地方採用の環境が年々厳しくなる中、人材獲得の戦略策定に苦慮する地方企業が増えています。本記事では、地方採用の4つの課題と採用力を強化する6つの対策を分かりやすく解説しています。地方における採用を強化させる対策をおさえて、「地方だから仕方ない」を打破しましょう。
1.地方採用を取り巻く状況
新卒採用、中途採用ともに、地方採用が厳しいといわれる背景としては、次の2点が挙げられます。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 都市圏への人口集中
- 有効求人倍率の増加
ここでは、地方採用を取り巻く上記3点について解説します。
1-1.少子高齢化による労働人口の減少
少子高齢化によって生産活動の中心にいる15歳以上65歳未満の生産年齢人口が減少し、今後は都市部でも、労働人口が減っていくことが想定されています。全国的な採用難が進めば、都市部の企業が採用ターゲットを広げ地方の人材を獲得していくため、地方採用はますます困難な状況に陥るといえるでしょう。
参照元:総務省「情報通信白書平成28年度版」(1)少子高齢化の進行と人口減少社会の到来
1-2.都市圏への人口集中
近年、東京圏・名古屋圏・大阪圏のいわゆる3大都市圏への人口集中が進んでいます。特に、東京圏への人口集中は顕著です。一方、それ以外の地方圏では人口が減少しています。
総務省が2021年に実施した住民基本台帳人口移動報告では、3大都市圏の転入超過数は全体で6万5873人でした。名古屋圏と大阪圏では転出超過が起こっている一方、東京圏では8万1699人の転入超過という結果でした。
今度も東京圏を中心とする都市圏への人口集中は継続することが予想されており、地方では労働人口が減少し、採用がますます困難になると考えられます。
参照元:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果」
1-3.有効求人倍率の増加
2022年(令和4年)4月の有効求人倍率は1.23倍で、前月の3月を0.01ポイント、前年の4月を0.14ポイント上回りました。ここ数カ月間は同程度での推移を続けていたものの、やや上昇傾向にあることがわかります。
「有効求人倍率」とは、求職者一人につき何人分の求人があるかを示す指数で、数値が「1」の場合、求職者一人あたり1つの求人がある状態です。「1」を上回っているときは求職者よりも求人の数が多いことを指し、企業にとっては求人に対する応募者が足りない状況を意味します。有効求人倍率が高いほうが就職がしやすい、いわゆる売り手市場と呼ばれる状態になるということです。
これまで地方から東京圏への転入傾向がみられ、今後もこの動きに変化がない場合は、地方の労働人口がさらに減っていくことが懸念されます。その場合、特に地方の有効求人倍率が上昇していくと考えられ、地方採用はさらに厳しくなることが予想されます。
参照元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年4月分)について」
参照元:内閣府「地域の経済2020-2021-地方への新たな人の流れの創出に向けて-」
2.地方採用の6つの課題
地方採用における課題として挙げられるのは、以下の6つです。
- 自社の採用テーマを明確にしていない
- 求める人材像が不明瞭である
- 採用母集団が小さい
- 全国の人材へのアプローチが足りない
- 人事部まかせで全社的な取り組みができていない
- 転職潜在層にアプローチできていない
地方企業の採用を成功させるには、まずは現状の課題を正しく認識することが重要です。一つずつみていきましょう。
2-1.自社の採用テーマを明確にしていない
自社の採用課題が明確になっておらず、採用テーマが不明瞭であると、採用活動を行ってもなかなか期待する成果を得られない可能性があります。
採用課題といっても、「そもそも採用母集団が集まらない」「採用母集団は集まるもののターゲットとする人材からの応募がない」「選考中や内定後の辞退が多い」など、さまざまなものがあります。自社の採用における最大の採用課題は何かを明確にして、適切なアプローチをしていく必要があるでしょう。
また、採用課題を掘り下げる際に「外的要因」ではなく、「内的要因」にフォーカスすると効果的です。「外的要因」とは文字通り周囲の環境などの外部に要因があるものであり、自社でコントロールすることができないことが多いといえます。そのため、現状打破のために対策することが難しいと考えてしまいがちです。
一方で「内的要因」とは、通常は自社の中にある要因を指します。企業としてある程度コントロールが可能であり、主体的に解決策を考えられることが多いといえるでしょう。
