新たな人材の獲得を目的に、企業が採用サイトを設ける事例が増えています。売り手優位といわれる採用市場で優秀な人材を確保するには、コンテンツ作りにも工夫が必要です。本記事では、採用サイトを作るメリットや手順、他社との差別化手法などについて詳細に解説します。
1.そもそも採用サイトとは?企業サイトとの違い
採用サイトとは、新卒採用や中途採用をするために、企業が特別に作った求職者向けのサイトのことです。求職者のみにターゲットを絞っている点で、消費者や取引先をはじめとする、幅広い層に向けて作られる企業サイトとは異なります。
企業サイトには、会社概要や製品情報、経営指標など多種多様な情報が掲載されます。それに対し、採用サイトは学生や転職を検討している人など、求職者向けの情報に特化しているのが特徴です。新卒向けと中途採用向けで、サイトを作り分けている企業もあります。
自社に関心を持ってもらい、求人に応募してもらうことが採用サイトの目的です。企業サイト内にも採用に関するページを置いている企業がほとんどですが、それとは別に採用サイトを開設するメリットについては、次項で解説します。
2.企業サイトだけでなく採用サイトを制作するメリット
企業サイトには採用に関する情報が記載されていますが、それだけでなく、企業サイトとは別に採用サイトを設けている企業が多く存在しています。
求職者向けに特化した採用サイトを作るのは、それによるメリットが大きいためです。以下に、採用サイトを制作するメリットについてまとめました。
2-1.ミスマッチ・早期離職を防げる
企業の採用担当者が選考にあたって注意を払うポイントの一つに、自社の社風や企業理念とのミスマッチがないか、という点があります。ミスマッチがあって早期離職されたのでは、採用にかけてきた時間と労力がムダになりかねません。
採用サイトを作り、求職者の求める情報を幅広く、詳細に発信することにより、自社のことをよく知ってもらえます。自社の社風や価値観を知り、共感を得た求職者が応募してくれることで、採用時のミスマッチ低減が可能です。
中途採用の場合はとくに、必要とするスキルや経験などを採用サイトに具体的に掲載しておくと、自社の求める人材の応募につながることが期待できます。
2-2.企業の認知度向上が期待できる
業界大手であっても、素材や産業機械などBtoBの業種では、一般的な知名度が低いケースが少なくありません。まして中堅以下の規模であれば、なおさらです。多数の優秀な人材に応募してもらうには、自社の認知度を高める必要があります。
自社で採用サイトを設ければ、求職者に伝えたい情報を質、量ともに十分に掲載することが可能です。写真や図表、動画なども自由に使えるため、自社の魅力を可能な限りアピールでき、認知度アップも期待できます。
2-3.応募者の増加が期待できる
採用サイトの開設は、採用活動で重要な母集団の形成にも有利です。求人に特化した情報を発信する採用サイトには、検索エンジンやSNSなど多様なルートを経由して、求職者からのアクセスが集まります。
コンテンツによっては、今すぐ転職しようとしている人だけでなく、将来的に転職を考えている層や、就職活動前の学生などの関心を捉えることも可能です。採用サイトで十分な情報を提供していれば、求職者の疑問や不安の解消にもつながり、応募者の増加が期待できます。
2-4.充実した内容・情報を発信できる
掲載できる情報の量に制限がないのが、自社で運用する採用サイトの利点です。〇〇ナビのような一般的な求人情報サイトでは、発信できる情報量に限界があります。求人票に記載されるような必要最低限の情報だけでは、自社の魅力や採用にかける熱量をアピールしきれません。
文字による情報のみならず、動画で自社の雰囲気を伝えたり、写真や図表をふんだんに使ったりすることも、採用サイトなら容易です。求職者が入社後の姿をイメージできるようであれば、応募の増加や採用後のミスマッチ防止にもつながります。
3.採用サイトを作る手順
