採用活動を見直す際には、トレンドの採用手法を採り入れることがおすすめです。採用市場や時代の変化にマッチしているため、抱えている課題の解決につながるかもしれません。本記事では採用におけるトレンドの手法7選や、適切な採用を行うためのポイントなどを解説します。
1.採用におけるトレンドの変化
採用手法は、時代に応じて変化します。新卒採用、中途採用ともに、従来は大規模な母集団を形成して行う「マス型採用」のみを行う企業がほとんどでした。近年は、マス型採用に「個別採用」を組み合わせて採用を行うといったように、新たに個別採用に取り組む企業が増えてきています。
マス型採用に関する明確な定義づけはないものの、採用する人数に対してかなり多くのエントリー数を集め、選考過程で多数の応募者をふるい落とす手法です。これに対して、個別採用は自社が必要とする人材をピンポイントで採用する方法です。
2.採用トレンドが変化している背景
採用トレンドが変化している背景には、以下のような状況が挙げられます。
- 有効求人倍率の変化
- 少子高齢化に伴う労働力人口の減少
- オンライン化の加速
- 採用時のミスマッチの増加
- 働き方の多様化
それぞれの内容を解説していきます。
2-1.有効求人倍率の変化
厚生労働省の公表によると、令和4年(2022年)平均の有効求人倍率は前年より0.15ポイント上昇し、1.28倍でした。、平成29年(2017年)から令和元年(2019年)までの有効求人倍率が、1.50倍から1.60倍前後で推移していたことを踏まえると、まだ低い水準にあります。
しかし、景気は徐々に回復していくとみられ、それに伴い有効求人倍率も上昇していく見通しです。
2-2.少子高齢化に伴う労働力人口の減少
総務省の「令和4年版情報通信白書」には、少子高齢化により日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少していると記載されています。生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の人口のことです。
前述のとおり、ここ数年は買い手市場の傾向があるものの、長期的な視点に立つと労働力の不足が懸念されます。
2-3.オンライン化の加速
近年、オンライン採用を行う企業が増えています。従来は対面で実施されていた説明会や面接などの多くが、オンラインで行われるようになりました。
採用活動のオンライン化は、企業と応募者双方の時間や費用の削減につながるほか、遠方の人材ともコンタクトが取れる点がメリットです。
一方、対面よりも応募者の性格が読み取りにくかったり、応募者が気軽に多くの企業の選考に参加できるようになったことで、優秀な人材に内定が集中したりといったデメリットもあります。
2-4.減らない採用時のミスマッチ
採用時のミスマッチとは、労働条件や企業文化、応募者のスキルや経験などに関して企業と応募者の認識のズレが生じることです。具体的な要因としては、以下のようなケースが想定されます。
- 履歴書や職務経歴書に記載されている表面的な情報で判断してしまう
- 企業の課題や現状などを伝えきれていない
履歴書に記載されている表面的な経歴やスキルのみで判断してしまうと、入社後にギャップに気がつくといった事態になりかねません。企業にとっても痛手ですが、応募者も職場に居づらくなり、結果的に早期離職につながる可能性が高くなります。入社前に個別の面接などで、応募者としっかりコミュニケーションを図ることが重要です。
また、応募者に対して企業側がメリットばかり伝えることも、採用時のミスマッチを引き起こす要因です。企業の課題や、残業や休日出勤に関するリアルな状況などを伝えきれていないと、入社前に抱いていたイメージと実際の状況にギャップを感じやすくなります。
昨今の採用のオンライン化もその要因の一つになると考えられます。たとえばWeb面接は、対面の面接に比べて相手の細かい反応を感じることが困難といえるでしょう。また、画像や音声が不明瞭になったり、途切れてしまうケースもみられます。
昔から根強く存在する採用時のミスマッチですが、現在でもなかなか解消されず、せっかく採用しても人材が定着しないことに悩む企業は少なくありません。
2-5.働き方の多様化
2018年1月に厚生労働省が発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業は合理的な理由なく制限できないことを示しています。
さらに2022年7月のガイドライン改定は、労働者が職業選択を通じて、多様なキャリア形成ができるように一歩進んだ内容となっています。具体的には、企業の副業・兼業の取り組みをホームページなどで公表するように推奨するものです。さらに、フリーランス人口の増加も見逃せません。
またリモートワークのほか、従来の出社型のオフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワーク、時短勤務制度やフレックス勤務制度なども普及してきています。正社員として毎日オフィスに出社し週5日8時間勤務をするという、かつての常識が変化しつつあるのです。
