人材を獲得しようとする際、よく使われるのが求人広告です。求人広告は、求職者が目に留めて、応募してくれなければ意味を持ちません。本記事では、効果的な人材確保につなげるために必要な、求人広告の作り方のコツや注意点をまとめています。
1.求人広告をデザインするときのコツ
求人広告は、求職者と自社との最初の接点となる可能性が高いツールです。求職者の関心をひき、「応募したい」と思わせる内容となっていることが求められます。
求人広告の制作や掲載には、コストがかかります。せっかく作った求人広告も、デザインがパッとせず、見てもらえないのでは、費用と手間のムダになりかねません。本項では、求人広告を効果的にデザインするためのコツについて解説します。
1-1.アピールポイントに優先順位をつける
求人広告を作る場合、強く伝えたい項目を1つか2つ程度に絞り込み、優先順位をつけたデザインとするのが、求職者にインパクトを与えるためのコツです。「あれもこれも」と多くの情報を詰め込むと、本当に伝えたいことが他の情報に埋もれてしてしまいかねません。
求人広告で多くのことをアピールしたいと思って、さまざまな情報を盛り込むのが不正解というわけではありません。ただし、限られたスペース内にいくつものアピールポイントを掲載してしまうと、どれが求職者に伝えたい特色なのかわかりづらくなり、効果が薄れてしまう懸念があります。
アピールしたい点が多くある場合も、優先順位を付けて、読んでもらいたい内容がしっかり伝わるようにすることが重要です。
1-2.文字のサイズにメリハリをつける
求人広告にも、ウェブ・求人誌・チラシなどさまざまな媒体があります。文字サイズなどが決められているものでなければ、強調したい部分やとくに読んでもらいたい項目の文字サイズを大きくしたり、色を変えたりするのが有効です。
目立たせるとよい項目の例には、以下のようなものがあります。
- 給与や労働時間などの待遇
- 自社をアピールするキャッチコピー
- 人材募集に対する熱意
チラシやポスターなど1枚ものの紙媒体では、見る人からの距離によって適した文字サイズが異なります。ポスターなら貼った状態を遠くから見て、チラシなら手に取ってみるなどして、見やすくできているかを事前に確認するのがおすすめです。
1-3.使用する色を3色までにする
ポスターやチラシを読んでもらうには、目立たせることが必要です。だからといって多くの色を使いすぎてしまっては、読みづらくなったり、内容が頭に入ってこなかったりして、逆効果となりかねません。
ポスターやチラシを読みやすくするための色使いのコツとしては、「70対25対5の法則」と呼ばれる配色比率があります。使う色は原則として3色で、以下のような比率で使うという法則です。
- 70%をベースカラー(背景や余白)
- 25%をメインカラー(文字などデザインの主となる部分)
- 5%をアクセントカラー(強調したい部分)
この配色比率は、Webサイト制作などにも応用できます。全体の70%程度を占めるベースカラーには、白や黒など無彩色が使われることが多いです。白をベースカラーにした場合はメインカラーを濃い色に、ベースカラーが黒っぽいときには薄い色のメインカラーを使うと全体の視認性が高まります。
求職者にどのような印象を与えたいかによって使う色使いは変わるため、いくつかのパターンで試作して、見え方のチェックをおすすめします。
1-4.写真を使って職場の雰囲気を伝える
求人広告で伝えたい情報の中には、文字よりも写真が効果的なものが多くあります。職場の雰囲気などは、その一例です。職場の雰囲気のよさをアピールしたい場合、テキストを長々と連ねるよりも、オフィスで和やかに談笑する社員たちの写真を1枚載せた方が、求職者が理解しやすくなります。
このような場合の写真は、芸術的な美しいものである必要はありません。「働く人の様子」や「職場の様子(環境や設備など)」など自社のアピールにつながる写真や雰囲気が伝わる写真を載せるのが効果的です。
1-5.写真やテキストの幅・位置を揃える
求人広告に限らず、見やすく読みやすいデザインには、守るべき基本があります。その一つが、文字や写真などの配置を意味する「レイアウト」です。レイアウトに絶対的な正解はないものの、以下のようなポイントが、内容を伝わりやすくするためのセオリーとされます。
- 写真の角の位置をそろえる
- テキストの左右幅、上下幅をそろえる
- 余白の左右幅、上下幅をそろえる
