リファラル採用によるトラブルとは?事例と回避する方法をわかりやすく解説

リファラル採用によるトラブルとは?事例と回避する方法をわかりやすく解説

採用ノウハウ

リファラル採用を実施することでトラブルが起こることも珍しくありません。どのような事態が起こり得るのか具体的に解説するので、ぜひ参考にしてください。また、トラブルを回避する方法についても詳しく解説します。

1.リファラル採用とは?

「リファラル採用」とは、社員や元社員に採用候補者を紹介してもらう採用方法のことです。紹介された人材は、社内で規定された試験や面接などの選考過程を経て、採用されるかどうかが決定します。

つまり、リファラル採用とは、応募者の母集団形成の段階において適用される手段の一つであり、紹介した人材全員が採用されるわけではありません。

リファラル採用に取り組むことで、母集団形成が進み、採用コストを削減できることもあります。社員や元社員が「自社・業務内容に合っている」と思われる人材を紹介するため、ミスマッチを回避しやすくなる点もメリットです。また、転職や就職を希望している方以外にも声をかける可能性があるため、潜在層にもアプローチできるというメリットもあります。

その一方で、紹介を受けた方が採用されなかった場合には、紹介者との人間関係に影響を及ぼすことが懸念されるでしょう。また人材の偏りが生じること、社員は通常の業務と並行してリファラル採用に取り組むため、すぐに大勢の応募者が集まるわけではないことなどにも注意が必要です。

リファラル採用のトラブルについては、次の項でより詳細に紹介していきます。

 

 

2.リファラル採用紹介者と採用候補者の関係のトラブル

リファラル採用に取り組むことで、紹介者と採用候補者の間にトラブルが生じることがあります。よくあるトラブルとしては、次の2点が挙げられます。

  • 紹介したが採用されなかった
  • 採用されたがミスマッチだった

どのようなトラブルが起こるのか、詳しく解説します。紹介者と採用候補者との間のトラブルは、リファラル採用に取り組む社員の企業に対する不信感を高めることにもなりかねないため、正しく理解し、対処法を講じておくことが必要です。

2-1.紹介したが採用されなかった

リファラル採用では、社員は適切だと思われる人材を紹介するだけであり、紹介しても選考結果によっては採用されないことがあります。採用候補者の期待が大きい場合は、採用されなかったときに大きな失望感を覚え、紹介者と採用候補者が不仲になることも想定されます。

このような事態を避けるためにも、社員に「紹介した方は採用候補者であり、紹介を受けたからといって採用選考において有利になることはない」ということを周知しておく必要があります。また社員を通して採用候補者にも伝えてもらい、採用候補者が間違いなく採用されるという誤解を与えないようにしておきましょう。

2-2.採用されたがミスマッチだった

リファラル採用で紹介した方が採用されたものの、思ったような仕事や会社ではなく、不満を感じる可能性もあります。また不満を感じるだけでなく紹介者に対して「言っていた内容と現実が違う」と不平を抱き、お互いの関係性に影響を与える恐れもあるでしょう。

継続的に働きにくさを感じる場合には、採用されてから短期間で離職することにもなりかねません。採用された方にとっては短期間に複数の面接や採用試験を受けることにもなり、大きな負担となるでしょう。

 

 

3.リファラル採用紹介者と企業の関係のトラブル

リファラル採用の紹介者と企業間でトラブルが起こることもあります。よくあるトラブルとしては、次の2点が挙げられます。

  • 報酬が受け取れない
  • 報酬の受け取りタイミングが不明瞭

場合によっては、社員が企業に対して不信感を強める恐れもあります。社員の満足度を高め、より積極的にリファラル採用に取り組んでもらうためにも、想定されるトラブルについて知り、対策を練ることが必要です。

3-1.報酬が受け取れない

リファラル採用では、採用候補者を紹介した社員に対して報酬を支払うことがあります。しかし、社員に対してリファラル採用の報酬制度について正しく伝えていないときは、「思ったより報酬が少ない」「候補者を紹介したのに報酬を受け取れない」などのトラブルが生じかねません。

また、報酬制度を構築して社員に周知したとしても、規定どおりに実施しない場合は、社員は報酬を受け取れなくなったり、報酬に対して不満を感じたりします。トラブルを招かないためにも、報酬制度の周知と実行を徹底しましょう

3-2.報酬の受け取りタイミングが不明瞭

報酬を支給するタイミングは、各社が自由に決めることができます。しかし一定の基準を決め、規定として明文化していない場合には、社員は「報酬を受け取れない」と感じ、会社に対する不信感を強める可能性があります。

リファラル採用の報酬制度を構築するときは、報酬を支払う基準だけでなく、報酬の支給タイミングも明確に決めておくことが必要です。一般的には、次のタイミングで支給することができるでしょう。