参照元:厚生労働省「一般職業紹介状況(平成29年12月分及び平成29年分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(平成31年3月分及び平成30年度分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和元年12月分及び令和元年分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について」
総務省「総務省の「令和4年版情報通信白書」」
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
3.【新卒・中途採用共通】トレンドの採用手法4選
採用市場の変化に伴い、以下のような新しい採用手法が登場しています。
- ダイレクトリクルーティング
- ソーシャルリクルーティング
- .採用ミートアップ
- 採用ピッチ資料を使った説明会
最近のトレンドである採用手法について、それぞれ解説していきます。
3-1.ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、自社での活躍が期待できそうな人材に対して、企業が直接アプローチする採用手法です。就職サイトのスカウト機能を利用したアプローチのほか、FacebookTwitterなどのSNSを通じてメッセージを送るといった手法が一般的です。また、自社が主体的に開催する採用イベントで、直接人材を募るケースもあります。
採用担当者が求職者のプロフィールやSNSでの発信内容を確認してアプローチを行うため、採用要件に合致した人材を効率的に獲得しやすい点がメリットです。そのほか、現時点では応募の意思があまり高くない、あるいはいい会社があれば転職したいといった層にもアプローチできる点が特徴です。
また、従来のマス型採用では成果を挙げられなかった、知名度の低い中小企業やベンチャー企業でも、スカウト文やその後のやり取り次第で優秀な人材を獲得できる可能性があります。その一方、応募していない方に対して自社の魅力を伝えながら、地道なコミュニケーションを重ねていく必要があるため、人事担当者のスキルが求められます。
アプローチするのは、今すぐに応募や転職をしたいという方ばかりではないため、早期に採用したいときには向かないことがある点にも注意が必要です。
3-2.ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングとはTwitterやInstagram、TikTokなどのSNSを活用した採用手法で、企業情報の発信のほか、SNSで見つけた人材に直接アプローチできる点が特徴です。求人サイトや自社の採用サイトでは伝えにくい社風や雰囲気を、アピールするのに適しています。
ダイレクトリクルーティングと流れは似ていますが、専用のサービスに登録してデータベース内で人材を探すのではなく、SNS経由で人材を探す点が異なります。
ソーシャルリクルーティングはダイレクトリクルーティングと同様、潜在層にアプローチできるのも、メリットの一つです。さらに、SNSは基本的に無理で利用できるため、うまく活用できれば採用コストを抑えられる点も魅力といえます。
デメリットは、採用担当者にコミュニケーション能力が求められる点です。SNS上で突然、知らない相手からメッセージが届いた場合、身構えてしまうことが多いものです。相手の警戒心を解き、自社に魅力を感じてもらえるよう柔軟で誠実なやりとりを行うことが求められます。
また、長期的なスパンで採用活動を行わなければいけない点にも注意が必要です。就職サイトや転職サイトに求人を掲載すれば、2週間程度で採用活動を終えられることもあります。しかし、ソーシャルリクルーティングは潜在層にアプローチする手法であるため、数ヵ月程度かかることも珍しくありません。
3-3.採用ミートアップ
一般的な企業説明会よりもカジュアルな雰囲気で行う採用イベントを、採用ミートアップといいます。座談会や勉強会のほか、交流会のような形式で行われることが多いです。
採用ミートアップはダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングと組み合わせ、応募や転職の意思があまり高くない層にアプローチできるのが利点です。
ただしその分、応募や転職につながる可能性が低いこともおさえておく必要があります。採用できるまで、コストや手間がかかることもデメリットの一つです。
3-4.採用ピッチ資料の活用
「短いプレゼンテーション」という意味です。
従来の会社説明会に記載される企業情報や採用条件だけでなく、応募者が気になる情報やメッセージを、ストーリーを用いて伝える採用手法です。企業の課題や社員の1日などを盛り込むケースもみられます。
採用ピッチ資料はWeb上に掲載したり、面接の前に行われるカジュアル面談の場で用いられたりすることが多いようです。