テキストや写真の左右幅、上下幅が整っていないデザインでは、求職者にストレスを感じさせ、まともに読んでもらえない危険性があります。ポスターやチラシの制作に使われるソフトには、位置決めを補助するためのグリッド線(罫線)を表示する機能があるため、それを利用して幅をそろえるのが通常のやり方です。
2.デザイン以外の求人広告を作成するコツ
求人広告を目に留めてもらうには、デザインが重要です。しかし、求人広告の目的である応募者を集めるには、デザインだけでは足りません。求職者の興味をひき、求職者が必要とする情報が記載されてなければ、応募まで結び付けるのは困難です。
本項では、求職者に刺さる求人広告の情報内容について、詳しく解説していきます。
2-1.タイトルやキャッチコピーで興味を引くよう記載する
求人広告のデザイン以外の部分で、求職者の関心をひくために重要なのがタイトルやキャッチコピーです。タイトルにインパクトがなければ、具体的な内容まで読んでもらえる可能性は低くなります。
求人広告を出している企業は、自社だけではありません。多くの求人広告の中から、自社の求人に興味を持ってもらうための方策を考える必要があります。自社の魅力やアピールポイントを強く打ち出し、求職者に内容を読んでみようと思わせるような、タイトルやキャッチコピーを付けることが重要です。
2-2.職種名は一般的なわかりやすい職種名を記載する
職種は、求職者が求人広告で最初に確認する内容の一つです。それだけに、わかりやすく記載する必要があります。単に「営業」と記載したのでは、既存顧客を回るルート営業なのか、テレビや新聞などの広告に対する問い合わせを起点とする反響営業なのか、あるいは個人を相手にした飛び込み営業や電話営業などなのかがわかりません。
職種は、見ただけでどのような業務なのか、ある程度イメージできるような表記とするのがポイントです。「〇〇地域での新規開拓営業」などの表記も、わかりやすさにつながります。自社内や業界内だけでしか通じない呼び方や、一般になじみの薄い名称は避け、求職者が理解しやすい職種名で記載することをおすすめします。
2-3.労働条件や業務内容などをわかりやすく記載する
どのような仕事をするのか、待遇はどのようになっているのかなどは、求職者にとって気になるポイントです。これらについては、詳しく、わかりやすく記載する必要があります。入社後に、業務内容が思っていたのと異なっていると、ミスマッチによる早期離職を招く危険性があるためです。
労働条件や業務内容としては、以下のような項目を盛り込みます。
- 雇用形態
- 勤務地
- 就業時間
- 休日
- 給与、賞与
- 社会保険
業務内容は、ただ羅列するだけでは無味乾燥なものとなりがちです。「誕生日を休暇にできる制度がある」「子育てしながら働く社員が多い」などの特色を盛り込んだり、社員の業務パターンの事例を示すなどすると、具体性と説得力が増します。
労働条件は、職業安定法によって最低限明示しなければならない項目が定められており、そちらについては後述しています。
2-4.必須スキルと歓迎スキルに分けて記載する
中途採用の場合は、即戦力となる人材を獲得したいケースが多いため、求めるスキルも高いものとなりがちです。しかし、応募の条件を厳しくしすぎると、そもそも応募してくれる求職者が少なくなってしまうというジレンマに陥ります。
スキルに関しては、「必須要件(MUST要件)」と「歓迎要件(WANT要件)」を分けて記載するのがポイントです。必須要件とは、「業務をこなす上で最低限これだけは必要」という要件を指します。歓迎要件は、「こういう要素も持っていればなおよい」という要件です。
特定の資格を必要とする場合や、業務経験がある人材を確保したい場合は、その旨を明示します。そうでなければ、本来は選考の対象外である人材からも応募が来てしまい、お互いに時間と労力を無駄にしかねません。募集している職種と同じ仕事をしている社員がいる場合は、その社員のスキルや能力をベースに、要件設定をするのも一策です。
2-5.自社の特徴やアピールポイントを記載する
求職者は、応募を決める前に求人広告を見て、なるべく多くの情報を得ようとします。企業側にとっては取るに足らない情報でも、求職者には応募を決める重要な項目である可能性もあります。些細なことであっても、自社の魅力に類することは求人広告に記載しておくのがおすすめです。
広告媒体の紙幅やスペースに余裕があれば、細かなことでも自社の特徴は、できる限り組み入れましょう。それにより他社との差別化ができ、求職者が求人広告に目を留めて、人材獲得のきっかけとなる可能性もあります。
