企業の採用担当者を悩ませる問題の一つに「ドタキャン」があります。面接の予定だったのに、応募者が現れないドタキャンは、時間と費用をかけている採用活動にとって大きなマイナスです。本記事では、ドタキャンを防ぐ対策や、ドタキャンされた場合の対処法などをまとめました。
1.面接ドタキャンされた場合の企業のデメリット
面接をドタキャンされてしまうと、採用活動を行っている企業には大きな痛手です。応募者の数が減ることで、優秀な人材を確保できるチャンスが減ることに加え、ドタキャンされた分の穴埋めでさらに募集を行うと、時間も費用も余計にかかります。
採用担当者のやる気が削がれるといった、モチベーション面でのデメリットも心配されます。
ここでは、面接をドタキャンされた企業のデメリットについて、以下の2点に絞って解説します。
1-1.応募者の母数が減る
面接をドタキャンした人が1人いれば、単純に応募者が1人減ることになります。応募者数が少ない状態で選考をするのでは、優秀な人材を獲得できる可能性が下がってしまいます。
応募者数に目標を設けて採用活動を行っていた場合は、改めて応募をしたり、期間を延ばしたりするなどの手間が必要です。
1-2.採用コストが上がる
採用活動は企業経営の根幹にかかわるため、時間と費用をかけて入念に準備するのが通例です。面接をドタキャンする応募者が現れたことで、追加の応募を行うなどすると、さらに時間と費用がかかってしまいます。
採用担当者はこれまで、ドタキャンした応募者に対しても連絡を取り、職務経歴書を読み込んだり、面接日程を調整したりと労力をかけてきたはずですが、その時間や努力は無駄になってしまいます。
直接的な採用コストが上がるだけでなく、ドタキャンされた採用担当者のモチベーションが下がってしまうなどのリスクも懸念点です。
2.応募者がドタキャンする主な理由
応募者が面接をドタキャンするのには、それなりの理由があるものです。ビジネスマナーの面から考えると、ドタキャンは許されるものではありませんが、ドタキャンする側の理由を理解しておくことで、今後のドタキャンを防止するための対策に役立てられます。
ここでは、応募者が面接をドタキャンする主な理由6つについて解説していきます。
2-1.他社から内定をもらったため
面接をドタキャンする理由としてよく挙げられるのが、「他社から内定をもらったため」です。応募者は複数の企業で選考を受けているのが普通であり、他社から先に内定が出ることもあるでしょう。
内定をもらった先が第一志望の企業であれば、そちらに必要書類を送るなどの対応が先になり、他の応募先への連絡が遅れてしまうことも考えられます。
2-2.突発的な避けられない事情があったため
予期せぬ事態が突発的に起こったため、面接をドタキャンせざるを得なかった事態もあり得ます。病気や事故、身内の不幸などは突然発生し、その場で対応しなくてはなりません。あわてたり動揺したりして、面接に行けない旨を連絡しそびれたりすることも考えられます。
社会人としては連絡一本だけでも入れるべきところですが、身内の不幸や感染症に罹患したなどの場合は、致し方ないケースもありそうです。
2-3.日時を間違っていたため
応募者本人にドタキャンする気はなくても、面接の日時を間違って覚えていたため、実際にはドタキャンになってしまったという事例も見られます。
アポイントメントの確認は、社会人としての基本中の基本です。しかも、採用面接のような大事な日程を間違えることは、本来あってはなりません。
ただし、「連絡がわかりにくかったために日時を間違った」「日時の連絡から面接まで日にちが長かった」「企業の都合で面接日程を変更し、何度も再調整を行った」など、企業側に問題なしとはできない場合もあります。日時を間違ってドタキャンされたとわかったら、なぜそうなったのか原因を調査することも必要です。
2-4.良くない評判を耳にしたため
SNSの利用が広がり、虚実ないまぜの情報が飛び交う現代にあっては、自社についての良くない評判が拡散していることもあり得ます。そうした情報を入手して、真偽を確かめることもなく面接をドタキャンする行動は、企業側から見れば非常識極まりないものです。
しかし、根拠不明の言説に踊らされる人がいるのも事実であり、企業側としてはこうした理由でのドタキャンが起こり得ると認識したうえで、採用活動を進めるほかありません。
2-5.企業側の対応が悪かったため
求人情報を見て連絡や質問をしてきた応募者に対して、自社の対応が悪かったことで面接のドタキャンにつながることもあります。具体例としては、「折り返しの連絡がなかなか来ない」「回答が不十分で疑問が解消されなかった」などです。
不誠実な対応に直面すれば、応募者の企業に対する印象は悪くなり、信頼度も下がります。印象の悪い企業にあえて入社したいとは思わないため、面接に行く気持ちが薄れ、ドタキャンするという悪循環につながりかねません。