具体的な外的要因と内的要因の事例は以下のとおりです。
【外的要因】
- 地方の企業に就職を希望する人材が少ない
- 都市圏よりも給与水準が低いため、魅力を感じてもらえない
- ハローワークに掲載しても、求職者が集まらない
【内的要因】
- 自社の魅力を正しく把握できていない
- 地方の企業に就職するメリットを整理し言語化できていない
- ハローワークに掲載すればよいと考えている
採用課題を明確にするのと並行して、自社が求める採用ターゲット像も明らかにしましょう。ターゲットが整理されていなければ、ターゲットに対する魅力的な訴求もできません。ターゲット像は、「真面目」「明るい」といった漠然としたものではなく、できる限り具体的に落とし込むことが重要です。
2-2.求める人材像が不明瞭である
求める人材像が曖昧なままでは、採用方針や具体的な施策の検討が難しくなってしまいます。ターゲットに対して魅力的にアピールできず、求人を出しても自社にマッチする人材は集まらないでしょう。
たとえば、都市圏に住んでいる方に応募してもらいたい場合は、オンラインコンテンツを充実させて自社の魅力をアプローチしたり、オンライン面接ができる環境を整えたりする必要があります。同じ地域に住んでいる方をターゲットにする場合は、オフラインでのイベント開催が効果的です。
このように、ターゲットに応じて採用活動の方法やポイントが異なります。つまり、求める人材像が不明瞭なままでは、採用活動をうまく進められません。
ターゲットを設定する際は、「明るい方」「真面目な方」というような大雑把なものではなく、必要なスキルや経験などを具体的に検討する必要がある点に、注意しましょう。
2-3.採用母集団が小さい
前述のとおり、地方圏から三大都市圏への人口流出を背景として、地方では人材の母集団が不足しています。さらに少子高齢化に伴う全国的な労働人口の減少によって、地方人材の採用に力を入れる大都市の企業も増えるでしょう。そのため、地方の企業の採用はますます難化する傾向にあります。
2-4.全国の人材へのアプローチが足りない
地方に戻って仕事を探すことを視野に入れている人材は少なくないものの、地方企業の仕事情報の不足や移住への経済的な不安などから、Uターンに踏み切れないという実態があるようです。
地方採用では、地元の求職者へのアプローチに終始することが多いですが、全国の人材に目を向ければ母集団は一気に拡大するでしょう。また、近年ではリモートワークを導入する企業が増え、遠方に住む人材であっても採用するケースも増えつつあります。
2-5.人事部まかせで全社的な取り組みができていない
採用活動が人事部まかせで行われており、全社的な取り組みができていない場合も、採用が難航する原因の一つです。人事部や総務部など、採用に直接関わりのある部署のみで行うのではなく、経営陣や他の部署の社員を巻き込むことが重要です。たとえば、採用活動を行っていることを朝礼で伝えたり、自社のSNSでアピールしたりするとよいでしょう。
採用活動の実施について、ある程度社内で認知されてきたら、リファラル採用を進めることも可能になるでしょう。
2-6.転職潜在層にアプローチできていない
中途採用を募集している企業のなかには、現在転職活動を行っている転職顕在層のみにアプローチしているケースが多く見られます。しかし、それでは母集団を十分に形成できないでしょう。
中途採用を実施する際は、「現在具体的に転職する予定はないが、条件がよければ検討したい」と考えている転職潜在層へのアプローチが欠かせません。特に地方企業の場合、将来地方に移住することを考えている層にも積極的にアプローチし、転職候補に入れてもらう必要があります。
3.地方企業が採用力を強化する11つの対策
それでは、地方企業が採用力を強化するためにはどうすればよいのでしょうか。効果的な対策として、以下の11個の方法が挙げられます。
- 今期の採用テーマとターゲット像を明確にする
- 自社の強みと魅力を発信する
- Web上での情報発信に力を入れる
- 地方で働くメリットを訴求する
- Uターン/Iターンの可能性がある人材にアプローチする
- 地方の企業だからこそ全国に向けて求人を出す
- Web面接、オンライン採用を導入する
- 採用イベントなどを開催する
- 60代以上もターゲットに
- 副業や業務委託での募集も行う
- 内定後のアフターフォローを行う
すべての施策を一度に行おうとするのではなく、できる取り組みから着実に進めていきましょう。
以下では、それぞれの施策についてご紹介します。
3-1.今期の採用テーマとターゲット像を明確にする
