採用オウンドメディアとは、求職者へのブランディングやエントリー数の増加などを目的に運営する自社のメディアのことです。採用オウンドメディアの導入が決まったものの、効果が得られるのか不安をお持ちの採用担当者の方もいるでしょう。本記事では、採用オウンドメディアを導入する効果、成功させるポイントなどを解説します。
1.採用オウンドメディアとは?
採用オウンドメディアとは、求職者へのブランディングやエントリー数の増加などを目指して運営する自社メディアのことです。
ここではオウンドメディアの意味のほか、求人サイトや採用サイトとの違いを解説します。
1-1.オウンドメディアとは?
オウンドメディア(Owned Media)とは、自社の商品やサービスの認知拡大や見込み客の獲得、採用力の強化などを目的とした自社メディアのことです。
本来は企業のパンフレットやカタログなども含まれますが、Webマーケティングにおいては自社で運営するWebサイトやブログ、SNSなどを自社メディアとして扱います。
さらに採用オウンドメディアは、SNSで発信したリアルタイムな情報をストック情報化する役割を担います。自社のファンになった潜在候補者に、いつでも欲しい情報を探せる場所として訪れてもらうことも採用オウンドメディアを制作する目的の1つです。
1-2.求人サイトとはどう違う?
マイナビやリクナビなどをはじめとする求人サイトと採用オウンドメディアでは、そのメディアの運営主体が異なります。求人サイトはサイトを運営する企業と求人情報を掲載する企業が異なり、求人情報の掲載期間や文字数、レイアウトなどに制約があることが特徴です。
その一方、採用オウンドメディアは自社で運営するため、掲載内容に関する制約が少なく、自社の魅力を最大限にアピールできます。
1-3.採用サイトとはどう違う?
採用サイトとオウンドメディアは、主にターゲットと目的が異なります。採用サイトは、自社の求人に興味を持つ求職者がメインのターゲット層です。就職や転職を積極的に考えている層が対象といえます。
一方で採用オウンドメディアの対象者には、就職・転職希望度が低い潜在的な求職者や自社を知らない層も含まれます。
また、採用サイトに掲載するのは求人票や会社概要、福利厚生制度などの具体的かつ正確な情報が中心です。
それに対して、採用オウンドメディアに掲載するコンテンツは、企業のあり方や仕事への考え方などであることが多いです。社員へのインタビューや社内イベントの裏側などを掲載し、就職・転職潜在層や企業を認知していないユーザーに「読みたい」と思ってもらえるようなストーリーを記載します。戦略的に企業の魅力やメッセージを伝えることで、採用したいターゲット層を確保する狙いがあります。
そのほか、採用サイトはコンテンツ内容が頻繁に更新されることは少ないのに対し、採用オウンドメディアは頻繁に更新する必要がある点も両者の違いの1つです。採用サイトは、求人内容が変わらない限りはあまり変更する必要がありません。しかし、採用オウンドメディアはターゲットが広い分、さまざまな方に興味を持ってもらえるコンテンツを定期的に更新することが求められます。
2.採用オウンドメディアが注目される3つの理由
採用オウンドメディアが注目されるのは、主に次の3つの理由によるものと考えられます。
- 優秀な人材を確保することが難しくなった
- 仕事や働き方への考え方が多様になった
- 求職者の情報収集方法が変化した
それぞれの内容を確認しましょう。
2-1.優秀な人材を確保することが難しくなった
採用オウンドメディアが注目される理由として少子高齢化が進み、優秀な人材の確保が困難になっていることが挙げられます。
求人情報を掲載して応募を待つだけの待ちの姿勢では、最低限の応募数を集めるのも簡単ではなくなりつつあります。そのため、就職や転職の意思が明確な層だけでなく、潜在層に向けたアプローチが注目されるようになりました。
採用オウンドメディアであれば、就職・転職への熱量がそれほど高くないユーザーにも自社の魅力を届けられます。自社のファン層を拡大させ、いざターゲットが転職活動を開始したときに、自社を選んでもらいやすくなるような基盤づくりを行います。
2-2.仕事や働き方への考え方が多様になった
求職者の仕事や働き方への考え方が多様化したことも、採用オウンドメディアが注目を集める理由の1つです。これまでは年収や企業の規模、知名度などの数値化しやすい基準で、企業を選ぶ考え方が主流でした。終身雇用が当たり前という価値観であったことも特徴です。