激化する採用戦線を勝ち抜くため、これから採用サイトを作成しようと考えている担当者の方も多いと考えられます。採用サイトを作る基本的な手順は、以下のとおりです。
- ターゲットを明確にする
- 掲載する情報を絞る
- サイトマップを作る
- サイトデザインを決める
採用サイトの目的は、自社の求人に応募してもらうことですが、単純に多くの応募者が集まればよいというわけではありません。自社が求める条件を満たす人材に、多数応募してもらう必要があります。自社の採用基準にかなわない応募者が多く集まっても、非効率な採用活動となるばかりです。
自社が求める人材に訴求するサイトを作るには、まずターゲットとする人物像を明確にします。新卒向けと中途採用向けでは、採用サイトの構成は異なります。採用サイトの方向性やコンテンツ設計を一貫したものとするため、情報発信する対象をしっかり把握することが重要です。
情報を伝えたい対象が固まったら、掲載する情報の検討に進みます。この際、自社が発信したい情報ばかりを掲載するのではなく、「求職者が知りたい情報は何か」という視点で内容の選別を行うのがおすすめです。一般的に、求職者が知りたいとされる情報には、以下のようなものがあります。
- その企業の事業展開
- どのような人がいる企業なのか
- どのような仕事を担当するのか
- どのような企業文化なのか
掲載する情報を取捨選択したら、次はサイトマップを作成します。サイトマップとは、サイトの構成など、全体像を1枚の地図のように表したものです。サイトの構造が複雑すぎては、いかに情報量が豊富でも、閲覧者にわかりにくいと思われてしまいます。
わかりやすい採用サイトとするには、サイトマップは簡潔な構造にし、各ページにふんだんに情報を盛り込むのがコツです。シンプルでありながら、ターゲットとする人材が求めている情報が手に入る作りが求められます。ページ間の移動が容易で、わかりやすい動線とする設計も大切です。
サイトマップが完成したのを受けて、デザインに落とし込む作業に移ります。いかに優れたコンテンツがあっても、サイトデザインが悪く、そこに到達しにくいのでは効果も半減です。必要な情報に、短い動線で進めるようなデザインが求められます。
見る人にインパクトを与えるという要素も、サイトデザインには重要なポイントです。業種やターゲットとする人材の層に合わせて、色使いや雰囲気作りを検討しましょう。
4.採用サイトに最低限必要なコンテンツとは
採用サイトに限らず、ウェブサイトはコンテンツがなくては成立しません。採用サイトを閲覧しに来るのは求職者であるため、求職者の目線でコンテンツをそろえることが不可欠です。
せっかくサイトを訪れてもらっても、求めるコンテンツがなければ、求職者は応募まで至らず他社サイトに移動してしまう可能性もあります。最低限必要なコンテンツとしては、以下のような項目が挙げられます。
4-1.企業の概要
自社がどのような企業であるのか、概要を示すのは基本中の基本です。求職者は、どのような企業なのかを知るために採用サイトを訪問してきます。企業の概要は、できるだけ詳しく記載し、具体的なイメージを持ってもらえるようにするのが上策です。
企業の概要として掲載する要素には、社名、代表者名、本社所在地のほか、以下のようなものがあります。
- 沿革
- 主な事業の紹介
- 売上高などの経営指標
- 従業員数
本社や拠点の紹介には、地図を付けたりGoogle マップと連携させる手法がよく使われます。求職者にとって見やすく、わかりやすいサイトとする工夫は、他社サイトとの差別化を図る観点からも重要です。
4-2.企業理念
企業の存立基盤となる基本理念を理解し、共感してもらうことは、採用活動にとって大きな意味を持ちます。採用サイトに企業理念やビジョンを掲載することで、自社の思いが求職者に伝わり、志望度が高まる効果が期待できます。企業理念を掲載する際には、なぜその理念を掲げているのか、背景がわかるような説明を明記するのがおすすめです。