  • 採用候補者を会社に紹介したタイミング
  • 採用選考を実施し、採用候補者を採用したタイミング
  • 採用後数ヵ月経過したタイミング

タイミングが周知されていないと、リファラル採用の紹介者と会社の間でトラブルが生じることもあります。リファラル採用の目的に沿った適切なタイミングを選び、就業規則に明記して正しい時期に報酬を支払うようにしましょう。

 

 

4.その他のリファラル採用のトラブル

リファラル採用のトラブルは、紹介者と紹介された方、あるいは紹介者と会社の間でのみ生じるわけではありません。次のようなトラブルが生じることもあります。

  • 人材に偏りが生じる
  • 報酬を渡すことが違法行為になることがある
  • 社員がリファラル採用に積極的な姿勢を示さない

それぞれのトラブルについて解説します。

4-1.人材に偏りが生じる

リファラル採用では、社員や元社員が個々に適切だと思われる人材に声をかけ、採用候補者として会社に紹介します。会社が一元的に採用候補者を集めるときとは異なり、さまざまな要素を持った人材が集まるように調整できないため、似たような人材ばかり集まる可能性があります。

特定の業務に従事する人材をスポット的に集める場合であれば問題とはなりませんが、さまざまな部署で働く人材を多角的に集めたい場合であれば、人材に偏りが生じることは好ましいことではありません。集めたい人材の特徴を複数決めて社員や元社員に周知することで、人材に偏りが生じないようにしましょう。

4-2.報酬を渡すことが違法行為になることがある

人材紹介を業務として行うためには、厚生労働大臣の許可が必要です。そのため、人材紹介業者でない社員や元社員に対して、人材紹介の対価として報酬を渡すと、違法行為になる恐れがあります。

リファラル採用の報酬を渡すときは、通常の業務の一環として社員が人材紹介を行い、その業務の対価として報酬を支払うという形にすることが求められます。また、通常の業務に人材紹介が含まれることを就業規則などに明記しておくことも必要です。

参照元:厚生労働省「都道府県労働局 職業紹介事業者の皆さまへ」

4-3.社員がリファラル採用に積極的な姿勢を示さない

リファラル採用は、社員が自主的に適切だと思われる人材を会社に紹介する採用活動です。そのため、社員がリファラル採用に対して積極的な姿勢を示さないと、採用候補者は増えません。

社員がリファラル採用に対して積極的に取り組まないときは、障害となっている原因を社員に尋ね、原因を取り除くことが必要です。例えば、次のような事柄が気にかかり、リファラル採用に積極的になれない可能性があります。

  • 紹介したのに採用されなかったら、評価が落ちるのだろうか
  • 紹介したのに採用されない場合、今後の関係が悪くなるかもしれない
  • 紹介して採用が決まった場合、同じ部署で上下関係が生じると、今後の付き合いに影響が生じかねな

 

 

5.リファラル採用のトラブル回避のためにできること

リファラル採用を実施することで、社員や元社員と会社との間、社員や元社員と紹介された方との間などにトラブルが生じる恐れもあります。トラブル回避のためにできることとしては、次の7つのポイントが挙げられます。

  • リファラル採用制度について社員に周知する
  • 不採用時のフォロー体制を構築する
  • 就業規則や賃金規定を整える
  • 面接前に説明会を実施する
  • 採用基準は一般募集と同一にする
  • リファラル採用以外の採用方法も併用する
  • 長期的に取り組む

それぞれのポイントについて、具体的に何ができるのかみていきましょう。

5-1.リファラル採用制度について社員に周知する

リファラル採用は、社員が積極的に取り組まなくては成り立たない活動です。具体的にどのような制度なのかを社員に解説し、社員が不安なく取り組めるようにしましょう。特に次のポイントを丁寧に解説することで、社員のリファラル採用に対する理解を深めることができます。

  • どのような人材を求めているのか
  • 候補者が見つかったときには何をすればよいのか
  • 報酬はどの程度の金額か
  • 報酬はどのタイミングで支払われるのか
  • 候補者を紹介すること・しないこと、紹介した候補者が採用されること・されないことが社員自身の評価に影響を与えるのか

社内報などで説明することもできますが、リファラル採用に対する説明会を開催することでも、社員の理解を深めることができるでしょう。説明会では社員の疑問点もその場で解消できるため、より理解を深め、取り組んでもらいやすくなります。

5-2.不採用時のフォロー体制を構築する

社員が紹介した人材が、不採用になる可能性があります。もし不採用になったときには社員と採用候補者の間が気まずくなり、不仲になったり疎遠になったりする恐れがあるでしょう。