しかし、近年は「育児や介護と仕事を両立させたい」「趣味などのプライベートも充実させたい」といった希望を持って、仕事探しをする方も少なくありません。それによって、企業側も多様化した仕事観に合わせる必要が出てきました。自社ではどのような働き方が実現できるかを積極的に発信するツールとして、採用オウンドメディアが注目されています。
2-3.求職者の情報収集方法が変化した
求職者の情報収集方法が変化したことも、採用オウンドメディアのニーズが高まった理由として挙げられます。近年ではスマートフォンの急速な普及などにより、誰もが簡単に情報にアクセスできるようになりました。その結果、自分にとって必要な情報と不要な情報を無意識に選別する情報リテラシーが高まっています。
就職および転職活動においても、従来は求職者がチェックするのは、就活サイトやハローワークなどのいわゆる求人サイトでした。しかし、近年では求職者は採用後のミスマッチを防ぐため、求人票や会社概要だけではなく、従業員のインタビューや企業の仕事観といった情報も集める傾向にあります。これらは求人サイトには掲載されないことが一般的です。採用オウンドメディアは、求職者が求める情報を提供する存在として活用されています。
3.採用オウンドメディアを運用するメリット
採用オウンドメディアを運用することで得られる可能性のある、主なメリットは以下の6つです。
- ミスマッチや早期退職者を減らせる
- 自社の認知度を高めることができる
- 掲載したコンテンツが資産として残る
- 潜在層に対してアピールできる
- 採用コスト削減につながる
- リアルタイムで情報発信ができる
各メリットについて解説します。
3-1.ミスマッチや早期退職者を減らせる
採用オウンドメディアを活用することで、採用後のミスマッチやそれによる早期退職者を減らす効果が見込めます。
採用オウンドメディアは、求人票や会社概要だけではわからない企業の実情やリアルな働き方を掴みやすいのが特徴です。求職者はそれらの情報を踏まえたうえで応募するため、採用のミスマッチや早期退職が起こりにくくなります。
ただし、企業の魅力を最大限にアピールしようとよい面ばかりを強調したコンテンツは、入社後にギャップを感じる要因になり得ます。採用のミスマッチは情報不足によるものだけでなく、過度に魅力付けされた情報からも起きることに注意が必要です。
3-2.自社の認知度を高めることができる
採用オウンドメディアで発信することで自社の認知度を高められます。掲載期間やスペースに制約がある求人サイトと違い、採用オウンドメディアは自社のビジョンや従業員のリアルな声などを自由な形式で伝えることが可能です。
また、コンテンツを継続して発信することで検索される間口が広がります。採用オウンドメディアで更新したコンテンツをSNSやコーポレートサイトなどでも発信すれば、さらに多くの求職者に見てもらえる機会が増えるでしょう。
採用ターゲット層が有益と感じるコンテンツを発信することで、就職・転職潜在層や非認知層に対して自社の存在をアピールできます。
3-3.掲載したコンテンツが資産として残る
採用オウンドメディアは、制作したコンテンツを資産として残すことが可能です。SEO上で高い評価を受ければ、長い間キーワード検索をした際に上位に表示されます。
求人サイトに掲載した内容は、掲載期間が過ぎると見られなくなってしまいます。それに対して採用オウンドメディアは、期間を限定されることなく永続的に公開でき、残し続けられる資産性がある点がメリットです。ストックすることが可能であるため、検索流入などから長期間にわたり読者に企業の魅力を伝え続けてくれます。
3-4.潜在層に対してアピールできる
就職・転職潜在層に対してアピールできることも、採用オウンドメディアのメリットの1つです。 採用オウンドメディアは「SE フルリモート」「営業 未経験」といった、特定のキーワード検索で候補者にリーチできます。それによって、企業の知名度があまり高くなく、社名検索をされることがない場合でも多くの求職者に認知してもらえる可能性があります。
求人サイトやハローワークは、利用するために自身の基本情報などを登録する必要があることが一般的です。そのため、仕事を探す意思がある程度明確な層をターゲットにしたサービスといえます。しかし、Webサイトの検索はそこまで明らかなモチベーションがなくても行われることがポイントです。