3.求人広告作成における準備ポイント
効果的な求人広告を制作するには、いくつかのステップが必要です。やみくもに求人広告を作ろうとしても、求職者の関心をひくようなものが作成できず、費やした時間がムダになりかねません。しっかりとした成果を上げるためには、下準備が不可欠です。以下に、効果の出る求人広告を制作するための準備について、詳細を示しています。
3-1.求める人物像を明確にする
求人広告を作成するにあたって、求める人物像を明確に定めることは重要ポイントの一つです。求める人物像があいまいな場合、求人広告に記載する内容もエッジが利かないものとなり、応募者が集まらないという結果に陥る可能性があります。
どのような人材を採用したいのかが明らかになっていなければ、応募してきた求職者が採用すべき人材であるかどうかもわかりません。
求める人物像として設定しておきたい要素には、以下のようなものがあります。
年齢層や性格なども含め、入社してもらいたい人物像を明確に設定しておくことで、その設定にマッチした求人広告の内容がまとまります。欠員募集の場合は、前任者を基に求める人物像を設定するのも、一つのやり方です。
伸びしろ豊富な若手をターゲットにするのと、即戦力となる中堅の募集をかけるのでは、自ずと求人広告の内容は異なるため、事前に求める人物像の設定をすることが重要です。
3-2.自社の魅力・強みを明確にする
数多くの求人広告から、求職者を自社に引きつけ、応募までつなげるには、自社ならではの魅力や強みを打ち出すのが有効です。「若手に裁量権を与える社風」「有給休暇の消化率100%」など、自社ならではの魅力があれば、強力なアピールポイントになります。
自社の魅力や、自社で働くメリットがすぐには見当たらないという場合は、マーケティングで使われる「3C分析」を使って探す方法があります。
3Cとは、「Customer(市場・顧客、求人広告の場合は求職者)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の頭文字を取ったものです。3Cのそれぞれを分析し、求職者のニーズにマッチする仕事内容や、競合他社になく自社にある強みや福利厚生など、訴求できる要素を発見して求人広告で発信します。
「職場のビルが新しくきれいである」「駅から近い」などの小さなことでも、求職者には響く可能性があります。魅力となり得る要素を、細大漏らさず分析することが重要です。
3-3.求める人材にあった媒体選定を行う
求人広告の媒体にはチラシや新聞、求人誌などもあれば、求人サイトなどのWeb媒体もあります。通例、求人広告の掲載にはコストがかかるため、手当たり次第に広告を出稿するわけにはいきません。
自社の求める人物像に当てはまる人材が閲覧している媒体を選び、そこにインパクトのある内容で広告を出すことが大切です。
経験豊富なベテランを求める場合と、主婦・主夫のパートを必要としている場合では、掲載媒体は異なります。エンジニアなど特定職種の人材を確保したければ、エンジニアに特化した求人サイトを利用するのが効率的です。
シニア層に訴求したい場合は、新聞や折り込みチラシを使うのも一案です。求人広告の効果が出ないときは、求める人物像に適した媒体であるかの再確認をおすすめします。
4.求人広告作成における注意ポイント
求人広告を作成する際には、いくつかの注意点があります。法律に違反しないようにするのは、その一つです。職業安定法は、労働条件として最低限明示しなければならない項目を定めています。1項目でも記載漏れがあれば、法律違反に問われるため、慎重な対応が必要です。
その他にも、差別的な表現や真実ではない内容の記載などはNGです。本項では、求人広告を作成する際の注意点をまとめ、解説しています。
4-1.法的観点におけるNG項目
男女差別や国籍による差別をしてはいけないことは、常識といえます。しかし、求人広告においては、うっかり差別的な表現をしてしまう恐れことがあるため、注意が肝心です。
男女雇用機会均等法は第5条で、事業主に対して「労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」としています。男女どちらかしか採用しなかったり、性別によって採用数を決めていたりするやり方は、認められません。
「営業マン」「看護婦」などの表記も、性別を限定しているように受け取られるため、「営業職」「看護師」などへの書き換えが必要です。