地方企業のみならず、採用力を強化するためには、自社の採用テーマと採用ターゲット像を明確にすることが不可欠です。地方圏からの人口流出という背景があるにせよ、求める人材を獲得できていないのは、それだけが原因ではないことが多くあります。外的要因のみに目を向け現状を変えることを諦めるのではなく、できることに目を向けて解決しましょう。
また、自社のターゲット像を明確にするためには、採用ターゲットを明らかにすることが、採用を成功させるためのポイントです。自社がどのような人材を求めているのか曖昧なままでは、採用ターゲットに対する効果的なアプローチを講じることもできません。
求める人材のスキル・経験・キャラクターなどを具体的に落とし込み、そのような人材に最も有効と思われるアピール方法を検討しましょう。
3-2.自社の強みと魅力を発信する
自社の強みと魅力を積極的に発信する、攻めの姿勢も非常に重要です。労働人口が減少している状況では、待っているだけでは求める人材を確保することは困難だといえるでしょう。
しかし、自社の魅力を客観的に認識できていないケースも少なくないため、3C分析やSWOT分析などのフレームワークの活用によって、自社と競合他社の分析を行うことをおすすめします。そうして明確にした自社の魅力、あるいは地方企業ならではのメリットなどを積極的にアピールして、求職者からの認知度を高めましょう。
3-3.Web上での情報発信に力を入れる
地方採用を成功させるためには、地方に住んでいる方だけでなく、首都圏に住んでいる方にもアプローチする必要があります。しかし、その際は物理的な距離がハンデとなってしまうでしょう。オフラインの説明会やイベントを開催しても、距離が遠く時間や交通費がかかってしまうため、断念する求職者は多いです。
多くの求職者にアプローチするためには、Web上での情報発信に注力しましょう。たとえば、採用活動に特化したWebサイトを作る、求人サイトや求人エンジンを活用した積極的な情報提供をする、オンライン説明会を開催するなどが挙げられます。
最近では、SNSを活用して情報発信を行い、自社の知名度向上や働く魅力のアピールに活用している企業が多いです。SNSを活用すれば、直接求職者とコミュニケーションがとれ、自社や就職に関する質問にも答えられます。
このように、オンラインでの情報発信に力を入れ、多くのターゲットにアプローチすることが効果的です。
3-4.地方で働くメリットを訴求する
地方企業が採用力を強化するためには、地方で働くメリットを訴求することが欠かせません。たとえば、以下のようなメリットが挙げられます。
- 豊かな自然に囲まれ、のびのびと働ける
- 満員電車や渋滞といったストレスから解放される
- 家賃や食費など、生活費が安い
- 子育てにも適している
- 人材が少なく、重要なポジションを任せてもらえる場合が多い
このように、都市圏にはない地方ならではのメリットを洗い出し、地方で働く魅力をアピールしましょう。
実際に都市圏から地方に移住した、Uターン/Iターンの先輩のインタビューをWebサイトに掲載すると、より効果的にメリットを伝えられます。
3-5.Uターン/Iターンの可能性がある人材にアプローチする
Uターン/Iターンの可能性がある人材へのアプローチも効果的です。既にお伝えしたとおり、地方での就職に興味はあるものの地方企業に関する情報が不足していたり、移住への経済的な不安を抱えたりしていて踏み切れないというケースも少なくありません。
現在、地元に居住している人材へのアピールに終始するのではなく、UターンやIターンを検討している層もターゲットにすることで、母集団を拡大させることができます。
都市圏に住む求職者は、インターネットを活用して求職活動に関する情報収集を行うことがほとんどです。そのため、自社サイトの募集要項を充実させたり、Uターン/Iターンを行った社員へのインタビュー記事を掲載したりすることで、地元就職のメリットをアピールすることも有効といえるでしょう。
Uターン/Iターンを希望する人材の採用においては、Web上で説明会や一次選考を行うなど、求職者が採用活動のたびに現地に足を運ぶ必要がないようにするなど、求職者の負担を減らす工夫も大切です。
そのほか、確実に人材を確保するという視点から、Uターン/Iターン以外にも外国人材を活用することも視野に入れるとよいかもしれません。日本への留学生や、日本で働くことを希望する人材をターゲットにすれば、語学力が高く、優秀な人材の獲得が期待できます。
3-6.地方の企業だからこそ全国に向けて求人を出す
都市圏に住み慣れた求職者にとっては、地方の企業への就職は不安が伴うものです。企業に関する情報が不足していたり、地方で就職することがイメージしづらかったりすることなどが、その要因として考えられます。そのため、以下のような対策を講じることで、地方で就職することへの安心感を持ってもらいましょう。
- 引っ越し費用の補助や家賃補助など、移住支援制度を設ける