4.【新卒採用】トレンドの採用手法
新卒採用におけるトレンドの採用手法としては、長期インターン採用が挙げられます。採用活動で主流だったのは、大学3年生を対象に1日から2日、長くても2週間程度の短期間行われるインターンでした。しかし長期インターンは数ヵ月から、長い場合は1年程度実施されるのが特徴的です。
企業は意欲の高い学生と早期に接触できるだけでなく、実務を通して適性や能力を見極められます。長期インターンに参加した学生にとっても、企業の雰囲気を知る機会となるため、採用時のミスマッチの抑制につながります。
5.【中途採用】トレンドの採用手法2選
中途採用でみられる、トレンドの採用手法は主に次の2つです。
- アルムナイ採用
- リファラル採用
ひとつずつ解説していきます。
5-1.アルムナイ採用
自社を一度退職した人材を再雇用する手法が、アルムナイ採用です。「カムバック制度」あるいは「ジョブリターン制度」と呼ばれることもあります。応募者は企業文化や雰囲気、業務内容などを理解したうえで入社するため、採用時のミスマッチが起こりにくいことがメリットです。
また、応募者の在職時に同僚であった社員の紹介や、本人からの直接応募が多いため、通常は採用コストがかかりにくいのも利点です。通常の採用に比べ、教育コストも抑えられる傾向にあります。
5-2.リファラル採用
リファラル採用は、社員から活躍が期待できる人材を紹介してもらう採用手法です。「リファラル」は、日本語では「紹介」を意味します。
昔からの縁故採用と混同しやすいですが、紹介された社員の身内を優先的に採用する縁故採用と異なり、リファラル採用は紹介された人材を通常の採用フローに乗せます。
社員からの紹介からスタートするため採用コストを抑えられるほか、企業文化をよく知っている社員によるマッチングのため、採用時のミスマッチが起きにくい点がメリットです。
ただし、不採用になることもあるため、企業と紹介した社員、紹介した社員と応募者の関係性に影響を与える可能性があります。リファラル採用を開始する前に、紹介する社員や応募者に、不採用の可能性があることを伝えておくことが大切です。
6.トレンドの手法と併用がおすすめ!定番の採用手法6つ
ここまで最近のトレンドである採用手法をご紹介してきました。ここからは、以下の6つの定番の採用手法を解説します。
- 求人サイト
- 求人検索エンジン
- 自社サイト
- 人材紹介サービス
- 就職・転職イベント
- ハローワーク
これらは、トレンドの採用手法と組み合わせて行うこともおすすめです。
6-1.求人サイト
求人サイトはインターネットに求人情報を掲載し、求職者を募る媒体です。「マス型採用」の代表的な手法であり、新卒採用、中途採用のどちらも利用できます。
求職者が希望の勤務地や職種、収入などを指定し、保有者するスキルや経験などを入力することで、条件に合う求人を検索することが可能です。現在は多くの求人サイトにスカウト機能やメッセージ送信機能があるため、企業からのアプローチにも利用できます。
求人の掲載は有料で、料金プランに応じて掲載順位が変わることが多いため、効果を高めるためには料金の高いプランを選ばなければならない可能性があります。また通常、掲載まで1~2週間程度かかることにも注意しましょう。
6-2.求人検索エンジン
求人検索エンジンとは、求人に特化した検索エンジンのことです。汎用的な検索エンジンはGoogleやYahoo!に代表されるように、あらゆる情報を調べられます。これに対し、希望の職種や勤務地などを入力すると、インターネット上で公開されている情報から希望に合致する求人情報が表示されるのが、求人検索エンジンです。前述の求人サイトと併用して利用する企業も多くみられます。
求人サイトのように会員登録の必要がないものがほとんどで、手軽に利用できるため、近年は利用者が増えています。また基本的に求人の掲載は無料で、求人票へのクリックが発生すると費用がかかるクリック課金型が主体です。自社の求人情報を表示されやすくするといったオプションを有料で追加できる求人検索エンジンもあります。
6-3.自社サイト
自社サイトに採用に特化したページを作ったり、採用に絞った専用サイトを作るといった手法も定番の方法です。求人サイトで企業を知り、さらに知りたいという思いから自社サイトを訪れる求職者が多いため、前述の求人検索エンジンと連動させると高い効果が期待できます。
さらに、自社サイトに採用ピッチ資料を掲載し、無料でダウンロードできるようにしておくと、自社に興味を抱いた方にさらに詳しい情報を提供することが可能です。
自社のサイトであるため、自由度の高い情報発信ができる点も魅力です。ただし、知名度の高い企業でない限り、求職者が直接自社サイトにアクセスする可能性は低く、直接的なアプローチには向いていないことをおさえておきましょう。
また、社内にサイト制作に通じた人材がいないと制作が困難な点であり、外注するとコストがかかる点に注意が必要です。サイトを完成させればそれで終わりというわけではなく、その後も定期的な更新や修正などが必要になります。