前述した企業の概要だけでなく、企業理念やビジョンを明確にしておかないと、入社後のミスマッチや早期離職につながりかねません。逆に、自社の考え方や価値観に共鳴してくれる求職者であれば、入社後の活躍を期待できます。
4-3.事業やサービス内容
具体的な事業や製品・サービスの情報が盛り込まれていることも、採用サイトには必須です。事業の全体像を網羅し、自社が提供する各種サービスなどを具体的に理解できるようにすることで、求職者の興味をひき、応募につながりやすくなります。
「高い業界シェアを確保している理由」「なぜこの商品のニーズが高いのか」など、事業やサービスを展開している背景を説明すると、求職者の理解はさらに深まると考えられます。ただし、事業の紹介では、一般には知られていないような専門用語などを使わないよう注意が必要です。意味不明な単語が頻繁に出てくる採用サイトでは、求職者が不安に感じてしまうおそれがあります。
4-4.募集要項
採用サイトの最重要ポイントの一つともいえるのが、募集要項です。採用サイトは、求人サイトやハローワークとは異なり、決まった項目に縛られることがありません。社風や雰囲気、福利厚生など、アピールしたい内容を自由に書き加えることが可能です。
募集要項として掲載する項目は、おおむね以下のとおりです。
- 業務内容
- 雇用形態
- 応募資格
- 給与などの待遇
- 福利厚生
- 勤務地や勤務時間
具体的で詳しい情報があればあるほど、求職者の判断材料となります。詳細な情報提供に加えて、求職者が採用後の働き方をイメージできるように記載することが求められます。
4-5.選考の流れ
求職者の身になれば、選考がどのように進むのかは知っておきたい情報です。面接は対面かオンラインか、選考は何段階か、結果はいつわかるのか……などの要素を明示しておけば、求職者もいつまでに何を準備すればよいかがわかりやすくなります。
新卒採用でも中途採用でも、求職者は複数の企業に応募しているものです。選考フローが明らかになっていないのでは、それを理由に自社への応募をやめてしまう可能性もあります。選考の各段階の始期や、選考結果の連絡までの時間などを明確にすることで、求職者が安心して応募できるようになります。
5.差別化するための採用サイトのコンテンツ例
求職者は一般的に、多くの企業の採用サイトを見比べて、応募先を検討しています。求める人材からの応募を集め、採用サイトの目的を果たすためには、他社との差別化ができるコンテンツが必要です。
他社にはない自社だけの強みや、自社ならではの個性などを打ち出せれば、求職者を応募へと誘導できる可能性が高まります。以下に、他社との差別化を図るためのコンテンツ例を示しました。
5-1.社員の一日の流れ
求職者に、自社で働くイメージを具体的に持ってもらうには、社員の一日がどのように送られているかを紹介するのが一案です。とくに新卒の場合は、企業で働いた経験のない人がほとんどであるため、一日の仕事の流れがわかれば不安の解消につながります。
出勤してから午前の業務、昼食・休憩、午後の業務、退勤まで、時系列でリアリティのある内容を紹介します。写真や図表などを使って、わかりやすいコンテンツとするのがポイントです。職種によって仕事の流れが異なる場合は、それぞれのケースを取り上げます。
5-2.現役社員へのインタビュー
実際に働く社員の声を求職者に届け、自社を身近に感じてもらう方策としては、現役社員へのインタビューが適しています。新卒をターゲットとした採用サイトなら若手社員のインタビューを、中途採用向けであれば職種別、年代別にインタビューするなど、閲覧する求職者に合わせて構成を変えるのがおすすめです。
社員の生の声を掲載することで、社風や雰囲気なども伝えられます。それによって、採用時のミスマッチ予防の一助にもなります。
5-3.教育・研修制度
教育や研修制度の存在を知らせることも、他社との差別化では大切です。新入社員向けの研修はもとより、年次ごとや職位別の研修などもあれば、記載しておきます。とくに新卒採用であれば、教育や研修に力を入れていることをアピールすると好印象を持たれやすい傾向があります。