情報発信によって潜在層の就職や転職の意欲をかき立てられれば、顕在層に引き上げることも可能です。
3-5.採用コスト削減につながる
採用オウンドメディアを作ることで、採用にかかっている広告費を削減できます。採用オウンドメディアを制作するための費用はかかるものの、採用媒体として機能するようになれば求人サイトをはじめとする他の採用媒体に出稿する広告費を抑えられます。
また、求人サイトは広告運用を止めてしまうとそこからの流入は見込めません。しかし、自然検索から採用オウンドメディアへの流入を増やせれば、広告費を抑えつつ継続的な応募経路を確保できます。
3-6.リアルタイムに情報発信ができる
リアルタイムに情報発信ができる点も採用オウンドメディアの強みです。求職者が求める情報をいつでも発信することが可能です。
採用活動に関する情報発信では、選考段階などに応じて発信したい内容は変化していきます。採用オウンドメディアを活用すれば、その時点でもっとも伝えたい重要なメッセージを届けられます。
4.採用オウンドメディアを運用する上での注意点
採用オウンドメディアの運営に際しては、以下の点に注意しましょう。
- 短期で成果を出すことは難しい
- 初期費用が必要になる
- サイト運営やマーケティングなどに関する知識が必要になる
- 社内の協力を得る必要がある
- 運用にかかる手間が大きい
それぞれの内容を解説します。
4-1.短期で成果を出すことは難しい
採用オウンドメディアの運用を始めても、短期間のうちに成果を出すことは難しい点に注意しましょう。採用オウンドメディアの流入経路は、基本的に検索エンジンです。検索結果によって上位表示されるまで、それなりの期間を要します。
KW検索で上位表示されるには、ユーザーが検索すると考えられるキーワードを選定しなければなりません。Googleアナリティクスやサーチコンソールなどの分析ツールを使った分析も必要です。流入状況があまり良くない場合はコンテンツ内容を書き直す作業も発生します。
また、通常は掲載するコンテンツの量が増えると少しずつ閲覧数が増えていくため、立ち上げ当初はコンテンツを増やしていくことに注力しなければいけません。
求人サイトに掲載すれば、出稿費用はかかるものの、短いスパンでそれなりの効果が見込めることが多いです。しかし、採用オウンドメディアを立ち上げたばかりの時期は宣伝効果を見込めないと考えるのが賢明です。
4-2.初期費用が必要になる
採用オウンドメディアを立ち上げる際は、ある程度の初期費用を用意しておきましょう。Webサイトの構築やデザインに詳しい従業員がいない場合は外注を検討する必要があり、外注費を要します。
また、データ分析や編集、ライティングなどを行うための人件費も予算化しなければなりません。そのほかメディアを維持するためのサーバー費やドメイン費、追加のデザインにかかる費用などもかかります。
4-3.サイト運営やマーケティングなどに関する知識が必要になる
採用オウンドメディアの運営には、Webサイト運営やマーケティングなどに関する知識が必須です。具体的には以下のような知識が求められます。
- マーケティング調査を行うスキル
- 自社と競合を分析するスキル
- SEOを考慮したサイト設計の知識
- キーワード選定の知識
- 検索意図を調査分析するスキル
- ユーザーの検索ニーズを満たす構成作成のスキル
- SEOライティングのスキル
- 公開した記事の分析・修正スキル
より多くの方に作成したコンテンツを読んでもらうためには、キーワード検索した際に上位に表示されなければなりません。しかし、すでにインターネット上には大量の情報があふれています。知識やスキルがない状態でサイトを立ち上げてコンテンツを発信しただけでは、検索上位に表示されることはありません。
サイト運営やマーケティングなどに関する一定のノウハウとスキルを用いて、採用オウンドメディアの運用を開始することをおすすめします。
4-4.社内の協力を得る必要がある
採用オウンドメディアでコンテンツを生み出し続けるには、マーケティング調査や取材、記事の執筆などを行うために社内の協力を得なければならない場面が生じます。必要に応じて適切な協力が得られるよう、普段から採用オウンドメディアの存在の重要性を伝えておくことがポイントです。自社の採用状況が厳しく、対策が必要であることも共有しておきましょう。
従業員はそれぞれ本来の業務で手一杯の可能性があるため、経営層による働きかけや協力を評価に反映させるシステムなどの構築も検討の余地があります。