国籍による差別にも注意しなくてはなりません。労働基準法第3条では「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定められており、国籍による差別を禁じています。
求人広告を出すにあたっては、差別的な表現が含まれていないか、広告原稿の入念なチェックが欠かせません。
参照元:e-GOV法令検索「男女雇用機会均等法第5条」
参照元:e-GOV法令検索「労働基準法第3条」
参照元:厚生労働省「採用・選考時のルール」
4-2.最低限明示すべき項目の記載
職業安定法は第5条の3で、求人広告の掲載を行う際に「業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」としています。同法に基づき、最低限明示しなければならない労働条件などは、以下の各項目です。
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間
- 就業場所
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働
- 賃金
- 加入保険
- 募集者の氏名または名称
- 派遣労働者として雇用する場合はその旨
就業時間の原則は、労働基準法第32条で「休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」「休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と規定されています。職場の実態が法の定める範囲を逸脱し、長時間労働を強いることがないようにしなくてはなりません。
時間外労働について、あらかじめ労使間で決めた時間を働いたものとみなす「裁量労働制」を採用する場合は、「企画業務型裁量労働制により〇時間働いたものとみなされます」などの注記をします。賃金では、残業の有無にかかわらず一定の手当を支給する「固定残業代」を採用している企業は、以下のような表記が必要です。
- 基本給 〇〇円(△△手当を除く額)
- △△手当(時間外労働の有無にかかわらず、◇時間分の時間外手当として〇〇円を支給)
- ◇時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
休日に関して労働基準法は、毎週少なくとも1回の休日を与えるか、4週間を通じて4日以上の休日を与えることを求めています。この規定を守ることはもちろんですが、求人広告の記載では「週休2日制」と「完全週休2日制」を間違わないよう注意することも必要です。
1週間に2日の休みがある週が月に1回でもあれば週休2日制で、毎週2日ずつの休みがない場合も該当します。毎週必ず2日ずつ休みがあるのが、完全週休2日制です。毎週土日が休みなのに「週休2日制」と記載してしまうと、求職者に完全週休2日制ではないと思われ、応募が思うように集まらない可能性もあります。
求人広告は応募者に多数来てもらうためのものであるため、自社の魅力を伝えようと思うばかりに、悪い情報は記載しない例も考えられます。しかし、ネガティブ情報を隠したり、ウソを記載したりしていては、求職者との信頼関係を築けません。
仮にその求人広告を見て採用した人材があったとして、入社すれば悪い情報やウソがあったことがわかってしまいます。また、職業安定法に基づく指針等により、明示する労働条件は虚偽または誇大な内容としてはなりません。
そのようなことをして人材を確保しても、聞いていた条件と違うとして、すぐに辞められてしまう可能性が高まるだけです。ウソは書かず、ネガティブ情報も隠すことなく伝えるのが、正しい求人広告の作り方だといえます。
参照元:e-GOV法令検索「職業安定法」
参照元:e-GOV法令検索「労働基準法」
参照元:厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」
参照元:厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」
5.求人広告作成のコツを活用しよう
求人広告は、自社が求める人材を獲得するための重要なツールです。自社だけでなく、多くの企業が求人広告を出稿する中で求職者に目を留めてもらうには、デザインと情報内容に気を配る必要があります。
配色を検討し、印象的なタイトルを付け、写真を活用するなどの工夫を行い、自社の魅力を存分に伝える求人広告を作成しましょう。