6-4.人材紹介サービス
人材紹介サービス会社から、企業が求める人材を紹介してもらうのも、定番の手法の一つです。厳選された人材の紹介を受けられるため、希望に合った人材を獲得しやすい点がメリットです。
新卒採用でも使われることがありますが、主に中途採用で利用されます。料金は成果報酬型であることが多く、1人あたりの採用にかかる費用は高い傾向にあります。
また、社内で採用スキルやノウハウの蓄積ができない点にも注意が必要です。
6-5.就職・転職イベント
就職・転職イベントも、以前から人気の採用手法です。複数の企業が、それぞれのブースで説明会を開くイベントで、新卒採用では「合同説明会」、中途採用では「転職フェア」と呼ばれることもあります。
知名度の低い中小企業でも、求職者との接点を持てるほか、生の声を聞けるのもメリットです。その結果、採用方法の見直しを図る企業もみられます。
その反面、参加費以外にマンパワーがかかることを認識しておきましょう。ターゲットとする求職者以外の方への対応も求められます。
6-6.ハローワーク
ハローワークとは、厚生労働省が全国に設置する公共職業安定所のことで、無料で企業の求人を掲載できる点が最大のメリットです。
若年層に対しても「新卒応援ハローワーク」や、正社員就職を目指す概ね35歳未満の若者を対象とした「わかものハローワーク」などのサービスを行っています。
ただし、ハローワークに求人を掲載するためには1度はハローワークを訪問しなければいけません。また、手書きで求人票を作成しなくてはいけないため手間がかかることや、求人掲載までにやや時間を要することがデメリットといえます。
参照元:厚生労働省「ハローワーク」
7.トレンドをおさえ、適切な採用をするための3つのポイント
定番の採用手法にくわえ、最近のトレンドの採用手法も選択肢にあるなかで、どの手法を選べばよいか悩む企業も少なくありません。適切な採用法を選ぶ上でおさえておきたいポイントは、以下の3つです。
- 自社の採用課題を洗い出す
- 定番の採用手法と併用させる
- 必要に応じて採用代行やコンサルティングを活用する
順番に解説していきます。
7-1.自社の採用課題を洗い出す
ベストな採用方法を選ぶ前に、まず自社の採用課題を洗い出すことが重要です。採用課題によって選択肢が異なるためであり、採用課題をクリアにしないままトレンド手法を採り入れたところで、思うような効果を得られない可能性があります。
また、時代に合っていて多くの企業が採用している手法でも、自社に合うとは限らないことを理解する必要があるでしょう。
たとえば特定のターゲットへのアプローチ不足が課題の場合は、ダイレクトリクルーティングや人材紹介が有効と考えられます。採用コストを軽減させる必要がある場合はソーシャルリクルーティングやリファラル採用、アルムナイ採用などがおすすめです。
7-2.定番の採用手法と併用する
トレンドの採用方法は、定番の採用手法と組み合わせて利用する企業が多いです。たとえば人材を一括採用する場合に有効なマス型採用と、ターゲットへの個別のアプローチを組み合わせるやり方などがみられます。
すべての採用手法にメリットとデメリットが存在するため、トレンドだからと新しい採用手法に飛びつき、従来の採用手法を軽視するのは賢明ではありません。
7-3.必要に応じて採用代行やコンサルティングを活用する
採用活動で思うような成果が得られず、手法を見直す必要性を感じながら、どのような採用手法を選択したらよいか判断できないときは、採用代行やコンサルティングを活用しましょう。
前述のとおり採用手法を決める際には、自社における採用課題の洗い出しをする必要がありますが、正確に課題を見極められるかどうかは採用担当者のスキル次第です。また、課題を抽出できた場合であっても、解決するためのリソースが足りないケースも少なくありません。
しかし、採用代行やコンサルティングなどの外部サービスを利用すれば、プロのノウハウや知見を活用し、自社が行う工数を削減できます。採用代行やコンサルティングの活用は、変化する採用市場にマッチし、かつ自社の課題解決につながる採用手法を見極め、効率的に採用活動を行うための有効な手段だといえます。
8.採用トレンドを知り、採用方法を見直そう
かつては、大規模な母集団を形成して行う「マス型採用」のみを行う企業がほとんどでしたが、近年は個別採用にも取り組む企業が増えてきています。
個別採用は、自社が求める人材をその特性に合わせたたやり方を用いて、ピンポイントで採用する方法で、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングが代表的です。そのほか、カジュアルな雰囲気で行う採用ミートアップや、一度退職した人材を再雇用するアルムナイ採用、社員から人材を紹介してもらうリファラル採用なども人気です。
ただし、トレンドだからと新しい採用手法に飛びつき、従来の採用手法を軽視することは避けましょう。自社の採用課題を解決できる手法を選ぶことが、何よりも重要です。自社にマッチする、適切な採用方法を選択しましょう。