- 社内のUターン/Iターンをした社員へのヒアリング内容を自社サイトに掲載する
- 豊かな自然に囲まれて暮らせるなど、地方で暮らすことのメリットを伝える
- 選考過程で、求職者に対して「地方で働くにあたっての不安」の有無、その内容を確認する
3-7.Web面接、オンライン採用を導入する
地方企業が採用を成功させるためには、Web面接やオンライン採用を積極的に導入することが求められます。都市圏に住む求職者の場合、これまでは地方まで足を運んでもらって面談を実施することが一般的でした。しかし、たとえば中途採用であれば、現職の仕事と並行しながら現地まで赴いて面接を受けることは、求職者にとってはかなりの負担になっていました。
そのため、二次面接や適性試験はWebで最終面接のみ対面で実施するなど、オンライン上で一定の選考まで実施できるように、環境整備を行うことをおすすめします。
オンライン採用をスムーズに行うためには、通信面を安定させることが重要です。事前に求職者に対して面接ツールや面談のためのURLを案内することはもちろん、面接官にも通信環境を確認してもらいましょう。
3-8.採用イベントなどを開催する
多くの求職者にアプローチするために、採用イベントを開催することもおすすめです。採用イベントには、以下のようにさまざまな種類があります。
- 企業説明会
- オリエンテーション
- インターンシップ
- セミナー
- ミートアップ
オフラインでの開催のほか、Web会議ツールを利用したオンライン開催のイベントも増えています。
採用イベントを開催することで、求職者に直接自社の魅力を伝えられます。また、求人媒体を利用した採用活動では出会えない求職者と接点を持てる点もメリットです。
オンライン開催であれば場所の制限なく気軽に参加できるため、地方企業であっても多くの参加者を集めやすいでしょう。
採用イベントを開催する際は、採用の目的にあった種類・形態のイベントを選ぶことが重要です。
3-9.60代以上もターゲットに
地方企業が求める人材を確保するために、60代以上もターゲットにすることも選択肢の一つです。シニア人材は経験豊富で、即戦力となる可能性が高いといえます。
地方での就職はメリットも多い一方、置かれているライフステージによってはデメリットにもなりかねません。たとえば、子育て世代であれば、子どもの進学の選択肢を狭めることになることも想定されます。
その点シニア層は地方で暮らすことによる影響をあまり受けずに、むしろ生活費を抑えられたり、自然に囲まれた生活を送ることができたり、享受できるメリットが大きいといえます。シニア層の採用は、企業は経験豊かな人材を戦力として確保でき、求職者は生活の質を重視したセカンドキャリアを実現できるというように、双方にとってWin-Winの対策であるといえるでしょう。
3-10.副業や業務委託での募集も行う
正社員雇用にこだわらず、副業や業務委託という形で人材を募集することも有効です。最近では働き方が多様化しており、副業をする方やフリーランスとして働く方が増えています。地方企業が副業先として人材を募集するケースも増えており、応募者も増えているのが現状です。多くの人材を集めるために、正社員雇用以外の選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。
3-11.内定後のアフターフォローを行う
せっかく獲得した人材に入社してもらうためには、内定後のアフターフォローが不可欠です。
特に、地方での就職に悩みや不安を抱えている場合、フォローを怠ると内定辞退につながってしまう可能性があります。内定後も定期的に連絡をとって相談の場を設けたり、内定者懇親会を開催したりして、良好な関係を構築できるようにしましょう。
4.地方採用で活用したい採用手法
ここからは地方採用で活用したい採用手法として、以下の5つをご紹介します。
- 当該地方を対象エリアとする求人媒体
- リファラル採用
- ダイレクトリクルーティング
- 自社HP(採用ページ)、SNSによる採用
- 地方大学への働きかけ
4-1.当該地方を対象エリアとする求人媒体
地元に住む人材へのアプローチ方法として、その地方を対象エリアとするローカルの求人媒体はとても有効です。たとえば、地域に密着した求人媒体やWebサイトのほか、ローカルフリーペーパーなどがこれに該当します。
ただし、これらの媒体は掲載に費用がかかることがほとんどです。また、若年層は紙媒体をチェックする可能性が低い点にも注意しましょう。自社の採用ターゲットを考慮し、費用対効果を検証しながら活用する媒体を選ぶことをおすすめします。