企業、応募者ともに貴重な時間を無駄にしないためにも、問い合わせや質問に対しては丁寧な回答を心がけることが大事です。
2-6.面接に行くのが面倒になったため
悪天候などが理由で、面接に行くのが面倒になってドタキャンする、という例も少なからずあります。採用面接という、自分の将来を占う重要なイベントを「面倒になったから」とドタキャンされるのでは、採用担当者も浮かばれません。
面倒になる事情は人それぞれであり、有効な対策は講じきれないのが実情です。
3.企業が面接のドタキャンを防止する10の対策方法
前項で、応募者が面接をドタキャンする6つの主な理由について解説しました。では、企業としてはどのようにすればドタキャンを防止できるのでしょうか。ドタキャンする側の理由を見ると、企業側に問題がある場合もありました。
企業のせいとばかりは言えなくても、少し丁寧なケアをすることで、ドタキャンを防げることもあります。ここでは、企業が面接のドタキャンを防止するための10種類の対策について、説明していきます。
3-1.日程調整に関する6つの対策
10種類の対策のうち、まずは日程調整に関する6つの対策について紹介します。
3-1-1.リマインド連絡をする
応募者がドタキャンする理由の一つに「日時を間違っていたため」というものがありました。複数の企業から連絡を受けたり、現職で仕事が立て込んでいたりすると、故意ではなくても日程を失念してしまうことは考えられます。
それを防ぐため、面接前日にリマインドの連絡をすることは必須です。電話でリマインドすると、声の調子などから入社志望度の高さが確認できることもあります。
リマインドの連絡に対して、辞退したい旨を伝えてくる応募者もいますが、当日に連絡もなくドタキャンされるのに比べれば、事故などの心配をしないで済む分、採用担当者の精神的な負担は少なくなります。
3-1-2.連絡は営業時間内に行う
書類選考の通過や面接日時の連絡は、応募者にとって朗報であるため、なるべく早く伝えたいものです。しかし、早く連絡しようと思うあまり、夜間や休日に連絡してしまうと逆効果になることもあります。
深夜に連絡が来れば、「こんな時間まで働かされるブラック企業なのか」と思われ、良かれと思ってした連絡が面接辞退やドタキャンにつながりかねません。応募者への連絡は、平日の日中帯にするのが基本です。
3-1-3.面接日時は複数の選択肢を作っておく
応募者も多忙な日常を送っていることが多いため、面接日時を1つに絞って提示したのでは、調整が付かないこともあります。企業側が応募者の予定を聞かずに、一方的に面接日時を通知すると、高圧的な印象を与えかねません。
面接の日程が合わないために応募を辞退されてしまっては、優秀な人材をみすみす逃してしまう懸念があります。応募者が調整しやすいように、面接日時は複数用意して、選んでもらうようにすること大切です。
可能であれば、土日や祝日なども面接候補日とすると、平日は多忙な応募者も日程調整がしやすくなります。
3-1-4.企業側の事情で面接日時を変更しない
企業の都合で面接日時を変更すると、企業イメージの低下にもつながりかねません。応募フォームなどに希望の時間帯を記入してもらうようにすれば、スムーズな調整が可能です。
面接するのは企業側ですが、逆に応募者に面接されているという意識で、丁寧な対応を心がけましょう。
3-1-5.選考スケジュールをあらかじめ伝えておく
応募者は複数の他社と並行して選考に臨んでいるのが普通です。そのため、面接日が重なるなど、調整が必要になる局面もしばしば出てきます。他社から内定が先に出されると、辞退や面接のドタキャンなどの可能性も高まります。
応募者に予定を調整してもらうようにするには、書類選考や面接日などの選考スケジュールをあらかじめ伝えておくことが大切です。優秀な人材に入社してもらうという観点からは、できる限り他社より早く選考を進めるのが得策です。
3-1-6.面接がしやすくなる制度を取り入れる
応募者のドタキャンを防ぐには、面接を受けやすくなるような制度や仕組みを導入するのも一案です。社内の様子や仕事内容などがわかるような動画を撮影し、YouTubeで配信している企業もあります。
URLをメールで送れば簡単に閲覧できるため、自社の魅力をアピールするのに役立ちます。面接官がどのような人物なのかを、事前に連絡しておく手法も有効です。年齢や性別、人となりなどがある程度わかっていると、面接時に初めて会うよりも応募者の緊張が和らぎ、面接が円滑に進められます。
3-2.応募者への対応に関する4つの対策
次に、応募者への対応に関する対策を4つ紹介します。
3-2-1.レスポンスは迅速に行う
面接日程の調整などは、連絡が早かった企業が優先されるため、レスポンスは可能な限り迅速に行うことが重要です。迅速な連絡はドタキャンを防ぐだけでなく、優秀な人材の確保にもつながります。