中途採用の場合も、入社後のフォローを欠かさず、成長をアシストする環境が整備されていることを伝えることは重要です。中途採用の社員でも、教育・研修制度があることで、入社後のキャリアデザインを描きやすくなります。
5-4.インフォグラフィック
売上高の推移や社員の平均年齢、有給休暇消化率など、採用サイトで伝えたい内容には数字が出てくることも少なくありません。数字をそのまま文章の中で表現するのでは、わかりにくく平板なサイトとなってしまうため、近年はインフォグラフィックが多用されています。
インフォグラフィックとは、数字などの情報を図表やグラフ、イラストなどを使って視覚的にわかりやすく伝える手法のことです。数字の羅列ではなく、直感的に理解しやすい点がメリットです。イラストやグラフは自由に制作できるため、自社の個性を訴求する場合にも役立ちます。
5-5.動画コンテンツ
採用サイトには情報をできるだけ盛り込みたいものですが、文字情報ばかりでは、求職者に最後まで読んでもらえない懸念が生じます。アピールしたい内容を中心に、動画コンテンツを用意すれば、求職者の興味をひくことができ、自社を身近に感じてもらうのにも有効です。
動画向きのコンテンツの一例は、以下のとおりです。
- 社員インタビュー
- 仕事の様子やオフィスの雰囲気
- 企業の歴史
- 製品開発ヒストリー
通信技術の発展で、高画質な動画がスマホで簡単に視聴できるようになっています。若い世代になるほどテレビを見ずに、動画サイトを利用する傾向が強いといわれることもあり、これからの採用サイトには動画コンテンツが不可欠になる可能性が高いです。
5-6.SNSによるコンテンツ
ここ数年、就職活動や転職活動に、SNSを活用する人が増えています。企業アカウントを用意して、採用に関する情報をSNSで発信すれば、自社の採用に関心を持つ人に効果的に情報を送ることが可能です。
SNSで情報発信する企業も増えており、会社紹介や会社説明会の日時などを告知している事例も見られます。企業アカウントではなく、採用に特化したアカウントを作れば、求職者が自社の採用情報を恒常的に受け取れる環境を整備できます。SNSは情報を拡散させる機能を持つため、自社の採用情報に関心を持つ母集団の形成にも効果的です。
6.新卒・中途別の採用サイトの傾向
前述したように、企業によっては新卒向けと中途採用向けで採用サイトを作り分けています。新卒と中途採用では募集人数や職種、必要とする資格などが異なり、別のサイトとしたほうが採用の効率が高まるためです。
では、新卒向けと中途採用向けでは、採用サイトの傾向はどのように異なるのでしょうか。詳しく解説します。
6-1.新卒向け採用サイトの傾向
新卒向け採用サイトの特徴は、職場での指導役にあたる若手社員のインタビューが紹介される事例が多い点です。年齢の近い先輩が経験してきた仕事を知ることで、自分がどのような仕事をするのかイメージできるようになるほか、仕事の楽しさややりがいなどを伝えることで、自社への志望度を高められます。
新卒向けで重要なのは、大量の情報をてんこ盛りにするのではなく、必要な情報を整理してわかりやすく提供することです。就職活動中の学生は、多くの企業の採用サイトを見なくてはならないためか、シンプルで明快なデザインを好むとされています。
6-2.中途向け採用サイトの傾向
中途採用の場合は、職種や必要スキルなどの条件を絞って応募先を選ぶことが多いため、新卒向けよりも具体的な仕事の内容を盛り込むことが必要です。どのような仕事を担当するのかが詳細に示されていれば、求職者が自らの経験やスキルと照らし合わせ、応募するかどうかの判断材料とできます。
経験者の採用となるため、社員のインタビューも若手ではなく、管理職やリーダークラスが多くなります。マネジメント手法や仕事の環境などを掲載することで、不安なく応募してもらうためです。また、中途採用向けサイトは一定以上の年齢の求職者が閲覧するため、福利厚生の充実度もアピールポイントとなります。