地元の人材へのアプローチは行っているものの、全国のUターン/Iターンを検討する人材へのアプローチが十分でないという場合もあるでしょう。全国の人材にリーチしたい場合は求人サイトや求人検索エンジンの活用が有効です。
4-2.リファラル採用
地方採用で活用したい採用手法として、「リファラル採用」も挙げられます。リファラル採用は、社員が自社で実力を発揮できそうな友人や知人を紹介して、採用試験や面接を経て採用する方法です。従来の縁故採用と間違えやすいですが、縁故採用は実力は関係なく、紹介された社員の身内の人間を優先的に採用することが一般的です。
リファラル採用は社員の人脈を通じたアプローチとなるため、採用市場の競争に巻き込まれる度合いが低いことが特徴です。そのため都市圏への人口流出によって厳しい状況が続く地方の採用市場において、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
リファラル採用のメリットとしては、企業をよく知る社員が紹介する人材であるため企業のカルチャーと馴染みやすく、採用のミスマッチが起こりにくいことも挙げられます。
リファラル採用を成功させるには、社員の能動的な採用活動が必須であり、社員が自社を友人や知人に「紹介したい」と思えるかどうかが重要になります。リファラル採用をプロジェクト化し、社員が積極的に参加したいと思えるような雰囲気作りを行いましょう。
4-3.ダイレクトリクルーティング
地方の採用でも取り入れたいのが、企業が自社に合った人材を探し出し、直接アプローチを行う「ダイレクトリクルーティング」です。従来の採用活動は求職者が応募してくるのを待つのが基本スタンスでしたが、ダイレクトリクルーティングは企業が候補者に直接アプローチする攻めの採用といえます。
人材データベースを活用した方法のほか、SNSを使った個別のアプローチや勉強会やイベントなどの場の活用などが主な手法です。
従来型の採用方法では、求職者は企業を横並びで比較するため、大手企業に対して認知度で引けを取る地方の企業は不利になる傾向にありました。しかしダイレクトリクルーティングは、検索して絞り込んだ求職者に接触する機会を設けることができるため、応募が集まりにくい地方採用でも有効な手段であるといえるでしょう。
4-4.自社HP(採用ページ)、SNSによる採用
SNSによる採用も、地方採用で取り入れたい手法の一つです。SNSによる採用はFacebookやTwitter、YouTubeなどSNSを活用して行われる採用活動のことをいいます。
SNSを活用すれば、地方からでも全国に自社の情報を発信することができます。無料でアカウント作成ができるため、予算に限りがある場合もおすすめな手法といえます。
求人サイトや人材紹介などの従来使われてきた採用方法では、アプローチができるのは就職や転職を目的にサイトに登録している顕在層のみでした。しかしSNSを活用した手法では、まだ転職サイトに登録していない転職潜在層や、就職活動を始める前の大学1、2年生にもアプローチすることが可能です。
また、自社HP(採用ページ)を活用した採用方法は従来から有効な手法です。自社HP(採用ページ)と求職検索エンジンを連携させれば、さらに採用ページの集客力強化が期待できるでしょう。
4-5.新卒採用における地方大学への働きかけ
新卒採用の場合、採用力強化の手法として、自社の近郊にある地方大学への働きかけも積極的に行うようにしましょう。地方大学に通学する学生の場合、同じ地域の企業で働くことへの抵抗は少ないと考えられます。
具体的には、大学内で個別説明会や合同説明会の開催を開催できるように、大学の就職担当者に依頼をしましょう。就職担当者は、学生の就職支援としてこれらの依頼に対して前向きに対応してくれる可能性が高いといえます。
採用担当者に自社の情報や魅力を真摯に伝えることで、学生に自社への就職をすすめてもらえるかもしれません。また、採用担当者とのやり取りを通じて得られるであろう、学生の就職動向に関する情報も非常に有益です。
5.地方でも採用できる仕組みづくりと全社的な取り組みを
地方における採用は新卒採用、中途採用ともに厳しい傾向にあります。そのような状況において、自社の採用課題を明確にしないままやみくもに採用活動を行っても、求める成果を得られる可能性は低いでしょう。厳しい状況であることは間違いありませんが、外的要因のみに注目するのではなく、自社の採用課題に向き合い、全社で取り組みを行う必要があります。
具体的な採用方法としては、地方を対象エリアとする求人媒体の活用のほか、リファラル採用やダイレクトリクルーティングなど、新しい手法も積極的に取り入れていくことをおすすめします。また、地方に住む人材へのアプローチだけでなく、求人サイトや求人検索エンジンを利用し、全国に対して積極的に自社の情報を発信する手法も有効です。