書類選考に時間がかかったり、面接までの日程が長かったりすると、入社したい気持ちも薄れかねません。選考過程に時間がかかりすぎているようなら、採用フロー全体の見直しも要検討です。
面接日程などの連絡が早い企業ほど、応募者の好感度も上がりやすく、ドタキャンを防ぐことにつながるとされます。競合企業の存在を意識して、早め早めの連絡を心がけることが肝要です。
3-2-2.丁寧な対応を心がける
問い合わせなどへの自社の対応が悪かったことで、応募者にドタキャンされてしまう事例は、企業側の努力で防ぐことが可能です。
折り返しの電話やメールの返信が遅くなったり、電話の受け答えが横柄で上から目線であったりすると、応募者の持つ印象は悪くなります。自社で採用しなかったとしても、取引先の社員として関係ができる可能性も、頭に入れておきたいところです。
メールの文章も、テンプレートをそのまま使ったような画一的なものでは、いかにもお座なりな対応という印象を与えます。その応募者だけに送っていることがわかるように、文面を工夫してみるのがおすすめです。
質問を受けた場合は、疑問が解消できるように、しっかりとした回答をすることが大事です。一般に、質問と回答のやり取りを繰り返した応募者ほど、面接を辞退しないといわれます。電話やメールに限らず、応募者に丁寧な対応を心がけることが、ドタキャンを防ぐ第一歩です。
3-2-3.応募者からの質問には可能な範囲で答える
応募者からの疑問や質問に対しては、できる限り答えることが重要です。電話やメールなどで小まめにコミュニケーションを取ることにより、応募者に辞退の意向があるかどうかがわかります。面接をドタキャンする理由の一つに「仕事内容や条件が希望と異なる」というものがありますが、疑問や質問に答えるやり取りを積み重ねていくことで、この理由でのドタキャンを防げます。
3-2-4.社内で応募対応をマニュアル化する
採用担当者は連絡調整や面接の実施など、忙しく動き回っていることが多いものです。応募者からの質問や問い合わせがあった際、直接の担当者がいないからといって連絡を後回しにしたり、印象を悪くするような対応になったりするのでは、誠実さが欠けるとしてドタキャンを招きかねません。
一時対応は誰でもできるように、マニュアル化しておくのがおすすめです。応募対応のマニュアル化により、誰が対応しても良い第一印象を残してもらうことにつながり、担当者からの折り返しの連絡をしないで済めば、スピーディーに選考を進められます。
4.面接をドタキャンされた場合の対処法
ここまで、応募者が面接をドタキャンする理由と、ドタキャンを防ぐための企業の対策についてまとめてきました。しかし、どのような対策を講じても、ドタキャンをゼロにすることは困難です。
採用担当者としては、面接をドタキャンする応募者も出てきてしまうという前提で、対応を考えておく必要があります。ここでは、面接をドタキャンされてしまった場合の対処法についてまとめました。
4-1.状況の確認を行う
応募者が面接をドタキャンした場合、有無を言わさず不採用にする企業もありますが、そうでない企業が主流でしょう。事故や病気など、不測の事態も考えられます。連絡なしに現れないのであれば、まずは本人に連絡して、状況を確認するのが基本です。
電話を入れるのか、メールにするのかなど、ドタキャンが発生した際の連絡ルールを社内でまとめておけば、いざドタキャンが出た時にも、あわてずに対応ができます。
4-2.本人に非がない場合は再度日程調整
応募者が面接をドタキャンした場合でも、事故や災害、病気、身内の不幸など、本人に非がない場合には、日を改めて面接を行うことにする判断もあり得ます。
求人が少なくて悩んでいる企業ではとくに、面接者数の確保も、優秀な人材を獲得するためには重要です。応募フォームのURLをメールで送り、再度の日程調整を依頼するなどの方法で行います。
4-3.次の候補者をピックアップする
状況を確認するために電話やメールを入れても、ドタキャンした応募者と連絡がつかないこともあります。その場合は、選考を辞退したものと判断するほかありません。その応募者はあきらめて、求人広告を打つなど次の候補者のピックアップに移りましょう。
5.面接ドタキャンを未然に防いでスムーズな採用活動を行おう
採用活動も佳境に入った面接時点で応募者にドタキャンされると、それまでにかけた時間と費用が無駄になるだけでなく、担当者のモチベーションダウンも心配されます。
ドタキャンは理由が示されることがないため、完全な対策が取れないのが実情です。それでも、面接のドタキャンを防ぐには、迅速な連絡や丁寧な対応など、ある程度有効な対策もあります。
面接をドタキャンされた際の徒労感は大きいため、できる限りの防止策を講じて、採用活動をスムーズに行えるようにしましょう。