4-5.運用にかかる手間が大きい
運用にかかる手間が大きい点にも、注意が必要です。Webサイトの構築を社内で行う場合、外注費用は抑えられますが、手間がかかります。担当者の選定や配置が適切でないと、担当を命じられた従業員に大きな作業負荷がかかり、通常の業務に支障をきたす可能性があります。
採用オウンドメディアにおけるコンテンツ制作では、記事の企画や構成作成からはじまり、従業員へのインタビューや撮影、ライティング業務などを継続的に行わなければなりません。すべてを内製化しようとするのではなく部分的に外注することも検討するなど、全体のバランスを考慮して対応しましょう。
5.採用オウンドメディアを始める流れ
採用オウンドメディアは、以下のような流れで始めることが一般的です。
- 自社の魅力や特徴を精査する
- 採用を行う目的やターゲットを明確にする
- メディアの目的やKGI・KPIを設定する
- 具体的な発信内容や発信方法を決める
順番に解説します。
5-1.自社の魅力や特徴を精査する
はじめに自社の魅力や特徴、企業としてのミッションなどを精査しましょう。そもそも採用オウンドメディアは、自社の魅力や特徴を読者にアピールして、採用活動において他社と差別化を図ったり、就職・転職潜在層を顕在層に引き上げたりするために存在します。
従業員がその魅力や特徴を十分に理解していない場合、当然求職者はそれを理解できません。他社にはない自社独自の魅力や自社の存在意義などをあらためて整理し、共有することが大切です。自社の魅力や特徴、ビジョンなどを明確にすることで発信内容に一貫性が生まれ、採用ブランディングが実現します。
ほとんどの企業の採用サイトやコーポレートサイトなどに、その企業をあらわすためのキーワードが掲げられています。しかし、そういったキーワードをそのまま使うのは避けたほうが賢明です。時代に合わなくなっていたり、曖昧なものであったりするケースが少なくありません。
自社の魅力を洗い出すには、従業員にアンケートやインタビューを行い、内側からみた自社の魅力を収集する方法が効果的です。そのほか複数名で自由に意見を出し合い、ブレインストーミングで自社の魅力や特徴を整理していく方法もあります。
複数名でブレストを行うことで、自分では当たり前と思っていたことが魅力であることがわかったり、弱みと捉えていた面が強みと解釈できたりと新たな自社認識につながる可能性があります。
5-2.採用を行う目的やターゲットを明確にする
次にそもそもの採用を行う目的とターゲットを明確化しましょう。一般的に企業が採用を行う目的は、以下の2つです。
- 策定した経営戦略を実現するために不足する人材を補う
- 新しい人材を獲得し、組織を活性化させる
採用活動は本来は採用戦略を練るところからスタートするのではなく、事業計画を振り返り、その内容を踏まえて策定する必要があります。多くの企業では達成を目指すビジョンが存在し、そのビジョンを実現するための事業計画があり、そしてその事業計画を実行するための組織戦略が策定されています。
採用戦略は組織戦略を構成する要素です。そのため、常に「なぜ採用をするのか」「企業の目標達成に向けて、どのような人材がいつまでに何人程度必要なのか」を考えながら計画を策定しなければなりません。
このような採用の目的を念頭に置いたうえで、採用ターゲットを明確にします。前述のような事業計画を実現するために必要な人材はどのようなスキルや職務経験を保有していることが望ましいかを考えましょう。
具体的には「ペルソナの設計」を行います。ここでのペルソナとは、採用オウンドメディアの具体的なターゲット像のことです。ペルソナの設計で考慮する要素には、次のようなものがあります。
- スキル
- 仕事観
- 思想
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 職業
- 役職
これらの要素を1つずつ設定し、広い意味でのターゲット層ではなく、その人物の思考や選択する行動まで想像できるような詳細な1人の人物像を作り上げることがポイントです。発信内容などにブレが生じ始めたようなときはこのペルソナまでさかのぼり、見直しを行う必要があります。
そして、策定した具体的なターゲット人材に自社がどのようなイメージを持ってもらうか、あるいはそのようなメッセージを伝えるかなどの戦略を練ります。これが採用ブランディングです。ペルソナ像の設計や採用ブランディング戦略の策定を行うことで、発信する情報に一貫性を持たせることが可能になります。