7.採用サイトで効果的なコンテンツを作成する際のポイント
多くの企業の数ある採用サイトの中で、求職者に目を留めてもらい、応募まで結びつけるには魅力あるコンテンツが必要です。では、求職者にとって魅力のあるコンテンツをどのように作成すればよいのでしょうか。この項では、他社との差別化に効果を見込める、魅力的なコンテンツの作り方にフォーカスしていきます。
7-1.採用サイトの方向性を明確にする
コンテンツ以前に、採用サイトを開設する目的を明確にする必要があります。建物でいえば基礎にあたる部分であり、ここがしっかりしていなければ採用サイトを作っても十分な効果は期待できません。
採用サイトは単なる求人サイトではなく、自社が求める人材にアピールし、応募してもらうためのものです。はっきりとしたコンセプトを持ち、採用サイトの方向性が決まっていれば、盛り込むべきコンテンツも絞られます。
採用サイトの方向性を検討する際には、以下のような点を考慮するのが基本です。
- 自社への理解を深め、ミスマッチを防ぐ
- 応募者を増やすとともに質的な向上も図る
- 求人サイトを見ない求職者にも興味を持ってもらう
7-2.求める人物像を明確にする
前述したように、採用サイトの目的は「求める人材に応募してもらう」ことです。しかし、自社が求める人材の人物像があいまいでは、採用サイトの方向性もブレが生じてしまいます。採用サイトの中身を考える前に、求める人物像を確立しておくことが重要です。
採用戦略においては一般的に、求める人物像を詳細に設定したペルソナを作ります。採用サイトの構築でも同様に、求める人物像については細かな設定を検討するのがポイントです。年代や職種が異なれば、関心を持つコンテンツの種類も異なります。
求める人物像を明確にすることで、サイトデザインやコンテンツの構成がイメージしやすくなり、訴求力が高まる効果も望めます。
7-3.新卒と中途で分ける
採用サイトを新卒向けと中途採用向けで分けている企業があることは、前述したとおりです。新卒と中途採用では求職者が知りたい情報が異なり、新卒は仕事のやりがいや働きやすさを重視しているのに対し、中途採用では具体的な仕事内容に注目していることが多いとされます。
新卒と中途採用では、企業側が応募者に求める条件も違ってきます。これから自社での成長が期待される新卒と、蓄積した経験とスキルを活かして入社直後から活躍してもらいたい中途採用では、コンテンツも異なるほうが自然です。新卒向けと中途採用向けで採用サイトを分けるのは、合理的な手法といえます。
新卒向けと中途採用向けの採用サイトの傾向については、前項の解説を参照してください。
7-4.必要な情報は掲載しつつ見やすさは確保する
採用サイトには、企業の概要や募集要項、選考フローなど掲載しておかなければならない情報が多くあります。加えて、社内の雰囲気を伝える動画や先輩社員のインタビューなど、取り込みたいコンテンツも少なくないのが実情です。
しかし、情報量は多ければ多いほどよいわけではありません。情報があまりに多すぎると、求職者は目当ての情報を見つけられなかったり、読むのに疲れてしまったりして、他社の採用サイトに流れてしまう危険性があります。
必要な情報はしっかり掲載したうえで、情報量と見やすさのバランスを取ることが大事です。テキストばかりで平板な印象にならないよう、前述したインフォグラフィックを活用するなど、見やすくわかりやすいサイト設計にします。
7-5.採用サイトの効果測定とブラッシュアップを行う
採用サイトに限らず、ウェブサイトは作ったら終わりではありません。閲覧者数は想定どおりなのか、どのコンテンツが見られているのか、応募フォームでの離脱者は多くないかなど、アクセス解析でチェックを行い、よりよいサイトにするため不断の見直しを行います。
