます。転職サイトに求人広告を掲載するのであれば、料金体系もチェックしておきましょう。
また、転職サイト以外にも、中途採用者の採用活動に活用できる方法として、求人検索エンジンというクリック課金型があります。
6.企業に合う中途採用のスケジュールを決めよう
中途採用を希望する求職者が多い時期は、母集団を形成しやすく、多くの候補者の中から優秀な人材を選べるというメリットがあります。
その一方で、求職者が少ない時期も、なかなか出会えないような優秀な人材が採用市場に出ている可能性があるだけでなく、ライバル企業が少なくなるというメリットがあり、採用活動に適した時期といえるでしょう。
中途採用を成功させるためには、時期ごとのメリットや注意点を理解し、それに応じた採用計画を立てることが必要です。また、一年中いつでも求職者を受け入れることができるように採用スケジュールをマニュアル化すること、求職者の都合に臨機応変に対応することなども必要になるでしょう。
通年採用を実施する場合は、求職サイトの活用も検討できます。自社の採用計画に合った料金体系かどうか、また、検索されやすいサイトかどうか確認し、適したものを選びましょう。