5-3.メディアの目的やKGI・KPIを設定する
採用目的とターゲットを明確化できたら、次は採用オウンドメディアの目的やKGI・KPIを設定します。採用オウンドメディアを運営する際のイメージゴールを決めましょう。たとえば、「自社の存在を知らなかった層に、社風や魅力を知ってもらう」「事業内容がわかりにくいため理解を促す」といったように、サイトを運営する目的を設定し、共有してください。
どのような目的を掲げるかによってコンテンツの内容が決まります。入社後のキャリアビジョンを伝えるなら従業員のインタビュー記事、日々の業務をイメージしてもらうことが目的なら従業員の1日に密着した動画などが適しています。
さらに、KGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)を設定することも重要です。KGIは最終的なゴールとなる目標を定量的に示す指標のことで、KPIはKGIを達成するためのプロセスが進捗しているかどうかを測る中間指標を指します。
KGIとKPIは目標達成までのプロセスを可視化し、未達成であった場合はどこがボトルネックになっているのかを判断しやすくすることを目的として設定するものです。
たとえば、採用オウンドメディアにおいてKGIに「応募者数の増加」を掲げたとします。その場合のKPIは、「アクセス数」と「コンバージョンレート」などになります。コンバージョンレートとは、採用オウンドメディアを訪れた人数に対する応募者数の割合のことです。
KPIの数値を測定しPDCAサイクルを回すには専用のツールが必要であり、おすすめは「Google Analytics」です。Google AnalyticsはGoogleが提供する無料のウェブサイト解析ツールで、「記事への流入元」や「ユーザーの滞在時間」などを確認するのに役立ちます。
5-4.具体的な発信内容や発信方法を決める
1つ前の工程で設定した採用オウンドメディアの目的をもとに、具体的な発信内容や発信方法を決めます。前述のように、たとえば日々の業務の裏側を紹介するなら、従業員の1日に密着した動画が選択肢にあがります。
採用オウンドメディアで発信されることが多いのは、自社の存在意義を伝え、求職者の共感を促すコンテンツです。文章による記事だけでなく従業員へのインタビューなどの形で発信することで、よりメッセージが伝わりやすくなることがあります。
また、これまでは年収や企業の知名度などの数値化しやすい基準で企業選びをする求職者が多かったのに対して、近年では働き方ややりがいなどを企業を選ぶ軸としているケースも増えています。そのため、やりがいによる仕事への動機づけを採用オウンドメディアで伝えるメッセージとするのも効果的です。
具体的な発信内容が決まってきたら、どのような方法で発信していくかを検討します。採用オウンドメディアは性質上、更新頻度が高くなる傾向にあります。そのため、直接HTMLを触らずに管理画面から手軽に記事投稿できるように、CMS(Contents Management System)で構築するのがおすすめです。CMSとは「コンテンツ・マネジメント・システム」の略で、Webサイトの専門知識を持っていなくても、記事の作成や更新ができるツールを指します。
採用オウンドメディアの発信に使われる、代表的なツールは以下のとおりです。
- WordPress
- Movable Type
- note
WordPressは世界でのシェア率がもっとも高いCMSです。「テーマ」と呼ばれるデザインテンプレートが豊富に用意されているため、誰でもデザイン性の高いオウンドメディアを構築できます。ただし、Web制作の知識がまったくないと初期構築から行うのに時間を要する場合もあるため、必要に応じてWeb制作会社に依頼することをおすすめします。
Movable Typeはセキュリティ面における信頼性が高いため、大手企業の導入実績が多い、国産のパッケージ型CMSです。サポートやメンテナンスにも対応しているため、自社で制作・運営する場合にも安心して利用できます。
noteは、採用広報のツールとして注目されているツールです。操作がシンプルで簡単に記事投稿できるため、使いやすいのが魅力です。note proと呼ばれる法人向けの有料サービスでは、カスタマイズ機能や分析機能が使えるほか、運用サポートも受けられます。
6.採用オウンドメディアに掲載するコンテンツの例