繰り返しになりますが、採用サイトは求める人材からの応募を増やすことが目的です。閲覧者がどれだけ増えても、応募につながらなければ成功とはいえません。閲覧者のうち応募に結びついた率(CVR)を確認し、CVRが低い場合はコンテンツや導線を修正するなど、改善策が必要です。
7-6.求職者のニーズに合わせた情報提供をする
採用サイトは、求職者に見てもらわなければ始まりません。すなわち、求職者が必要としている情報が提供されている必要があります。前述のアクセス解析やアンケート調査などで求職者のニーズを捉えたら、それに応えられるコンテンツを用意するのが重要です。
企業側が採用サイトで十分な情報を提示していると考えていても、求職者に情報不足だと思われているケースも、往々にしてあります。採用サイトが自己満足に終わらないためには、求職者のニーズの取り込みが肝要です。採用サイトが十分に役割を果たせるよう、求職者のニーズに合わせたコンテンツの見直しと、ブラッシュアップが求められます。
8.採用サイトのコンテンツ事例3選
社内で採用サイトの重要性が理解され、では作成しようとなったとき、どこから始めたらよいかわからないこともしばしばです。そのようなときは、公開されている採用サイトを研究し、イメージを膨らませたり自社サイトに応用したりする方策があります。
以下に採用サイトのコンテンツ例を3件示します。自社のコンテンツ制作の参考にしてください。
8-1.株式会社良品計画
良品計画の新卒向け採用サイトは、社員紹介コンテンツを充実させたインパクトの強い構成が特徴です。社員紹介では、2016~2019年に入社した社員を中心に、11人の先輩たちが現在の仕事内容や、仕事のやりがいなどを語っています。
それぞれの一日のスケジュールも掲載されており、担当する仕事ごとの一日の流れがわかりやすくなるよう工夫されています。大ぶりの画像をふんだんに組み込み、見やすさを重視したデザインです。
トップページでは「仲間に入ってほしい人材」についてメッセージが記され、求める人材を明らかにするとともにミスマッチ防止策にもなっています。
8-2.サイボウズ株式会社
オフィス向けITツールを開発、販売するサイボウズは、同社のウェブメディア「サイボウズ式」内で、働き方や組織に関するコラムを多数公開しています。2023年に入ってからのコラムでは、以下のような内容を取り上げていました。
- 若手社員が離職しないためのコミュニケーション
- どうしたら女性は働きやすくなるのか
- AI時代の生存戦略
各記事はしっかり書き込まれており、採用に特化したサイトではないものの、同社の企業理念が感じられる作りになっています。ページの最下部には、別に設けられた採用サイトへのリンクが貼られ、コラムを読んでサイボウズに関心を持った求職者をスムーズに誘導できる構造です。
8-3.株式会社ニトリホールディングス
家具や家電、日用品などを扱うニトリホールディングスの採用サイトは、余白を広く取ったシンプルで見やすいサイトデザインとしています。トップページを上下に長い1ページとしているため、スマホでも利用しやすい構成です。
トップページをスクロールしていくと、「企業理念」「部署紹介」「先輩たちのキャリア変遷」などの、求職者向けコンテンツに遷移できます。時価総額や売上高、年間買上客数など多数のデータはインフォグラフィックが使われています。簡潔なデザインの中に豊富な情報量を盛り込んだ、お手本的な採用サイトです。
9.応募者が増える採用サイトを目指そう
売り手優位が続く採用市場で、激戦を勝ち抜いて優秀な人材を獲得するには、採用サイトの活用が有効です。採用サイトはただ作ればよいというものではなく、求職者に見てもらい、自社とマッチする人材に応募してもらわなければ意味がありません。
採用サイトに最低限必要なコンテンツを欠くことなく、自社の社風や雰囲気、他社と比較した優位性なども伝えることが必要です。自社ならではの採用サイトを構築して、「求める人材の確保」という目的の実現を目指してください。