社員の個人的な人間関係に影響を及ぼさないためにも、事前に社員・採用候補者の両方に「通常の採用選考と同じ方法で進めていくため、不採用になる可能性がある」と伝えておくことが必要です。

また、不採用のときには採用候補者に不採用の理由を説明することが大切です。能力を否定するのではなく、募集している人材に求められる要素が足りなかったことを丁寧に伝えます。そうすることで、採用候補者が不採用の判断に納得しやすく、紹介者との間にトラブルが生じにくくなります。

事前に社員・採用候補者の双方に対して、どのような人材を求めているのかについて明確に説明することも不採用時のトラブルを回避するポイントです。採用選考に進む前に採用候補者を対象とした説明会を開催し、候補者自身に会社の説明を聞いてもらい、自身に向いていないと判断したときには応募を辞退できるようにしましょう。

5-3.就業規則や賃金規定を整える

報酬は、社員や元社員がリファラル採用に取り組むための動機となります。成功報酬や採用活動に対する報酬などについて規則として明文化しておくと、より一層積極的にリファラル採用の活動に取り組むことができます。

また、明文化することで報酬関連のトラブルを回避しやすくなります。制度として社内に根付かせるためにも、適切な賃金規定を構築し、就業規則などに記載しておきましょう。

5-4.面接前に説明会を実施する

社員からの話を聞くだけでは、採用希望者は業務内容や求められている能力、スキルについて正確に把握できない恐れがあります。面接や採用試験を開始する前に採用希望者を対象とした説明会を実施し、自分に合う職場や仕事内容なのかどうかを判断してから採用選考に進めるようにしておきましょう。

また、説明会を実施することで、入社後のミスマッチも回避しやすくなります。長く働ける人材を確保するためにも、選考前の説明会が必要です。

5-5.採用基準は一般募集と同一にする

紹介の場合も一般募集も、採用基準を同一にしておくことが必要です。リファラル採用が有利ではないことを社員・採用候補者の双方に周知することで、より明瞭かつ公平な採用活動を実施できます。また、万が一、不採用になった場合にも、紹介者との間に感情的なトラブルが生じにくくなります。

 

 

5-6.リファラル採用以外の採用方法も併用する

リファラル採用では社員や元社員が個々に採用候補者を集めるため、人材が偏る恐れがあります。人材の偏りを回避するためにも、リファラル採用以外の採用方法も併用し、より幅広く候補者を集め、多彩な母集団の中から会社にとって必要な人材を選べるようにしましょう。

また、リファラル採用では、短期間に多くの採用候補者を集めることは困難です。特にリファラル採用制度を導入したばかりの時期では、社内にリファラル採用の文化が定着していないため、採用候補者も集まりにくくなります。多数の人材をまとめて採用する必要があるときも、リファラル採用だけではなく複数の採用方法を併用し、多角的に採用活動を進めていくようにしましょう。

5-6-1.リファレンスチェックの併用

中途採用の候補者を集めるときに、「リファレンスチェック」を実施することもできます。リファレンスチェックとは、前職の上司などから採用候補者についての話を聞き、客観的な採用に活かす方法です。

リファラル採用では、紹介者は採用候補者を個人的に知っているだけで、働き方やビジネススキルなどについては熟知していない可能性も想定されます。採用候補者の仕事面を熟知する上司などの話を聞くことで、自社に合う人材なのか判断しやすくなるだけでなく、ミスマッチが生じにくくなり長期にわたって働ける人材を見つけやすくなるでしょう。

 

 

5-7.長期的に取り組む

リファラル採用は長期的に取り組むことが必要です。例えば、新規事業を始めるなどの理由で大勢の人材を早期に獲得する必要があるときなどは、リファラル採用には向かないと考えられます。

リファラル採用では、社員は通常の業務を行いながら適切と思われる人材に声をかけ、会社に紹介するスタイルが一般的です。そのため、早く人員を増やそうとして社員にリファラル採用の活動に注力するようにと伝えると、本業がおろそかになり、会社の業績などに影響が生じる恐れがあります。

また、「早期に紹介しなくてはいけない」というプレッシャーから、会社の風土に合わない人材や業務内容に適切とは思えない人材を紹介するケースも増えるでしょう。社員が自身のペースで無理なくリファラル採用の活動に取り組めるように、期限を定めずにリファラル採用を実施することが必要です。

6.対策をしてからリファラル採用制度を実施しよう

リファラル採用を実施することで、社員が主体的に採用活動に関わり、会社に必要な人材を幅広く集められるようになります。リファラル採用制度を実施する際に起こりがちなトラブルに留意し、事前に対策をしておくことで、より良い採用活動を実施していきましょう。

 

 

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