ここからは実際に採用オウンドメディアに掲載するコンテンツの事例をいくつかご紹介します。代表的なものは、以下のとおりです。
- 従業員へのインタビュー
- 自社プロダクトに込めた想い
- 経営者の想いや会社の掲げるビジョン
- 働き方の紹介や働き方に関する会社の取り組み
- 社内の研修や勉強会などスキルアップに関する内容
- 社内イベントや従業員の写真
それぞれの特徴をみていきましょう。
6-1.従業員へのインタビュー
多くの採用オウンドメディアが従業員へのインタビューを掲載しています。インタビューの対象となる従業員は、自社の採用ターゲットに近い人材であることがほとんどです。その従業員に入社を決めた理由や仕事のやりがい、今後のキャリアビジョンについて語ってもらうことで自社が求める人材や企業の価値観を伝えることが狙いです。
具体的なインタビューの内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 入社を決めた理由
- 実際に入社した感想
- 仕事のやりがい
- 入社してわかった自社の魅力
- 1日の仕事の流れ
- 今後のキャリアビジョン
1対1で行うインタビューのほか、対談や座談会形式で行う方法もあります。
6-2.自社プロダクトに込めた想い
「自社プロダクトやサービスに込めた想い」の紹介も採用オウンドメディアに掲載されるこの多いコンテンツです。それらが生まれた背景やストーリーを通じて、自社がどのような価値提供をしていきたいかを伝えられます。
求職者に共感してもらいやすくするには、プロダクトやサービスが作られた背景や従業員の苦労などをストーリーとして表現することがおすすめです。求職者の共感を得られれば「自分もここで働きたい」という動機付けにつながります。
6-3.経営者の想いや会社の掲げるビジョン
企業の価値観を伝えるには、経営者の思いや会社の掲げるビジョンを掲載する手法が効果的です。「企業を設立した経緯」や「社会にどのような価値貢献をしたいと考えているか」、また「企業として今後目指す姿」などを聞くことで、企業の価値観を伝えることが可能です。
経営者が想いやビジョンを伝え、求職者を惹きつけられれば、応募を促せる可能性が高いと考えられます。また、企業の価値観や考え方に賛同して応募した人材であれば、入社後にギャップを感じることも少ないことが想定されます。
6-4.働き方の紹介や働き方に関する会社の取り組み
働き方の紹介をしたり、働くための制度や会社の取り組みをアピールしたりするために採用オウンドメディアを活用するのも手です。かつては、求職者の関心は年収や待遇などが中心でした。しかし、徐々に「自分が望む働き方が実現できるか」を重視する求職者が増えつつあります。そのため、働き方のモデルや福利厚生、在宅勤務などの各種制度について伝えることは非常に効果的です。
さらに、求職者の関心は制度が存在しているか否かにとどまらず、それらが実際に利用されているかどうかという点に向いています。その点を踏まえ、たとえば育児休暇や看護休暇、在宅勤務制度などを利用した従業員のインタビューや座談会などを交えて紹介すると、魅力として伝わりやすくなります。制度を使ってどのように働いているのかを紹介することで、採用ターゲットが入社後の自分の姿を思い描きやすくなるでしょう。
6-5.社内の研修や勉強会などスキルアップに関する内容
社内の研修や勉強会などのスキルアップに関する内容も採用オウンドメディアに掲載するコンテンツの代表例です。とくに新卒採用や未経験での中途入社の場合は、入社後にスキルがしっかりと身に付くのか、不安に感じるケースも少なくありません。
社内で研修や勉強会などを行っている場合は、カリキュラム内容や研修・勉強会の雰囲気などが伝わるように採用オウンドメディアに掲載しましょう。スキルが身に付くのかという不安を払拭する効果があるため、応募者の増加につながる可能性が高いです。
6-6.社内イベントや従業員の写真
企業によっては採用オウンドメディアに、社内イベントや従業員のプライベートな写真を載せていることもあります。社内イベントの写真からは普段とは違う社内の雰囲気を感じ取れます。また、従業員の自然な表情に親近感を感じてもらえる可能性があるでしょう。
企業の内部の雰囲気を感じ取ることで、求職者がそこで働くイメージをリアルに描きやすくなります。
7.採用オウンドメディアを成功させるためのポイント
採用オウンドメディアを成功させるためにおさえておきたいポイントは、以下の3点です。
- 長期的に運用を続ける
- 関心を持ってもらう工夫を行う
- 社内に向けても発信する
それぞれのポイントについて解説します。
7-1.長期的に運用を続ける
採用オウンドメディアを成功させるためには、コンテンツの質と量、いずれも確保しなければなりません。そのためには、定期的な更新を継続することが不可欠です。
しかし、定期的にコンテンツを発信することは想像以上に大変な作業です。「空いた時間を見つけて更新しよう」といったスタンスでは、他の業務が忙しくなった途端放置することになりかねません。
また、記事コンテンツの作成に慣れていない場合、発信する内容を考えるのに相当な時間がかかることがほとんどです。時間をかけて一生懸命作成したコンテンツが閲覧されないと、どんどんモチベーションが下がっていきます。
立ち上げ当初から閲覧数が爆発的に伸びるといった状況は、まず起こりません。効果が出るまでには時間がかかるため、中長期的な視点で取り組む必要性を認識することが大切です。
そのためには長期目標と短期目標をそれぞれ設定し、目標への達成度合いを確認しながら取り組むことをおすすめします。長期目標と短期目標の例として挙げられる指標は、以下のとおりです。
【長期目標:採用活動全般のKPI】
- 応募数の向上
- 選考通過率の向上(母集団の質の向上)
- 入社後の定着率の向上
【短期目標:採用オウンドメディアとしてのKPI】
- 採用オウンドメディアのアクセス数やPV数の向上
- ターゲットキーワードの検索順位の向上
短期的な目標を設定し達成度合いを可視化させることは、モチベーションの維持に効果的です。定期的な効果検証や改善の実施につながり、長期的な運用を可能にします。目標を達成するための適切な人員の確保とスケジューリングも必須です。
7-2.関心を持ってもらう工夫を行う
いかに求職者の興味をひけるか、感情を揺さぶれるかという点も採用オウンドメディアの成功に大きく影響します。正しい情報を掲載するだけでは求職者の感情を揺さぶることは困難です。事業内容や働く環境に関する情報、従業員へのインタビュー内容をどれだけコンテンツに昇華できるかが成功の鍵となります。
従業員インタビューのタイトル1つを取っても、工夫することが大切です。たとえば「従業員インタビュー 〇〇△△部〇〇さん」とするよりも、「新人売上賞を受賞した従業員にとってのやりがいとは」としたほうが目を引く可能性が高まります。
メディアである以上正しい情報を届けるのは前提としたうえで、重要なのは求職者の「この企業の一員として働きたい」「選考に参加してみよう」という気持ちを引き出すことです。求職者に興味を持ってもらえるようにするにはどうしたらよいか、試行錯誤を繰り返しましょう。
7-3.社内に向けても発信する
採用オウンドメディアを成功させるには、社外に向けてだけでなく、社内に向けて発信を行うことも重要です。従業員が採用オウンドメディアを見ることで日頃は意識していない企業の魅力を再認識したり、同僚や先輩の活躍に刺激を受けてモチベーションが向上する効果が見込めるためです。そのため、コンテンツを更新したら社内のメンバーに告知をしましょう。
採用オウンドメディアによって従業員エンゲージメントが向上すれば、従業員から周囲の人物を紹介してもらう、いわゆるリファラル採用につながる可能性もあります。
8.採用オウンドメディアを活用して事業を成功に導こう
採用オウンドメディアは、求職者へのブランディングやエントリー数の増加などを目指して運営する自社メディアのことです。具体的には従業員へのインタビューや自社のプロダクトやサービスに込めた想い、経営者の想いやビジョンなどを掲載します。
採用オウンドメディアが注目される背景には、少子高齢化によって、従来のような待ちの手法だけでは優秀な人材の確保が難化していることなどが挙げられます。採用オウンドメディアは、求職者が関心を抱く特定のキーワード検索をすることで閲覧が可能です。そのため企業の知名度があまり高くないケースや、今すぐに就職・転職を考えているわけではない潜在層にもリーチできる点がメリットです。
一方で短期間で成果を出すことが難しく、コンテンツの発信を継続しなければいけないことやサイト運営やマーケティングなどに関する知識が求められる点に注意が必要です。適切な人材の確保やスケジューリングを行ったうえで、中長期的な視点のもと運用を行いましょう。採用オウンドメディアの活用によって効果的にターゲット人材の応募を促し、事業を成功に導きましょう。